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そして冒頭に戻る。
街ゆく人々は早足だ。スマホを見る人、おしゃべりする人。なんかメンドもいたし、客引きもしてた。
ここにある全てが私に度って新鮮に映る。
「ねぇ!アナタ!!」
意味もなく地面のアスファルトと、自分の両足の靴を見ていた。汚れている。
そこに鼓膜にダイレクトに響く大きな声。
普段から腹から声を出している人の声。
右耳を抑えて蹲る。
(いってぇ〜〜!!!)
「ちょっと!大丈夫!?」
「だ、大丈夫じゃないから……静かに……」
恐らく女の子であろう子に手のひらを突き出して黙ってくれるようにジェスチャーを送る。
待ってくれ。
「あー」
立ち上がって頭を軽く振る。
声をかけてくれた女の子の方を向く。
大きな目には強い意志が宿っていた。
強気な印象を受ける勝ち機な表情なのに、愛らしさを感じる。常に笑顔を意識していて、口角が上がっているからだろう。
身長は童顔に対しては大きめだと思った。
キラキラした顔に対してはジャージという格好で違和感を感じた。
(雑誌とかのモデルが着てるようなオシャレとかしてそうなのに)
「ねぇ、大丈夫?」
さすがに悪いと思ったのか声を少し抑えてくれた。
方にぽんと手を置いて心配そうにしてくれる。
そこまで来ると私の方が申し訳なくなってくる。
「う、うん。大丈夫。ちょっと疲れてて……」
「そうなのね、私は朝日奈太陽よ!」
腰に手を当てて決めポーズしながら名は体を表すという説得力を与えられた。