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小さな小さな星の祠

注意!!

このお話は過激な描写を含みます。

苦手な方は、ご遠慮下さい。

「結びの回廊に入って大抵の事には驚かなくなりましたけど、これは…綺麗…」


満天の星空。そして、見慣れた月の代わりにマユミとアイが見上げているのは、青く輝く地球であった。


「あれは…恵みの大地…」


時を忘れるほどに、二人はその美しい星を眺めていた。


『……こっちよ…こっちよ……』


「ん?」


その永遠の時を終わらせたのは、鈴の音のように響いてきた微かな声であった。


二人は初めて自分達が立っている地を見渡した。

只々広がる砂と岩の大地。マユミとアイは声の主を探して歩き出す。


『…こっちよ…こっち…』


声に導かれ暫く歩くと、遠くに小さな祠が見えて来る。

次第にハッキリと聞こえて来るその声は、どうやらその(ほこら)から聞こえている様であった。


『こっちよ。こっち。』


「私達を呼んだのは貴女ですか」


祠の扉は開かれていて、中には親指ほどの小さな小さな黒い猫が居た。


『ええ。良く来てくれました。ずっと貴女達を待っていたのです。』


「…それは…」


『私はこの回廊の案内人。貴女達を恵みの大地まで御案内するのが私の役目。』


「それでは!私達、遂に恵みの大地へと辿り着けるのね!」


『……先ず貴女達には、この小さな小さな星の反対側にある祠で(みそ)ぎをして頂かなければなりません。その後、またこの祠へとお越しください。』


小さな黒い猫は器用に右の前足で、その方角を指し示す。すると真っすぐに光の道が現れた。


『この道から外れずに向かって下さい。少し繊細な吉方取りになりますから、決して振り返ってはなりませんよ。』


そしてマユミとアイは光の道を歩き始めた。道幅は二間程もあり、そこから外れることなどは考えられなかったが、慎重に中央を歩いて行く。


『あっ!待って!そっちでは無いわよ!』


不意にクロが後から呼び止める声がする。


「え?」「アイ!振り向いてはいけません!」


「あ!!…危なかったー!隊長、ありがとうございます。もう…あの猫ちゃんは以外と意地悪ですね…。」


「フフッ、そうね…でも、可愛らしいじゃないか。」


マユミには、クスクスと笑う黒い猫の姿が目に浮かぶ。


その先は何事も無く、三里程歩いた所の大きな岩の前に目的の祠はあった。

最初の祠と同じ様に開かれた扉の前には、小さな小さな三毛猫が此方を見て座っている。


『良く来たね。僕はミケ。此処で君達には自分の大切な物をお供えしてもらわなければならないんだ。その覚悟はあるかい?』


「…成る程。最後の試練か…。良いでしょう。私は例えこの命でさえも差し出す覚悟です。」


マユミは深く頷くと、戸惑いも無くそう言った。そして、アイに向きなおり、しっかりとその目を見つめる。


「しかしアイ。貴女は私に付き合う必要は有りませんよ?」


「フフフッ、隊長?私は私の意思で恵みの大地を目指しているんです。決して隊長のお供ではありません。」


「そう…。」


アイはミケに向けてお辞儀をすると、そのまま

唐突に自らの両の目をくり抜いた。


「…これをお供えします。」


『……』


「では、私はこれを…」


マユミは右の手刀で、左腕の肘から下を切り落として差し出す。


『……君達の覚悟、確かに受け取りました。お見事。』


ミケは光に包まれ人の姿となると、二人の供物を祠の前の台座に供えた。


『それでは、クロの祠に向かいましょう。』


ミケは先程とは違う光の道を作り出すと、二人に先立って歩き出す。


マユミは衣の袖を細く噛み千切り、アイに手渡し反対の袖も同じ様に裂くと、器用に口を使って自らの左腕に固く結び付けた。


アイも渡された布でしっかりと傷口を覆い、キツく締め付ける。


そしてマユミはアイの手を取り、しっかりとした足取りで光の道を進んで行く。


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