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「ただいま」
太陽がそう言って車に乗り込む。
穏やかな顔なのに、私を見る目は寂しそうで、何を考えてるか読み取れない。
「出しますね。一旦事務所へ行きます」
「ねぇ、聞かないの?」
「……受かったんですよね?」
「うん。ねぇ、近付けたかな」
「はい、確実に」
それっきり、2人とも何も話さずに車は進む。
なんだなんだ。何だこの重い空気は。
太陽は作ったような顔をしてるし、プロデューサーの顔は窺い知れ無い。
こういう空気、嫌だな。そう思っても私は空気感を変えられるような人じゃないから。
それじゃ、ダメんだろうって事は分かる。
分かることが増えていくけど、実際にそれらは私には程遠いとろこあって。
唇を噛み締める。
まだ、何者でもないし。無力だなあ。