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ハーミット・リスタート【入学編】8ページ目 ルームメイトがこんなおじさんでごめんね

特に不安もなく自室の扉を開けたレイシ。

そこにいたのは中年の男性で。

彼、ビリーがレイシのルームメイトだった。

レオナがシエルに挨拶するよりも少し前。


「ここか」


A118。


自分の部屋に辿り着いたレイシは。


カードキーをセンサーにかざし。


扉を開錠させた。


きっと、寮母のエリーの持っているMAG端末で。


扉の入室の記録等を管理されているのだろう。


レイシは入寮の際に受けた説明の所々で。


エリーが言わなかったであろう。


この寮の仕組みを考察しながら。


自分の部屋へと入るのであった。


「っと、あれ。この寮の関係者の人ですか」


レイシが扉を開けた先には。


手前の机に。


四十代ほどの小太りの。


ブロンドの髪でひげを生やした。


背丈もレイシより高い170後半ほどの。


青いオーバーオールを着た男性がいた。


「きみはもしかして、この部屋の子かい」


「はい。レイシ・スズナリです。すいません、作業中に」


謝るとレイシは荷物を奥にある机やベッドなどの。


自分用のスペースへと持っていった。


なんか気まずいなと。


そう思いながら。


レイシが荷物を壁際に置くと。


既にいた男性がクスクスと笑っていたのに。


彼は気づいた。


「どうしたんですか」


「ごめん、ごめん。自己紹介が遅くなったね」


「だったら、こちらは挨拶もしましたし。寮の集まりの時なんかにエリーさんにあなたのこと聞いておきますよ」


「そうもいかない。だって、ワタシはきみのルームメイトだからね」


「えっ」


「ワタシにも名乗らせてくれ。ビリー・ジャングルトラックだ」


「あっ、オレのルームメイトだったんだ」


「ふふふ、この学校は入学に年齢制限がないからね。一区切りついたから一念発起したのさ」


愉快に笑うビリーにレイシは衝撃を受けた。


寮の管理人の一人かと思った。


最初の自分の応対に無礼さを感じてさえいたが。


すぐにビリーがため息をついた後に。


自分へと頭を下げる様に。


レイシは言葉を失った。


「ごめんね。こんなおじさんがルームメイトで。本当は同い年くらいの子が良かったと思うのに」


「そんなことありません。なんなら、外見は子供の、三十六歳でここに入ってきたヤツもいるし」


寮までの道中。


ウルフランドの博物館前で。


ダグの唐突な年齢のカミングアウトがあったからこそ。


レイシはビリーの謝罪がとても心痛かった。


勉強をするのに年齢なんて関係ない。


そんなキレイ事で片付けていいものかと。


ビリーの境遇を知らないのにも関わらず。


勝手な物言いをレイシがためらっていると。


顔を上げたビリーがニコニコしていた。


「今度はどうしたんだい。ビリー、さん」


「呼び捨てで、敬語も使わなくていいよ。ビリーでいいよ。ルームメイトだし」


態度が一変したビリーへの対応にレイシが悩む中で。


ビリーは落ち着いて語り出した。


「夢だったんだここでMAGの勉強をするのが」


夢の背景まではまだ聞きはしない。


どうしてここに通うのが夢だったのか。


今聞くのはあまりにも無粋すぎる。


ルームメイトに言いたいことや教えてほしいことは。


たくさんあるが。


レイシはたった一言告げて手を彼に差し伸べた。


「よろしくな、ビリー」


その言葉と差し出された手に。


ビリーは応じて。


二人は握手をした。


時刻は四時四十九分。


五時までまだ時間もある。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

【入学編】は主に入学式後の。

MAG課のクラスメイト紹介までとしており。

そのため入学前の寮の住人や日常など。

他にも内容を書く予定のため。

現状としては十数話を目途にしております。

いつもながら、それ以上の話数がかかった場合は。

入学後の学園パート編を楽しみにしている読者の皆様には。

申し訳ございません。

だからこそ、【入学編】は【入学編】で。

楽しいものにしていきますので。

どうかこれからもよろしくお願いします。

それでは次の更新は9/10の17:00になります。

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