ハーミット・リスタート【入学編】22ページ目 言葉の行く末
スロットルはダグのかつての立ち回りを。
褒めていたのだが。
ダグはどことなくやりきれない顔をしていた。
ブライトグラス書店の外。
「ふう、ヘルシィさんちょっといいかい」
店長の目を気にせず話せるようになったところで。
スロットルはダグに嬉しそうに呼びかけた。
レオナは今度は何事だろうかと。
眉を顰め。
立ち止まって二人の会話に耳を傾けた。
「オレらはヘルシィさんには感謝してもしきれねえ」
「スロットルくん。それはMAG端末を作ったことかい」
再び困惑した笑顔でダグは。
スロットルに尋ねると。
更に彼は話を続けた。
「それだけじゃねえ、あんたがMAG反対のデモや世論からオレらを守ってくれたのもあるんだ」
「そんなことしたっけ」
「あなたがわざと世間に嫌われて批判を一身に浴びてくれたのは、オレらみてえなMAG端末の研究者が反対派から襲われないようにするためだろ」
「……」
ダグが黙っている以上。
レオナもまた、ただスロットルの話を聞き続けるしかなかった。
「あなたの立ち回りのおかげでオレらは研究に没頭できたし、新しいものが世の中に出せた」
「それはキミやルーレッツさん達の努力の賜物だよ」
「もちろんそれもあるさ。ただ、あなたの立ち回りは当時のオレらにゃすごくありがたかった」
「というと」
「例えば……ダミー情報を流してデモ隊の暴動を未然に防いだ時は本当に関心したぜ」
「ありがとう」
やりきれない自虐的な笑いを浮かべて。
ダグはスロットルの話を聞いていた。
見守っていたレオナは一歩後ろに下がり。
心配そうにダグの顔を覗き込んだ。
「嫌われるの慣れているからね。ただ、他の事で褒めてくれたらもっと嬉しかったなあ……」
やや言い淀むダグに。
それまで豪快だったスロットルも。
大人しく言葉の行く末を見守った。
それはダグの隣にいたレオナも同じだった。
「元々そんな事やるつもりはなかったんだよ。本当に、ほんとに」
「……すいません。無神経でした」
静かにスロットルはダグに謝ると。
その場の空気が重くなった。
「ごめん。もう少し僕も言葉を選ぶべきだったね」
とても会話に割って入れない。
まだ自分が幼い頃。
起きていたであろう壮絶な事実は。
レオナが口を出せる余地などなかった。
だからこそ、スロットルは。
大きく息を吸った後。
にこやかにレオナへと呼びかけた。
「お嬢ちゃん、改めて名前聞いてもいいかい」
「レオナ・ストレングスです」
「色々と今日はごめんな。それとヘルシィさんをよろしくな」
「は、はい」
「そうだ。今年度のカップアンドコインにゃ、オレらも関わってるからな」
話題も空気も切り替わり。
爽やかな雰囲気になると。
スロットルはレオナとダグに。
更に言葉を続けた。
「どんなモンか楽しみにしてくれよな」
PMAGを取り出し。
端末を操作すると。
『スロットル・デスブランクサイズ。サイン会開催中』
看板の文字を変更し。
書店前の机にある椅子へと。
スロットルは座り出した。
「軽量化の魔法は一時間くらいまでだからそれまでに帰んだぜ」
元の位置につくと。
笑顔で手を振りレオナとヘルシィへと。
スロットルは激励を送った。
「思う存分に生きるんだ。レオナちゃん、ヘルシィさん」
型破りでエネルギッシュなスロットルに見送られ。
レオナとダグは嬉しそうに書店を後にした。
寄り道してもいいのに。
そのまま二人は寮に帰り。
思う存分に生きるんだ、という。
スロットルの言葉のプレゼントを。
軽くなった書籍が入った革袋が。
重くなるまで。
二人は自分の部屋で。
胸の中、響かせ続けた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
半年程前の活動報告で。
地元に足を運んだ際に利用した。
切符を見つけたのですが。
なんというか。
レシートとはまた違った。
旅の記念品みたいで。
思わずとっておきたくなるんですよね。
それでは、次回の更新は12/17の17:00です。
次回はレイシが主役です。
あと、年末年始に。
短期集中連載を行う予定です。
開始の日程含めて活動報告に記しますので。
出来上がったらそれを後書きで再報告します。
多分、再来週分の後書きでの報告になるかもしれませんが。
楽しんでお待ちいただけたら幸いです。




