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ハーミット・リスタート【入学編】24ページ目 困難なる真実への道筋

必要な物は揃っていると思っていたのに……。

すぐに解決できるとは楽観していなかったが。

出鼻を挫かれた気がしてレイシは。

協力者である仮面の人物に疑念を抱かざるを得なかった。

昼過ぎ。


やりきれなさを抱えたまま。


レイシはレトロジーン地区を後にし。


ハンドレッド・メロディストリートを歩いていた。


目的地はレイシの父親の関連会社である。


スズナリ商社・メロディアス支社。


レイシの姉である。


ツバメがかつて勤めていた会社でもある。


「はあ」


通りを歩くレイシの足取りは軽快でなく。


少々重たかった。


その理由は。


午前中に訪れた釣具店の。


奥でのやり取りにあった。



「真実を掴み取る秘技と真実を手繰り寄せる秘技。この二つがあれば姉さんを探し当てられる」


店の奥の秘密の部屋で。


黒い円盤状の仮面をつけた人物に。


強く言いよるレイシだったが。


しかしながら、仮面の人物は。


冷静に感情の起伏なく。


淡々と返答した。


「今のあなたでは無理です」


「なぜ。親父から渡された術具の藍導航らんどうこうもあるのに」


「術具はあっても、秘技を発動するための準備ができておりません」


仮面の人物は不気味なまでに低い声で。


熱くなるレイシとは正反対に。


落ち着き払って会話を続けた。


「事前にやり取りしていたとはいえ、まずはお互い自己紹介といきましょう。直接こうしてお話しするのは初めてですし」


「……そうですね。すみませんでした」


謝罪のためレイシが頭を下げたのを確認すると。


椅子から立ち上がり仮面の男は胸に手を当てて。


自ら名乗りだした。


「私はここ『えびとたい』の裏店長のナダレ」


「レイシ・スズナリ。スズナリ商社の社長ショウブ・スズナリの三男だ」


「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」


白い手袋に覆われた右手を。


ナダレはレイシへと差し出すと。


レイシもまたナダレの手を握り返した。


「先ほどは焦って粗相してしまい、すいませんでした。こちらこそよろしくお願いします」


「お気になさらず」


握手を終えナダレは自らの席へと戻り。


椅子に座り直した。


仮面の下の表情は分からないものの。


ナダレの態度が当初よりも軟化していると。


レイシは感じて話題をもとに戻し始めた。


「究極の幻技に必要な媒介、術具はあるのに。ここまで来て準備不足とはどういうことです」


「まず、真実を掴み取る秘技『なび』と真実を手繰り寄せる秘技『なり』は人と人のつながり、縁が必要であります」


「縁、ツバメ姉さんと仲良かった人間と接触すればいいのですか」


「情報を得るだけならもちろんそれもありますが、『靡』と『成』は真実に辿り着くまでのきっかけが多ければ多いほど上手くいきます。人との繋がりが稀薄なままで目的を果たすのは無謀でしょう」


「失礼ながら、もっと簡潔な説明を望んでもよろしいでしょうか」


「確かに回りくどかったですね。一言で表すとーー」


数秒、間をおいてナダレはレイシに。


要点を伝えた。


「学園生活を楽しんで、そこでできた縁を大切にしなさい」


「なぜ?こっちとしては学校の人間を俺の事情に巻き込みたくないんだが」


「先のことは分かりませんが、危険と判断したならご学友と距離を置けばいいでしょう」


まだまだ先、未来を語るにしても。


曖昧な返答にレイシはやりきれなくなり。


つい嫌味めいた言葉が漏れ出す。


「ツバメ姉さんの居場所さえ分かればこっちは充分なのにな」


「お言葉ですが、場合によってはそのままお姉様の救出もレイシ様がなさねばならぬかもしれませんよ」


「親父からは探し出せとしか、言われていないのにか」


「表面的にはそうでしょうが、お姉様の救出までがあなたのお仕事だとご自身でも感じていますでしょう」


「詭弁だ」


「実際にそのような状況にならねば分かりませんからね」


自身の言い分が否定されたと感じ。


不貞腐れ始めるレイシに。


ナダレは冷徹までに自身の意見を。


突きつける。


静寂が漂うだけとなり。


気まずそうにレイシは下唇を噛み続けた。


「……」


「話が進みませんね」


「……。クラスメイトとは付き合い良くするよ」


「ほほ、それがよろしいでしょう」


少年の根負けで会話は幕を閉じた。


奇妙な一室での。


少年と仮面の人物との今日のやり取りはここで終わり。


できるだけ早くかつ誰も自分の面倒事に巻き込みたくない。


レイシには今回のナダレとの話し合いは。


モヤモヤが募り。


やりきれなさが増すばかりだった。



スズナリ商社・メロディアス支部は。


二十階に及ぶビルの十五階のフロアを。


丸々貸し切っているのだが。


入館するには。


まずは一階のエントランスで。


受付を済まさねばならない。


「ふう、っと」


エントランスにあるソファに腰掛け。


自分よりも先に一組の男女がロビーで。


このビルの受付の女性と会話をしていた。


黒髪の爬虫類革のジャケットを着た男と。


茶髪のベリーショートの女性だ。


かれこれ五分以上会話している。


「あとどれくらい待てばいい」


「ギャロップ氏が緊急で会議があったみたいで、もうすぐこちらに到着するので、それまでお待ちください」


「ったく、自分で呼び出しておいてよ」


「まあまあ、娘さんを探して欲しいって、父親らしい依頼じゃない」


「なら、探偵に頼れよ。MAILに頼むほどでもないだろ」


離れていても聞こえてくる先客の内容に。


レイシはどこか親近感を覚えていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

クリスマスイブですね。

読者の皆様が楽しい時間を過ごせていると。

ささやかながら私はここに願っております。

次回の更新は大晦日の水曜日12/31の17:00となります。

スパークさんの手記の回になります。

それと、12/30火曜日の17:00には。

短期集中連載『冬休みの通学路』がございます。

こちらもご覧になられてはいかがでしょうか。

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