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「じゃあ、歌って」
無邪気に無茶振りをされてしまった。
首を傾げ、どうしたの?やらないの?と問われているみたいだ。
「……や」
やらないよ、恥ずかしいし。意味もないでしょう?
そんな言葉が喉の奥に引っかかった。
見透かしたように太陽はもう一度言う。
「歌って」
カッと顔が熱くなる。ドッドッドッと心臓が跳ねる。
「あはは!下手っぴだ」
渾身の勇気を振り絞って歌った感想はなんとも悲しいものだった。
声は掠れ、所々音程はズレて聞かせられる歌では無かった。
うちしがれるように膝を折る。
「でも、私の歌だよね?発表もしてないのによく歌えたね」
「え?好きな物はすぐに覚えられるよね?」