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ハーミット・リスタート【入学編】31ページ目 レオナ・ストレングスと白い魔導書

少女の決断を魔導書は認めた。

彼女の力になりたいと。

白い魔導書は始まりの一ページ目に。

少女の魔法を刻むことを許した。

明日から始まる彼女の学園生活のために。

「先のことなんて分からないこそ、私はこれから出会う人達と心から仲良くなれると思います」


マーク、ハイプリステス、ビーンズ。


三人からの問いかけの続きを述べて。


レオナは一息ついた。


ブライトグラスの秘密魔導書庫に。


しばし静寂が訪れた。


その間もレオナは強い意志を瞳に宿し。


マーク達を見つめていた。


あたかも我慢くらべで根負けでもしていたかの如く。


ずっと堅い表情を貫いてマークの顔が。


笑みで崩れていき。


どんどん柔和な面持ちになっていくこの店の主につられ。


ハイプリステスもビーンズも笑いが溢れ始めた。


「こいつあ、面白え。アルバステータスを託すには充分な素質だ」


「ナイス演技だったわ、マーク」


「ふふふ、正直な話予言なんてしてないわよ」


「えっ、えっ、皆さんどうしちゃったんです」


三人、というよりもマークの変わりように。


レオナは困惑を隠せないでいたが。


その答え合わせを当人であるマークが語り始めた。


「言ったろ。この魔導書は使用者を選ぶって。今まさにレオナくんはアルバステータスに選ばれたわけさ」


「じゃあ、ずっと私を試していたんですか」


「ごめんね。これくらい手をこめないといけなかったのよ」


「でも、無事レオナちゃんに所有者の資格が与えられてよかったわ」


緊張がなくなり。


ある意味レオナ以上に気が軽くなったマーク達は。


三人で談笑し出した。


会話に置いてけぼりをくらうレオナに。


最初に気づいたのはマークであり。


数分間の談笑後だった。


「っと、帰る前に簡単に使い方を教えなきゃな」


厳格さから一転してマークは好々こうこうやの雰囲気で。


レオナへと両手でアルバステータスを差し出した。


「さあ、受け取ってくれ。今日からキミの相棒となる魔導書だ」


「ありがとうございます」


未だに困惑と戸惑いは残っているものの。


マークへと感謝の言葉を告げると。


震える両の手で彼女は白い魔導書を受け取った。


「うし、じゃあ動かし方からだな」


レオナが魔導書を受け取ったのを確認すると。


ふうっ、と一息ついてから。


自らの手を本から離した。


「まずはその本を持ってからこう唱えるんだ『ステータスオープン』って」


「は、はい。ステータスオープン」


言われるがままレオナは。


伝えられた呪文を唱えると。


独りでにアルバステータスが宙に浮かぶや動き出し。


ペラリっと。


表紙が開くや真っ白な両面一ページ目が。


彼女の前へとあらわになった。


「それがアルバステータスの起動呪文。普通に本の中身を確認する分には詠唱は必要ない」


「分かりました」


「次に情報を取り込む呪文だが、レオナくん。きみはファミリアーツ持ちだったね」


「はい」


「記念すべき一ページはそれを記録してはくれないかね」


「そういうことなら、やってみます」


気軽にファミリアーツを使うのは正直後ろめたさも感じてはいたが。


マークが言う通り記念すべき一ページ目ならと。


やはり、自分にしか扱えない魔法。


ファミリアーツがふさわしいと。


レオナはその魔法を詠唱した。


「オルフェ」


殺風景で不気味ささえある秘密の魔導書庫内が。


優雅で雄大。


透き通った色合いの。


幻想の海に浸されていく。


海水はレオナ達の足元までしか達していないが。


この空間を彩るにはあまりにも優美。


「いい魔法だ。では足元の海水を見据えたままこう唱えたまえ『ドロー』と」


「はい。ドロー」


レオナが呪文を唱えた瞬間。


アルバステータスが強く白光し。


空白だった両面の内。


右側のページに今しがたレオナが発した。


ファミリアーツの情景が黒いインクで描かれた図として。


その呪文の名前や詠唱などの内容や状況が。


詳細に記載されていた。


「これがこの魔導書の力」


「上出来だ。最後に閉じ方だ。開いたままの状態で魔導書に向かって『クローズ』と唱えたまえ」


「はい。クローズ」


アルバステータスは先ほどとは打って変わり。


淡く白光して。


独りでに動き出し。


厚いカバーが。


パタンと音を立てて。


それまで宙に浮いていたその身を。


レオナの手元へと戻って行った。


「これが基本的な使い方だが、まだ魔導書の意思まで引き出したわけじゃない」


「そう言えばこの本には意思が宿っていたんですよね」


「悪いがそれについてはまた今度だ。それよりもPMAGウォッチをこっちに向けてくれないか」


「えっ、はい」


突然のマークからの頼みに慌てるも。


レオナはアルバステータスを脇に挟んで。


左手に巻いていたPMAGウォッチをマークへとかざした。


するとマークは左手のシャツの袖を捲り。


自分のPMAGウォッチの画面を指で操作してから。


レオナの端末と向かい合うようにそれを上に掲げた。


ピッーー。


そのやり取りの後にレオナのPMAGウォッチに着信音が鳴った。


「よし、たった今レオナくんの端末にワシの連絡先を追加しておいた」


「ありがとうございます」


「アルバステータスの更なる使い方やページを消去したいときはワシに連絡しな」


「はい」


急な展開に動揺はありつつも。


魔導書の使い方に関して。


離れていてもマークと連絡が取れるのは。


レオナにとって有り難かった。


「さて、レオナくん。最後にワシからプレゼントがある」


「何をお渡しするつもりですか」


「その魔導書を身につけるためのホルスターさ」


ニヤリと笑うとマークはベストのポケットから。


小指サイズの杖を取り出し。


空中にホルスターの形状を表す軌跡を描くと。


光の粒子がレオナの周りを包み込み。


数秒後、彼女の制服に頑丈な黒い革のホルスターが。


装着されており。


そのホルスターの左脇には。


アルバステータスを固定するためのベルトが巻かれていた。


「アルバステータスの製作者が使っていたものをレオナくんのサイズに合わせてみたんだ。ちなみに起動の際にベルトは自動で外れるから。キミがちょうど制服を着ていてよかったよ」


「ここまでしてくださり、本当にありがとうございます」


マークからの意外なプレゼントにレオナはとても喜び。


本日のこの場における要件がなくなったところで。


ハイプリステスとビーンズは彼女に別れの挨拶を切り出した。


「今日は付き合ってくれて本当にありがとう」


「これからレオナちゃんを寮まで魔法で送ってあげるから、ちょっと目を瞑っていてね」


「ワシらはまだここで話したいんでね」


「分かりました。そうだ、一言いいですか」


レオナの言葉にマークらは口を閉じ。


彼女が発言を見守った。


「未来が分からなくても私思う存分生きてみせますから、三人とも今日はありがとうございました」


言い切るとレオナは目を瞑った。


心の底からのレオナの言葉に。


気持ちの表れに。


マークもハイプリステスもビーンズも。


拍手の代わりに詠唱をして。


レオナを寮の前へと送り届けるのであった。


そして、一分後レオナが目を開くと。


彼女は変装したハイプリステスが用意した魔導車が。


停まっていた寮の正門付近に立っていた。


「今日の夕飯はなんだろうな」


とてつもない緊張感から解放されたからか。


レオナは空腹だった。


すかさずPMAGウォッチの待機画面を見ると。


時刻は午後の17:23分。


寮の夕飯までもうすぐだ。



ーーーー


レオナがいなくなった秘密書庫で。


マークらは今日の出来事について語り合っていた。


「流石にまだあの魔導書の意思を引き出し方までは教えられないよなあ」


「それこそメロディアス・ウルフランドが作ったなんて言ったら驚くわよね」


「にしても、あの魔導書の所有権をレオナちゃんに与える試練のためとはいえみんな頑張ったわよね」


「アルバステータスの成長のためには更なる試練があるが、レオナくんならなんとかなるだろ」


「その為に敢えて他の呪文と詠唱を教えなかったんじゃない」


「うーん。もしかしたら、その呪文とか知らなくても偶発的に魔導書を成長させちゃったりするかもよ」


「有り得んだろ。それこそウルフランドの意思があの子に入れ込まん限りは」


「マーク、そんなこと言っていたら案外早くあの子から連絡来るかもよ」


「おいおい勘弁してくれよ。まあ初見、スロットルと一緒にいた時は見込みがなさそうだなと思っていたのはレオナくんには内緒な」


「あら、私が直々に見込んだ子よ。舐めてもらっては困るわ」


「その点だとワタシのお気に入りでもありますよ、レオナちゃんは」


談笑し合いながらも。


レオナへと伏せた情報で。


三人は盛り上がっていた。


少女の秘められた可能性以外の魅力も交えながら。


ーーーー


「よし、行こうダグ」


「もう待ってよレオナ」


今日はカップアンドコイン学院の入学式。


他の寮生よりも早く学び舎に向かうレオナとダグ。


「行ってらっしゃいませ」


嬉しさを露わにするエリーの見送りも相待って。


レオナとダグの二人は希望に満ち溢れていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

次回からは【春風のささやき編】改め。

【春風編】になります。

当初想定していたよりも。

大幅に【入学編】が延びてしまい申し訳ございませんでした。

いつもお読みくださる読者の皆様のおかげです。

では、次回の更新は2/18の17:00となります。

【春風編】もぜひともよろしくお願いします。

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