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第2話 求婚

 私は今お父様に怒られている。


「ようやく熱が下がったと思えば、一体全体どうしてこんな事になっているんだ? まだ熱が下がっていないのか……それとも熱でおかしくなったかい?」

「私は至って真面目です」

「真面目だからダメなんだ」


 お兄様に結婚を迫った瞬間、お兄様の後ろにいた使用人が大急ぎでお父様を呼びに行き、お兄様は固まって立ちすくんでいた。そのまま私は、大慌てで来た使用人から話を聞いたお父様に呼び出しをくらった訳だ。ちなみに、放心状態のお兄様は別の使用人によって部屋に運ばれた。


「特に問題はないと思いますけど……?」

「お前の熱が下がってようやく気苦労がひとつ減ったと思ったらお前がまた増やしてしまったんだ。それで、どうして急にルクスと結婚なんて言い出したんだい?」

「お兄様が好きだからですが……」


 私がそう言った瞬間、ガゴンと大きな音がしてお父様が座っていた机に頭をぶつけていた。しかしながらこれ以上説明できそうな理由はない。このままでは私がバカ王子こと第一王子と婚約させられ、シェラード家は没落どころか崩壊に向かっていきます。などと素直に話しても信じてくれるとは思えない。


 それに、お兄様の事が好きだというのも嘘ではない。前回はお兄様の復讐のためには国が傾こうがなくなろうがどうだって良いとさえ思っていたのだから。それが兄弟愛か異性に対しての愛なのかははっきりとは分からない。

 

(けれど少なくともバカ王子と婚約だけは回避したい!)


 あのバカ王子以外であればお兄様以上の婚約者など思い付かない。前回の記憶を頼りにすると、やはりお兄様との婚約はシェラード家にとっても私にとっても利のある事だ。私にとっての最重要はバカ王子と婚約しない事だが、シェラード家にとっての最重要は現状維持だろう。


 領地は豊か、他国との関係も友好で戦争が起こる兆しはなし。王家との婚約で出ていく物は多いが、得る物が少な過ぎる。加えて四大公爵家というのは王家の次に地位が高い家だ。王家以外との婚約となれば、必然的にこちらが何かしらの支援をしなくてはならない可能性が出てくる。


 その点、お兄様は親戚筋から引き取って養子にする予定のため、お兄様がいたラウダー家への援助は必要ない。これからのシェラード家のためには、他家への援助なく自家の領地の維持、発展について考えるのが最善だ。


(何より、お兄様と一緒にいられる!)


 お兄様の一番近くにいるのは私で良い! むしろお兄様の隣にいられるのは私しかいないのではと考えた事すらある。せっかくの好機、逃してなるものか!


「セ、セシリアは……この前まで、私と結婚したいと言っていたのに……」

「一体いつの話をしておられるのですか」


 机に頭をぶつけたお父様のおでこが赤くなっている。余程ショックを受けたようだ。もちろんお父様の事も好きだが、それは父親として尊敬しているからであって間違ってもファザコン的意味ではない。何より前回の記憶がある今の私にお父様と結婚したいというのは少々厳しいものがある。主に精神的に。


(それを言ってしまうと、私はブラコンになるのだろうか……? いやむしろ好都合かもしれない。)


「お父様は元々、お兄様を私の婿養子にとお考えだったのでは? その方が、我が家の事を考えても、領地の事を考えても、利のある事でしょう」

「セシリア……気付いていたのかい?」

「私もこの国の四大公爵家が娘、シェラード家の長女ですのよ。いつまでも子どもでいるつもりはありませんわ!」


 実際は、前回お兄様の婚約者が決まった時に聞いた話なのだけど……


 お兄様がシェラード家に引き取られた際の事情については、詳しく知らない。訳ありだというのはなんとなく察しているが、聞かない事にしていた。なんだかんだと、前回はお兄様との関係がかなり良好だった。よく一緒に出掛けることもあったし、二人で息抜きに家でお茶を飲むなんて事もあった。無理に聞いて、嫌な思いをさせたりしたくはなかった。


 今回も、その事について深く触れる気はない。必要ならば聞くが、必要ないならお兄様が話してくれるのを待てば良い。どうしても知りたい訳じゃないし、一生知らなくても構わない。お兄様が幸せに生きていてくれれば、それで十分だ。


「いつの間にか、お前も大人になってきていたのだな。だが、そう簡単に決める訳にもいかん。ルクスの意思も出来る限り尊重しなくてはならない」

「それはもちろんですわ。お兄様が私と結婚したいと思えるよう私も今以上に歩み寄るつもりですので!」

「そこは心配しとらん。それより問題なのは、王家との関係だ。セシリア、ここだけの話だが、お前に第一王子殿下との婚約話が持ち上がっている。もちろん候補の一人だが、最有力候補である事は間違いない。後は、言わなくても分かるね?」


 正直驚いた。こんなに早くから婚約の話が来ていたという事だろう。お兄様がまだ正式に養子になっていないのも、それと関係があるかもしれない。何より問題なのは、あのバカ王子の婚約者候補になっている以上、現状お兄様との婚約を決める事ができないという事。


 それは困る。非常に困る。何としてでもバカ王子との婚約を回避せねば!!

 

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