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「歌、手こずってみるたいだね」
私の髪の毛を梳きながらそう言った。
ココ最近私の繋い歌を1番聞かされているのは氷翠だし、黙れととうとう堪忍袋の緒が切れてしまったのだろうか。
今優しいのは処刑前だから!?
戦々恐々していると氷翠が私たちが歌う曲のサビを歌った。
それはもう、私とは比べのにならないし、持ち歌でしたっけと歌うくらいには上手かった。
「どう?あってる?」
「上手っ!!」
「伊達に中等部からアイドルやってない」
なんて事、私はこの差を知らずにステージに立とうとしていたのか。
当てつけ……にしては優しすぎるし、ちょっと氷翠の意図がわからない。
「色々思うところはあるけど、なんで歌えるの?」
「そりゃ、あんだけ聞かされれば耳に残るさ。この寮内じゃ鼻歌程度ならみんな歌えるんじゃないかな?」
「なんてこと」