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「いいよ、分かった」
180の男、もとい、自称プロデューサーが何かを言い始める前に遮った。
思い出しても仕方ないし、鑑賞に浸った所でどうにかなる事でもないなら、今は捨てておこう。
「これってスカウトだよね?」
『はい』
「1つ条件つけてもいいかな」
こな条件を飲んでくれないとなると非常に今後が苦しくなる。なるべく平坦な声、平常心を意識する。
「助けてくれる?」
『……どういう事ですか?』
「あー、全部言わないと駄目かな」
『………いえ、助けます』
長い沈黙の後に、理由を聞かずに強い声で言い切った。
私は目をパチクリさせて逆に不安になる。
向こうにも向こうなりに思うところはあるだろうし、問題を抱えてそうだと察したはず。
アイドルと言うからには真っさらな純白が良いはずだろうに、既にインクがしみてしまったと気付いた筈なのに、助けると言い切ってくれた。
だから、信じてみようと思えた。
「いや、言うよ。ありのままを。でも電話越しじゃない」
『はい、事務所で待っています』
「分かった」
自称プロデューサーも落ち着いた声でわがままを承諾してくれた。
迷いはある。怖さもある。心細さなんてもっとある。恨みもある。憎しみもある。
(ああ、私にはこんなにもいっぱいある。負の感情だけどね!)
でも、全て乗り越えてやる。そう決めた瞬間だった。
『あ、何日の何時頃になりますか?』
締まらないなーと苦笑いを浮かべた。