ハーミット・リスタート【入学編】20ページ目 勢いと勢いと勢い
スロットル、フルスロットル。
回る回る。
……。
ヘルシィとの再会にスロットルは。
絶好調だった。
スロットルはダグもといヘルシィとの遭遇に。
大喜びしていた。
今の自分の持ち場を忘れてしまうほどに。
「オレの目は誤魔化せねえぞ。この杖を持ってんのはああああーー」
「あの、落ち着いてスロットルくん」
「んヘルシィぃぃ・んんハーミットぉぉぉ。あなたしかいねえ」
認識魔法で別人の姿に見えているにも関わらず。
スロットルは大声で。
周囲など気にせず。
ヘルシィの名をシャウトした。
「なんで、こんなとこいんの。あっ、あれかルーレッツさんが言ってた、あれか」
「あの、えっと。そんな大きな声を出していたら周りの人達がびっくりしちゃいますよ」
「おっ、そうだ。この春から学校に行くんだってな。その為の教科書を取りに来たのか」
全く自分の声が届いていないスロットルに。
レオナは苦笑いするしかなかった。
勢いと勢いと勢い。
もはやフルスロットル。
とにかく自分の思いを声高らかに放つ。
レオナとダグは話題の中心で。
その場に留まらざるを得ないが。
一般の通行人達は。
彼らのやり取りを見て見ぬフリをして。
各々の道を行くのだった。
「にしても、ダンマリだなんて、あんまりだぜ」
「さっきから呼びかけているんだけどねえ、スロットルくん」
「まあ、いいや。ところでこっちの女の子は」
「友達のレオナだよ。とりあえず、僕のことダグって呼んでもらえる」
「なんでですか。本名なのに。別にコードネームとかでもないのにぃ」
「お忍びだから、本名で呼ばれたくないんだ」
その言葉にスロットル、己の直近三分間の行動を振り返る。
何度か「うんうん」と一人頷くと。
それまでの叫びが嘘のように。
声量をレオナとダグにしか聞こえない程度まで落として。
にこやかに二人に謝罪した。
「ごめんなさい。ちょっと舞い上がってしまいました」
「うん、ちょっと戸惑っちゃったけど、気にしてないよ、レオナは」
「わ、私も過ぎちゃったことだし、もう気にしていませんから」
「すいません、お詫びと言っちゃなんですが店内を一緒に見て回りませんか」
「あれ、サイン会はいいのスロットルくん」
「いいんでさあ、ホレ」
スロットルはズボンのポケットから。
自身のPMAGを取り出すと。
画面を操作し。
書店の前に置いてあった。
机の横の立て看板に向けて。
魔法を放った。
『ペパ』
スロットルの端末から機械音声が鳴ると。
『スロットル・デスブランクサイズのサイン会ただいま休憩中』
黒のペンで書かれた立て看板の文字が変化した。
「これでよし。さあ、お友達のレオナさんもご一緒に」
「あ、ありがとうございます」
なんか強引に決まっちゃった。
スロットルのあまりの勢いに翻弄されるレオナだった。
ブライトグラス書店の前で。
嵐が巻き起こったかと思えば。
そのまま嵐は店内へと二人の客を巻き込んでいくのだった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
前回の後書きを受けてではないものの。
現在、『小説家になろう』で使用している。
この白海レンジロウのペンネームを名乗って。
一年どころか、じきに二年目に突入しようとしています。
思い出の作品に出てきた名前で『小説家になろう』で活動する。
なんて、十年前の自分に言っても信じられないだろうな。
ほんと、不器用な足取りだった。
さて、切ないポエムみたいになってきたので。
話題を変えて。
次回の更新は、いつも通り水曜日で12/3の17:00になります。
白海レンジロウ、か。
作品アップしないからこそ。
自己満足ですが。
ここにお礼を記しておきます。
名前は伏せるけども。
このペンネームを最初に名乗った。
あの作品の〇〇くん。
今でも元気をくれてありがとう。
なんて、照れるな、なんだか。




