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第31話 王宮にて、国王陛下に勝ちました!


 お父様も王都に到着し、いよいよ今日これから王宮へ向かう。昨日の内にお父様が手紙を出しておいてくれた。お母様は屋敷にお留守番だ。けれど体調は良いらしく、帰ってくるまでにお菓子を用意してくれるそうだ。お母様の作ったクッキーは凄く美味しいのでそれをお願いしておいた。

 馬車に揺られそう遠くない王宮まで三人で静かに向かう。お父様は国王陛下に物申す気満々で、ルクスは少し緊張している。私はといえば早く終わって領地に帰りたいと思っている。私は元王太子の婚約者、王宮は庭同然だ。


「お父様、これが終わったらすぐに領地に帰るのでしょうか?」

「そのつもりだ。王都に長居するわけにはいかないからな」

「僕は正直、王都より領地の方が慣れているので早く帰りたいです」


 私も早く帰りたい。王都は人が多い分店も多い。けれど建物ばかりで人が多すぎる王都はあまり慣れない。人酔いしてしまう。そもそも王都に留まっていると他の貴族達がどんな反応をするか分かったものではない。

 シェラード家としてはこれ以上権力を高めるつもりはないのだ。困っている事はないし、何か欲するものもない。これ以上は面倒事ばかりが増える。王家に少し意見したところで揺るがないならもう何も必要ないのだ。

 例え王家から打診されたとしても、婚約を結ぶつもりはない。私が嫌だから!


 昨日とはまた違った正装で王宮へ向かう。馬車が止まると、パーティーの時とは違って真っ直ぐ王宮へ向かう。チラリと見ると、離宮の方向は封鎖されているようだった。

 向かうのは謁見室。私とルクスはお父様の後を着いていく。私は前回のこともあって場所を知っているけど、一度も入った事がないはずの王宮で迷わず進めば怪しまれる。お父様は何度か来た事があるそうで、迷いなく謁見室まで進んでいく。


 謁見室の前にいる騎士にお父様が名乗ればお待ちしておりましたと扉を開けられ中に通される。挨拶代わりに礼をする。前に座っているのは国王陛下と王妃、その横にバカ王子が立っている。この場に必要ないはずの第一王子を入れているという事は、王家はやはり私との婚約を諦めていないらしい。

 そもそもこの場はパーティーでの事件の説明と謝罪という体になっているのだから、もうちょっとそれらしくすれば良いのに。せめて第一王子だけでなく第二王子もここに呼べば良かったとは思う。


 国王の第一王子贔屓がよく目立つ。王妃様も不満はあるだろうに、微塵も顔に出さない。王妃に相応しい方だとよく分かる。流石に側妃様は呼ばなかったようだ。謝罪の場で私欲を優先するわけにもいかないはずだ。この正式な場で側妃様を呼ぶ事は流石の国王も無理だと分かっているのだろう。

 国王陛下が楽にしろと一言発話する。私達は立ったまま次の言葉を待った。


「まずは謝罪しよう。王家主催のパーティーで、そちらのシェラード公爵令嬢に怪我を負わせてしまった。騎士達も対処できなかった事、重ねて詫びよう」

「謝罪は受け入れますが何故騎士達の到着が遅れたので? 娘達が魔物を倒し切る前に会場に来られるはずでしょう」

「……原因は今調べている」


 言葉を濁してはいるが、つまりまだしっかり調べていないのか、それとも何か話せない事があるのか。けれど原因が分からない可能性もある。あんなに大きな事件で騎士がすぐに駆けつけられないなら、何らかの魔術がかけられていた可能性だってある。そこは期待していない。お父様も分かっているだろう。つまりお父様の意地悪だ。


「それで、あの魔物達はそこの二人が倒したという事で合っているか?」

「グレートウルフ以外の魔物は大半をわたくしが魔術で倒しましたが、グレートウルフに関してはこちらのルクスが倒しました」

「それより陛下、まず娘の怪我の心配をされるべきでは?」


 いつもは私の方が突っ走るが、今日はお父様の方が笑いながら嫌がらせをしている。流石お父様、国王陛下相手でも臆せず話すどころかチクチクと刺さる言葉を言っている。陛下からしたら居心地が悪いことこの上ないだろう。

 チラリと王妃様を見てみれば、心做しかスッキリしたような顔で笑っている気がする。国王陛下に進言できる相手は限られているが、お父様は陛下でも下手に出る事ができない人物だ。王妃様も日頃の鬱憤を少しは晴らせるのかもしれない。まぁ、全て私の想像だけど。


「そ、そうだったな。怪我は何ともないだろうか。謝罪の意味も込めて、何かできる事はあるか? 責任を取って、王子と婚約でもどうだろうか……」

「陛下、確かシェラード公爵は既に婚約を断っておられたのではなくって?」

「い、いや……だが、このまま何もしないわけには……」


 思わぬ形で王妃様から助け舟が出される。やっぱり王妃様も不満は溜まっているのではないの!? でも今がチャンス。何かしたいなら私から提案してあげよう。自分から言い出した事なのだから、嫌とは言わせない。多分お父様と王妃様も賛成はしてくれる……と思う!


「では国王陛下、ひとつわたくしの願いを期待てくださいませんか?」

「おぉ、何でも言ってみよ」


 何でもって言ったな? 軽々しくそんなこと言わない方が良いなんて子供でも分かるのに、焦って言ってしまったのかもしれない。


「では……わたくしとルクスの婚約の立会人になってくださいませんか?」

「そっ……それは良い案だねセシリア、どうです陛下? これで今回の怪我の件は帳消しと言うことで」

「まぁ、わたくしも良い案だと思いますわ! ねぇ陛下?」

「いやっ……ぁ、そうしよう……」


 あたふたとしながらも残念そうに同意した国王陛下に私は思った。勝った!


 ちなみにこの後お父様にお小言をもらった。解せぬ。

 

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