ハーミット・リスタート【入学編】12ページ目 レイシの入学理由・後編
今年の春からクラスメイトになるレイシ。
彼について尋ねるレオナは。
談話室にて大雑把な学友の素性を知るのであった。
どうしてレイシはメロディアスの文化や。
MAG端末に小慣れているのか。
そんな疑問から本人へと尋ねてみたところ。
談話室でレオナはレイシから。
この寮に入るまでの経緯を聞こうとしていた。
「まず、オレん家は貿易商ってやつで、ヤマタイのM2PA社の拠点にもなっているんだ」
「それじゃあ、レイシってお金持ちのお坊ちゃんなの」
「おいおい、そんなガラじゃねえよ」
「ん、本当に今更だけど。レイシは留学生ってことだよね」
「まあな。筆記試験や面接は受けたけど、留学生枠としてここに来たんだ」
「なんか、MAG課の人って裕福な人ばかりな気がする」
「おいおい、まだ全員と面識もないのにそれは言い過ぎだって」
イーガくんは違うだろうけど。
食堂でのダグとの会話を思い出し。
多分イーガは自分と同じで。
バイトでお金を貯めて入学したんだろう。
そう自分に言い聞かせ。
レオナはレイシの話に集中した。
「オレは五人兄弟の末っ子で、まだ十代で会社の事とかは蚊帳の外だし、幻技ぐらいしか勉強してねえよ」
「うん、幻技って何?」
「おっと、この国でいう魔法ってやつだよ」
「へえ、ヤマタイでは幻技って言うんだ」
「ここの魔法とはまた色々違うし、派閥や流派とかもあるからな」
「そう言えば陰陽師って人達がその流派の一つなんでしょ」
昔バンバの話で聞いた知識を。
レオナはレイシに対し確認したところ。
彼は頷いた
「そんなところだろうな。他にも幻技を使う職業とか細かくあるんだけど、まあいいや」
「会ってみたいな、幻技を使える人達に」
「おいおい、目の前にオレがいるだろ」
「あっ、そうだった。ていうか、話とても脱線しちゃったね」
「いいよ。それでオレがこの学校に入るきっかけはウチの校長ってか理事長に直で会ったからさ」
「ハイプリステスさんに!」
思わず大きな声を出すレオナに。
飄々とした調子でレイシは話を続ける。
「去年の夏くらいかな。オレの実家に理事長が来たんだよ」
「なんで理事長が、レイシの家に」
「親父曰く、旅行だとさ」
「へえ、レイシは偶然ハイプリテスさんの目に留まったんだね」
「まあ、そんなとこさ。そこで留学の件を持ちかけられたのさ」
「自分で振っておいてなんだけど、なんとなく話がとても複雑そうだね」
「すげえ話を大雑把にして伝えたけど、今日はこれくらいでいいかい」
「うん。ありがとう。むしろこれくらいが丁度いいよ」
「あいよ、んじゃ。お互い荷解きもあるし。オレの話は今日はこれくらいにすっか」
「だね、お互いクラスメイトになるし。時間をかけてお互い知り合っていこう」
こうして大雑把ではあるが。
レイシの足取りを知れ。
話を聞けたレオナは満足気に。
自分の部屋へと戻るのであった。
笑顔を見せながら。
椅子に座ったままレイシは。
談話室を去っていくレオナを見送り。
しばらくしてから、彼は自分の部屋へと戻っていくのだった。
ヤマタイからやってきた少年は。
少女との会話の際に。
笑顔の裏で。
どこまで話をはぐらかしつつ。
自分の事を伝えられるかで。
内心、穏やかではなかった。
(ツバメ姉さんを探せって、言われてもな)
少年はこの地に来た本来の目的を思い出しつつ。
取り繕った表面上の自分が。
この先クラスメイトに。
どれだけ受け入れられるか心配だった。
昨年の春からこの国で音信不通となった。
自分の姉を探すという目的を心に秘めつつ。
『もし、お姉さんをお探しならウチの学校に来てみない?』
『レイシ。これは父からの頼みであり命令だ。ツバメを連れ戻してこい』
理事長と父が自分にかけた言葉が。
重圧となっていることを少年は誰にも話せていない。
だからこそ、まだ始まってすらいない姉の捜索に。
辟易さすら感じていた。
(全部放っぽり出したら、楽なんだろなあ)
自分に与えられた使命だからこそ。
クラスメイトに隠し事をしている点が。
少年の後ろめたさになっていた。
(普通の学園生活、なんて期待しても無駄だろうな。休みの日にゃ姉ちゃん探しだろうし)
カードキーをかざし。
自室へと入る少年に。
少女との会話で見せていた。
飄々としていた笑みはなく。
スンと冷たい表情だった。
余計な者を巻き込むわけにもいかない。
少年が己の心情にふけっていると。
「おかえりなさい」
「うわああ」
「あれ、びっくりさせちゃった?」
自分の父親と変わらない年齢の。
ルームメイトのビリーからの挨拶に。
自身の使命に頭がいっぱいの少年は。
年相応に驚くのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回からはレオナの面接の回想になります。
四話ほどを予定しております。
前中後終の四本立てで。
終編ではダグもといヘルシィの過去にも触れる予定です。
次回の更新は10/8の17:00となります。
それと集英社WEB小説大賞の結果が発表されましたが。
落選となりましたものの。
日頃からこの作品を読んでくださる方々。
今回の新人賞を機に今作とお初にお会いになられる方々。
この場をお借りして。
今作にお目通しいただき。
本当にありがとうございます。
前作のキーワードのタグについては。
次の集英社WEB小説大賞が開催されるまでは。
そのままにしておこうと思います。
次の同公募に臨むにしても。
今作の『ハーミット・リスタート』を用いての。
記念参加はしない予定なので。
その時が来たときに。
いつの間にか。
キーワード削除をしていると思います。
では、後書きのスペースで書くのも。
新鮮な気がしますが。
次回のお話で読者の皆様とまたお会いできるのを。
心よりお楽しにしております。




