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「明日の準備しないと」
バクバクと緊張を誤魔化すように、一々やる事を口に出す。
そうしないと、何をしでかすか分かったもんじゃない。
自分の理性は当てにならないと今日気付いた。
「制服とかは?」
「……そういえば無いかも。どーしよ」
「うーん、明日の朝にプロデューサーが持ってきてくれるのかな。連絡してみるよ。休んでて」
「うん、ありがとう」
言葉に甘えてソファに腰を下ろす。
ふっかふかのソファで逆に疲れる。庶民は硬い方がいいのか。
そうは言っても疲れはあったのか、いつの間にか眠ってしまった。
パシャッ!という音とフラッシュで目が覚める。
「ごめん」
にっこにこでそう言う太陽には、ちっとも申し訳さが無かった。
「なんで寝顔なんてとったの」
「可愛かったから、つい」
「最上位に可愛い人が誰かを可愛いなんて言ったら皮肉だよ」
「そんなことない!!」
何気ない言葉のつもりだった。
それ故に大きな声で、大きな否定をされて目が点になる。
「え、あっ!ごめん!」
「い、いや。良いけど……無神経なこと言ったかな?」
さっきからそんなことばっかりだなと思いながら尋ねると首を横に振ってそうじゃないと。
「貴女は可愛いの。もう、私のアイドルだよ。朝日夢!」
手を広げて穏やかで、熱意があって、どこにそんな要素があるのか羨むような目で言われては否定もできなかった。
今一度思う。私はアイドルになるんだ。心構えだけはもうなっていなくちゃいけないと。
立ち上がる。そうすると太陽との距離は触れ合いそうなほど。
息使いも感じられる距離で、私は宣言する。
私のアイドルへ。
「私はアイドル……夢見る少女じゃいられない、朝日夢だ!」
「うん!」