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第29話 狙われたわけ


 屋敷に戻ると、再びルクスに横抱きにされて馬車を降りる事になり、その様子と私の腕の怪我を見た使用人達が慌てて私達を部屋へと通した。私はすぐに怪我の消毒をして再び包帯を巻かれる。

 流石に会場に消毒できるものはなかった。お酒があれば別だったのだろうけど、今回のパーティーに集められたのはお酒の飲めない若者達。つまりそもそも酒は用意されていなかった。ひとまず応急処置でとルクスが会場に置かれていたテーブルのクロスを割いて包帯代わりにした。


 物語じゃないのだから簡単に布なんて手で割けないわ! なんて思っていたのに、ルクスは躊躇いもなくクロスを手で割いていた。やはり私より力がある。ルクスが使用人達にちゃんと消毒と手当を頼むと、手紙を書くと言って部屋に入ってしまった。

 お説教も私が狙われた理由を考えるのも後だ。とにかく今日は手当が終わり次第ゆっくりお風呂に入って寝たい。もう既に疲れているし、少し眠くなってきている。

 使用人にお風呂に入りたいと伝えれば、それでは消毒だけして包帯は後で巻きましょうと言われた。確かにその通りである。もう頭が働いていない。私はされるがままにお風呂に入り、包帯を巻かれ、髪を拭かれている時はもう半分程意識がなく、おそらく色々終わってからちゃんと寝たはずだ。

 記憶がない。


 〜


 眩しい。よく寝た気がする。時間は……昼。流石に寝過ぎた。なんて事だ、ルクスはもう起きているのだろうか。昼までぐっすり寝ているなんて、使用人達は起こしてくれなかったのか。いや、私が自分で起きれば良いのだが、使用人達の仕事でもあるはずなのに。

 聞けば昨日は大変だったのだから今日くらいは好きに寝かせておこうという使用人達総意のものだったそうだ。なるほど、確かに昨日は色々あったし、仕方がないといえば仕方がない。ルクスもまだ寝ているそうだ。そりゃあ私よりルクスの方が動いていたのだから当然か。


 私の魔力も回復している。軽く昼食を食べてルクスが起きるまで待つ。昨日の夜、ルクスはお父様に手紙を出してくれていた。すぐに領地に帰るつもりだったのに、色々あってそうもいかなくなった。お父様から手紙が届くまで王都に滞在する事になる。

 滞在期間が延びる事は仕方がない。ならばまず考えるべきは魔物の侵入についてだ。王宮という場所にあれだけの数の魔物が現れている。それはまずあり得ない事だ。王宮に魔物が侵入しようとすればきっと騎士達が気付く。何より、魔物はどこから来たのだろうか。


 魔物は倒してもその分補充されるように増えていたように感じた。私が一斉に倒してしまったから引き下がったとも取れる動きだ。問題は、誰が魔物をコントロールしていたのか。グレートウルフはあくまで群の統率者。魔物が倒される度に補充するというのは、人間にしかできない。そんな事ができる魔物は聞いた事がない。

 何よりあの笛の音だ。あの音が聞こえたすぐ後に魔物が現れた。何か関係あるはずだ。でも誰がやったのかは分からない。そもそもの狙いはなんだ? 何故私が狙われたのだろう。


 正直、狙われる理由ならいくつか思い付く。第一王子は私とルクスの関係を知った上でどうにか婚約まで持っていこうとしていた。私とルクスが婚約すればシェラード家は中立のままでいるはずだ。それだと第一王子は王太子になれない。次期国王になる事はできなくなる。

 なんせ今優勢なのは第二王子だ。当然血統もあるし、母が正妃という事もあるが、一番は四大公爵家のひとつが後ろに付いている。ハワード家だ。正妃のお母様の生家であり、正妃との繋がりが強い家だ。第二王子の祖父母の家でもある。


 側妃の実家は男爵家。国王が貴族達の反対を押し切って側妃にさせた。そのためあまり第一王子派の貴族はいない。元より反対していた貴族達は勿論、中立派もあまり手が出せない。ハワード公爵家が第二王子派である事から、四大公爵家を敵に回したくない貴族達が中立派と第一王子派に別れている。

 今の現状で第一王子派として動けるのは他の四大公爵家くらいだろう。第一王子派にも公爵家が付いているとなれば他の貴族達の動きも変わる。そこで目をつけられたのが、シェラード家という事だ。


 第二王子派がシェラード家が第一王子派に付くことを阻止しようとしたが、第一王子派がシェラード家との婚約を強引に進めるために私に怪我を負わせた、どちらも考えられる事だ。

 困った事に私が狙われる理由はそれだけじゃない。前回はこんな事件は起こらなかった。私が前回早めに帰ってしまったというのもあるかもしれないが、前回と違う行動が影響した可能性もある。


 帝国第一皇子、イリオス皇子の発見。前回帝国の第一皇子は体が弱いからと表舞台に出る事はなく、第二皇子が皇太子として王位に着く事になっていた。つまりイリオスは見つかっていなかったのだ。その後、第一皇子が亡くなったという訃報が王国に届いていた。

 現在、第一皇子の体調が回復しているという噂が広まっている。言わずもがな帝国の皇帝が流した噂だろう。他国へ拐い、もう二度と戻る事はないと思っていたはずの皇子が戻ってきた。それが私の仕業と分かれば、狙うのも頷ける。


 けれど狙ってどうする? 他国の貴族に手を出したとなれば戦争に発展しかねない。しかも皇帝を敵に回すような事をしてどうする。私を狙って、例え私が運悪く死んでしまったとしても、既に第一皇子が帝国に帰っている状況は変わらない。

 となれば第二王子派が一番有力な気もするけど……あのバカ王子が率いているのだから第一王子派もあり得る話だ。これじゃあイタチごっこだ、どれだけ考えても分からない。お父様に話をして調べてもらうのが一番かもしれない。


 早く手紙が届きますようにと思いながらため息を吐いた。

 

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