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「ねぇ、聞いたかしら?」
髪色が白の女生徒が長机から離れて室内にいる別の女生徒へ話しかける。
その女生徒は腕に腕章をつけていて、それは生徒会役員の証だった。
17にしては背の高い彼女はスタイルもよく、他のアイドル候補の子達とは纏うオーラがまるで違う。
明星星姫。
実績としては既に持ち歌を持ち、ステージでファンを沸かし、テレビ出演も何度かした事のあるれっきとした新人アイドルとして世間から認知されている。
答えを待たずして続ける。
「一年生にいい子が居るらしいじゃない」
「朝日奈太陽さん?」
「ああ、居たわね。その子じゃないわ」
「他に居たっけ?」
「居たのよ、栞。未来のスター候補が!」
夢の素知らぬ所で、学園での影響力が最もある人物達が夢を注視し始めたのだが、これが後にあんな事になるなんて誰も知る由もなかった。
「へくちっ」
レッスン終わりの教室で大勢に囲まれていた夢はくしゃみをした。