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「あの、聞いてないんだけど」
「ええ、今日決まったことですから」
「ま、まじか〜」
「ねぇ、何のオーディション?」
「歌ですよ」
「あっ……」
「…………」
「なんですかその沈黙は」
「夢ちゃんね、歌下手なのよ」
「……本当ですか」
「……太陽が言うならそうじゃないのかな」
「……ま、まあ、これが初めてのオーディションです。これからももっと受けてもらいますから、慣れるためだと割り切ってきいましょう」
「ご、ごめん」
「いえ、まだ夢さんの能力も把握してないまま飛びついてしまった私の落ち度でもあります。謝らないでください」
ごめん。もう一度言いそうになって、ぐっと堪える。
情けない。拳をぎゅうっと抱きしめバックミラー越しにプロデューサーを見る。
「……ダンスは行けるかも?」
「あっ、それは思った!」
今回のオーディションとはまったく関係ないけど、昨日判明した私の特技。
見て覚える。
太陽がぱあっと顔を輝かせて身振り手振りでプロデューサーに豪語してくれる。
「フフッ、いいことを聞きました。次はその方面で行きましょう。でも、今日は……。着きましたよ」
「夢さん、当たって砕けろ、です」
「砕けちゃだけだよね……でも、分かった。頑張ってくる!」
「頑張ってね!夢ちゃん!」
「太陽さん」
「んー?」
「あなたもですよ」
「あっ、そうなのね……いってきまーす……」