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奇蹟のアンサス  作者: 究極生命体ハシビロコウ
第1章 旅立ち
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第1話「出会い」

「僕はルベル・アクイレギア。この家の3男で歳は16です。よろしくお願いします」


 普段、家族や使用人以外の人間と会話する機会がないルベルにとっては、超久々の自己紹介であった。


「あぁ、君がルベルかぁ〜。君のことは、お父さんと手紙でやり取りをしている時に知ったよ。その時から会いたいと思っていたんだ」


 サルバスは喜びをあらわにした。


「こちらこそよろしく。ルベル」


「.....」


 ルベルは恥ずかしかったのか、言葉を返さなかった。


「そういえば、君のお兄さんたちは元気にしているかな? 彼等にもしばらく会っていないんだ」


「えぇ、まぁ...元気です」


「そうか......良かった」


 サルバスはルベルの父との手紙のやり取りで、兄弟達の現状をある程度把握していたからか、彼らのことをかなり気にかけている様子だった。


「サルバスさん...外は冷えるので、そろそろ中へ入りませんか?父さんが待っていますし......」


「あぁそうだね、ごめんごめん笑。君に会えたのが嬉しくてね。そうだ、後でまた2人で話したいんだけどいいかな?」


「...はい..大丈夫です」


 そう言って2人は屋敷の入り口へ向かった。屋敷の入り口の前には使用人が立っており、既に出迎えの準備が整っているようだった。


「サルバス様。ようこそお越し下さいました。旦那様がお待ちです。どうぞ中へ」


 使用人が扉を開き2人が屋敷の中へ入ると、そこには1人の男が待っていた。身長はサルバスと同程度。口の上に立派な髭を蓄え紳士的なオーラを纏っている。


 彼の名は「ヒューゴ・アクイレギア」。ルベルの父にして、アクイレギア家の当主である。


「久しいなぁ!サルバス!」


「はっはっはっ!懐かしい顔だなぁ〜。元気にしてたか?」


 2人は久々の再会を喜び合った。


「すまないね。急に訪ねて来てしまって」


「別に構わんよ、こうして再会できることが嬉しいんだ。それに重要な話があるんだろう?」


「あぁ、そうだ」


 サルバスは真剣な表情で言った。


「ルベル、出迎えご苦労だった。部屋へ戻っていて構わんぞ」


「...はい。父さん」


 ルベルは部屋へ戻ろうとしたが、次の瞬間......


「待ってくれ!」


「!?」


「ルベル。君も私たちの話に同席してほしい」


 サルバスの思わぬ発言にルベルは困惑した。


「何故...僕も?」


 ルベルは問いかけた。


「一緒に聞いてもらった方が、君のためになる思ってね。」


「......分かりました。」


 少し沈黙した後ルベルは納得した。


「旦那様。サルバス様。お部屋へご案内いたします。こちらへ」


 使用人が2人を部屋へ案内しルベルもそれに続いた。部屋へ入った3人はそれぞれソファへ腰掛けた。大人の会話に混ざることがないルベルは、少し緊張していた。


「ガチャッ。ガラガラ......」


 そうしていると、部屋の扉が開き車椅子に乗った1人の青年が中へ入って来た。黒髪の長髪で色白。顔の雰囲気は若干ルベルと似ていて、とても優しそうな顔をしている。


「お久しぶりです。サルバス殿」


 現れたのは「ブラン・アクイレギア」。アクイレギア家の長男にして、ルベルの3つ上の兄である。普段は父ヒューゴの仕事を手伝ったりしているが、病弱であるため床に伏していることが多い。


「おぉ!ブランか! 久しぶりだなぁ〜。体の方はどうだ?」


 サルバスは嬉しそうな表情でソファから立ち上がり、ブランの方へ寄って行った。


「なんとか...大丈夫です...ゴホッ、ゴホッ」


 心配そうな顔で見ていたヒューゴが言った。


「ブラン。あまり無理はしないくていいんだぞ。家のことよりも、自分の体方が優先だ」


「逆ですよ。父上」


 ブランは少し苦しそうな表情で言った。


「今日は重要な話をするんでしょう? 長男である私が、話に参加しないわけにはいきませんよ」


 ヒューゴは困った表情になった。


「ヒューゴの言う通りだブラン。無理をする必要はない。これ以上病が悪化してしまったら、どうしようもなくってしまう。寝室に戻って休んだ方がいい」


 サルバスはブランを説得しようとしたが、ここでルベルが口を開いた。


「心配なのは僕も一緒です。できれば休んでほしい。けどブラン兄さんは、一度決めたらそれを最後までやり通す人です。そして兄さんは、今日この話に参加することが、自分にとって幸せなことだと思っている。僕らが何を行っても兄さんは部屋に戻る気がない。ち......違いますか? 兄さん」


 ヒューゴとサルバスは驚いた表情でルベルのことを見つめていた。


「ふふっ。さすがルベルだ。私のことをよくわかっている。」


 ブランは、幼い頃から引っ込み思案だったルベルを誰よりも気にかけていた。そんなブランに対し、ルベルは尊敬の念を抱いている。2人の関係値はヒューゴとサルバスの想像以上に高かったのだ。


「はははっ!いい兄弟だよ君たちは」


 サルバス笑顔で高笑いした。


「はぁ...わかった。そこまで言うならブランも同席しなさい。ただし、もし体調が悪くなったら我々は、無理矢理にでも寝室のベッドへ連れて行くぞ。お前に何かあっては困るのだ......」


「ありがとうございます。父上」


 ブランは安堵の表情で返事をした。


「これで全員揃ったな。では話を始めようか」


 サルバスがソファに腰掛けそう言った瞬間、全員の顔が真剣な表情になった。


「私が今からする重要な話は、この国とアクイレギア家の未来を大きく左右する話だ。今この国で何が起こっていて、それがアクイレギア家にどのような影響を及ぼすのか。それを理解してもらいたくて、ルベルにも同席してもらっている。心して聞いてくれ」


 ルベルはサルバスの話を固唾を呑んで聞いていた。このサルバスの話が、ルベルの人生を大きく動かすきっかけとなる。


 彼は何を語り、ルベルにどのような影響を与えるのだろうか?

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