43
「いやー、散々だよ」
何やかんや一通り学園のカリキュラムを聞き終えて、本日は終了。
また、明日からは各レッスンを担当してくれるトレーナーさん達と軽い授業がある様だ。
私は何も持ってない。そう、ダンスレッスンに来ていくジャージすらない。
だから、その他諸々買い集める為に最寄りの大型ショッピングモールへ向かおうとしていた。
駅が近く、その駅も乗り換えの中継地点としての役割がある為、この周辺では人が少なことがまずない。
「上出来だよ!」
日鳴が小さな体でポッテポッテと後ろ歩きをしながらフォローをしてくれる。
この子は優しいな。優しさがデフォルトなのだろう。
それが武器になりそうだ。
「そうだよ。様になってた」
スッカリと今朝の事は無かったみたいな氷翠はウンウンと頷く。
氷翠は氷翠なりに、私のあの自己紹介でなにか思うところがあるようだ。
それは、今までとこれからをよく考えてのことだろう。
その、少し考え込む表情は惚れ惚れするほどにイケメンだった。
すれ違う人全員が一度は視線を送るくらいだ。
モデルとしてなら既に大成しそうなポテンシャルだとも思う。
ますます、余計な口を出したプロデューサー科の奴を憎らしく思う。
「カッコよかったよ!!」
「慣れる気がしないよ。皆はあーゆーのあるの?」
太陽はいつだって味方してくれる。ありがとうと素直に言い、1つの疑問を抱いた。
クラスメイトは暖かい人たちばかりだったから良かった。
それに、なんか慣れた目つきだったのだ。
「私は今日言ったやつかな〜」
「無い」
「私も〜、ないっ」
気のせいみたいだ。
ともあれ、日鳴にしろ、氷翠にしろ、後々ああいう自己紹介は必要になるのだろうね。
馬鹿ほどでかい校舎をようやく出るところ、つまり校門でスーツの男性が人集りを作っていた。
何事かと思いながらも無視をしようとしたけれど、見しった顔すぎて出来なかった。
「あ、プロデューサー」
私が声をかけると、周りにいた生徒たちは蜘蛛の子を散らすように離れていった。
「お疲れ様です。早速御学友が出来たようで何よりです」
「あ、今朝はその、すみませんでした」
「氷塚氷翠さんですね。憑き物が落ちたみたいですね……」
「まあ、目が覚めた感じですね」
「今の氷翠ちゃんの方がいいよ!」
「日鳴はそんな感じでずっていてくれ」
「なにそれ〜?」
「ところで、なんか用だった?」
「ええ、伝え忘れてましたがオーディションに行ってもらいます」
「ああ、そうなんだ。頑張ってね」
「?」
「?」
「オーディションに行くのは夢さんです」
「…………ええええええ!?」