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「ここがお前の部屋だな。よろしく相棒」
翡翠は何とも嬉しそうな顔をして部屋を案内したかと思うと、まさかのルームメイトだった。
驚き半分、安堵半分。
全く知らない人だったらこの夜からまた気苦労が始まっていた。
そう思うと、朝変なキャラをしてて、昼に素に戻って、夜笑って迎えてくれた翡翠に感謝したい。
私が部屋に入ろうとしたら、肩を捕まれ部屋を追い出された。
「……私の感謝の気持ち〜」
「感謝?何言ってんの。早く入ってよ」
「追い出したのに!?」
もう、訳分からない。けど、本当に疲れてて抵抗する気も相手する気もなく、言われた通りにドアを開けて入る。
「おう、おかえり」
腰に手を当ててニカッとそう言った。
ああ、なんでかな。泣きそうになってきた。
当たり前の言葉なのに、いつしか言わなくなって、聞かなくなった言葉。
なんてことない言葉なのに涙が溢れそうで、私は眩しい想いをして「ただいま……」と言うのだった。
「お疲れ様」
そんな私に何も言わず、腰に手を回して狭い部屋の案内をしてくれたのだった。