ハーミット・リスタート【入学編】30ページ目 始まりのページ
最初からこれから起きることがわかるなんて。
便利だとは思うけど。
それで仲良くなった人たちって。
本当に仲良くなれったって言えるのかな。
分かり合えたって言えるのかな。
魔導書のおかげで楽に過ごせる未来は。
私が望んでいた学園生活なのかな。
ビーンズからの提案にレオナは。
戸惑っていた。
だからこそ、更に混乱するかもしれないと。
承知の上でレオナはビーンズ達に説明を求めた。
「お願いします。もっと詳しくビーンズさんの言っていたこと教えてください」
「彼女の代わりに私が教えてあげるわ」
「ハイプリステスさん」
それまでの笑顔は消えて。
真剣な表情でハイプリステスはレオナと向き合い始めた。
「あなたが通うMAG課にはとても個性的な生徒が揃っているわ」
レオナへと丁寧に語り出すハイプリステスの眼差しは。
思慮深く下手な反論を許さない鋭さも持ち合わせていた。
「だからこそ、クラス長のあなたには大きな負担がのしかかるわ」
「はい」
「アルバステータスにビーンズの占いや私の持つ生徒の情報を取り込ませれば仲違いも起きず、
それどころか理想のリーダーとしてMAG課だけじゃなく学園全体を引っ張っていけるわ」
「はい」
「これを聞いてあなたはどう思う、レオナ・ストレングス」
「私は……」
ハイプリステスの発言に。
静かに頷いてレオナは相槌を打つだけしかなかったが。
いざ、自分の気持ちを言葉にしなければならなくなり。
彼女は黙り込んでしまった。
そんなレオナに気を遣ったのは。
この中で一番彼女にとっては厳格に見えたマークだった。
「五分ほど彼女に考える時間を与えたらどうだね」
「そうね、マーク」
「私はどんな返事でもオッケーよレオナちゃん」
「皆さん……ありがとうございます」
力なくレオナはマーク、ハイプリステス、ビーンズの。
三人へと感謝を告げると。
目を瞑りレオナは。
独り自身の思考という部屋へと閉じこもった。
これから起きる出来事、出会う人。
それが予め分かる。
でも、それってその人を本当に知ったと言えるのか。
同じ占いに導かれたとしても。
ヘルシィとの出会いは違う。
結果までは分からず。
漠然とこれから何をしたらいいのか。
しかも、それは自分の意思で決めなければならなかった。
ヘルシィのいるフルート山へ行くのも。
そのための休日を取るためにバイト先のリブ店長に。
休暇を申請したのも。
旅行の許可を両親に話したことも。
最終的にヘルシィと知り合ったからこそ。
念願の学園生活をつかみ取れたのも。
全ては、結果が分からないこそ。
そのために自分の気持ちに正直なったからこそだ。
だとすると、初めから相手が何者なのか何を求めているか。
知っていたとしたら。
それは自分の気持ちで生まれた関係性ではなく。
ただ、予知書に従って出来上がっただけで。
まるで決められた配役や台本を読み上げただけで。
自分で掴んだ未来とは果たして胸を張って言えるのだろうか。
『思う存分に生きろ』
今になってスロットルの一言がよみがえる。
自分がそんな生き方をするとしたら。
ビーンズの提案は……。
「時間だ。答えを聞かせてもらおうか」
約束の時間よりも三十秒以上過ぎてから。
マークはレオナに返答を尋ねた。
彼なりの優しさだが。
その気遣いはレオナには不要だった。
「先に一言いいですか、お時間くださりありがとうございます」
軽く頭を下げ、目の前にいる。
マーク、ハイプリステス、ビーンズの三人に。
レオナはお礼を言った。
そして、すぐに顔を上げると。
レオナは自分の答えを三人へと告げた。
「アルバステータスは受け取ります。でも、ビーンズさんの予言までは受け取りません」
強い意志を瞳に宿し。
少女は自分に試練を課すかのような。
三人の魔術師の顔を見据えた。
その瞬間一冊の魔導書が淡く白い光を放っていたことに。
気づいていたのはそれを手にしていたマークだけだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
前回出てきたブレイカーズは。
魔道具処理の専門分野であり。
マーク店長はその最高峰に位置しますが。
著者が不明の魔導書はそれだけで。
危険な魔法や異世界からの魔物。
更には魔獣を秘めた可能性があるため。
聖騎士団やMAIL同伴で処理が行われる場合もあります。
そんな中若かりし頃のマーク店長は。
護衛なしで魔導書の処分や封印を行っていました。
先代の意向で。
それでは次の更新は2/11の17:00になります。




