ハーミット・リスタート【入学編】1ページ目 誰もが魔法を使える世界
誰もが魔法を使えればもっと豊かになれるし。
僕もみんなから褒められると思っていたけど。
現実はそうじゃなかったんだよなあ。
掌に収まるほどの液晶画面のついたプレートの下部には半球状のクリスタルが埋め込まれていて。
そのクリスタルにタッチすると起動の合図。
プレートに魔力を流すためのね。
起動すればプレートがディスプレイになって映像や文字を映し出しだてくれる。
プレートには撮影や録音に録画といったカメラ機能も搭載されている。
音楽や映像の発信と再生も気軽に利用できる。
更に記憶した情報を外部に転送し共有と保存もできるから情報のネットワークが形成できるのだ。
外部記憶装置MAGic・Attachment・Gadget。
通称・MAG。
僕、ヘルシィ・ハーミットが生み出した新技術だ。
それにより魔法の概念は様変わりしてしまった。
魔導書も詠唱も必要ない。
魔力がなくとも魔法が使える世界。
誰もが魔法を使える世界。
予め魔法をMAGに記憶させておけばいいだけで。
加えて魔法以外の情報も記憶できる点も無視できない。
筆記用具、財布、身分証明書。
個人情報や記録に関する道具も端末一つで済むし。
それ以外にもMAGが世界を変えた理由がある。
MAGを搭載した端末はあらゆる道具の頭脳、異世界だとOSと呼ばれる仕組みと化す点だ。
端末に蓄えた情報を駆使して無人で作業ができるようになった。
これにより多くの仕事が自動化された。
魔道具を作り出す工房は工場へ。
職人は作業員に親方は工場長や社長へ。
宣伝もMAGの画面を使ってのディスプレイ方式が浸透した。
首都のレンガと石造りの風景も十年前までで過去のもの。
現在は大型の画面が都市に飾られて宣伝が飛び交っている。
様々な広告とニュースに彩られた街並み。
二十秒間隔で切り替わっていくMAGによる魔導式掲示板。
本日のニュースだけでも多種多様だ。
『M2P・Advancedのヘルシィ・ハーミット氏、会長を辞任し後継は現社長業のピジョン・デイウォーク氏』
『カップアンドコイン魔導学院にMAG専門の学部兼クラスが今年より試験的に開設』
『MAGの誕生から今年で十八年』
世の中はもの凄い速さで移ろいでいった。
MAGはもはや情報端末としての利用だけにとどまっていない。
日常の様々なシーンで人々は目にしている。
家事、交通、商品の売買などなど。
今やMAGはこの世界に欠かせない。
僕が生み出した技術はこの世に必要不可欠となったのだ。
ただ、そのせいでとても寂しい思いをすることになった。
だから、認識魔法で姿を変えて。
この四月から友達のレオナと一緒にカップアンドコイン魔導学院に入学することにした。
新しい時代で僕は楽しく生きると決めたんだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
前作の『ハーミットなごちそう』の新パートでなく。
新作として続きを始めました。
これからも読者の皆様に支えてもらって頑張りたいと思います。
レオナとヘルシィもといダグの新しい一歩や。
新しく出会う人々など。
様々な新しいが詰まった物語になりますので。
ぜひご期待ください。
次回の更新は予告通り二本立ての本日7/23の17:30となります。
これからもよろしくお願いします。