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『ああ、貴女でしたか。朝日夢さん』
「ええっ!?ちょ、ちょっとなんで名前知ってんの!?まさかストーカーとか……」
『ち、違います。私は、貴女のお姉さんの事を知っています』
そう言われた時、スマホを落としそうになったし、通話を切らなければならないとも思った。
でも、縋れる蜘蛛の糸はコレだけだったし、切る訳にも行かなかった。
ズキズキと頭が痛む。
色んな掠れた思い出が蘇る。いままで思い出しもしなかったのに。
思い出さないようにしてたのに。
私が何も言わずに呆然としていると、電話越しに何度も呼びかけられていた。
『もしもし、もしもし!聞こえていますか?』
「あ、はい。少し驚いて……」
『一目見てわかりましたよ。朝日楓さんの妹だと。あの日、私があの場所にいたのは偶然でした』
「はぁ」
『運命を感じました』
「う、運命〜!?なに恥ずかしいこと言ってるの!!」
聞いたこともないロマンチズム前回の言葉に思わず叫んでしまった。
『それ以外の言葉を知りません。お姉さんの過去も知っています。最後も。知っててなお、声をかけずにはいられなかったのです』
あの、過去を知ってるなら。その妹がどういう風に思われたか。どんな気持ちだったか知ってて言ってるんだろうか。
やはりどこかでバイトして、そのまま人生を終えるしかないんだろうか。
そんなくらい未来を見た。
でも、彼は言った。声をかけずにはいられなかったと。
それが引っかかる。だから、最後だと思って聞いた。
「どうして?理由を聞いてもいい?」
『あの場の誰よりも輝いて見てたから』
それは、その言葉は常にお姉ちゃんが受けてきていた言葉だった。
ぎゅうっと、心臓が握られた様な苦しさと、何に対してなのか分からない焦燥感が身を包んだ。