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「あっ!」
太陽と目があった。少し邪険だった印象はパッと晴れて、他には目もくれずに駆け寄ってきた。
「おはよう!目が覚めたんだね!いやー、どうなるかと心配したんだよ!」
「こ、こら。太陽さん落ち着いて」
元気ハツラツ女子に当てられてまたもバタンキューしそうになったが、プロデューサーが太陽の肩に手を置いて落ち着かせてくれた。
「具合は大丈夫ですか?」
「はい。……いえ、まだ頭が少し痛みます」
「ほらー、うるさいから頭痛いって」
私の言葉を聞いて、金髪ギャルがニヤニヤしながら見た目とのギャップのすごいハスキーボイスで、太陽のことを煽る。
太陽は振り返り腰に手を当てて言い返そうとして、プロデューサーに灘められる。
「もう、落ち着きなさい。それに京愛さんも意地悪しない」
「ふふっ、はーい!」
「うぎぎぎぎ……!!」
事務所の全貌はマンションの一室くらいの大きさ。
部屋を仕切る壁はなく、入口の正面にデスクが向かい合わせにあるだけで、応接室代わりの仕切りで区切った場所と、その真反対。つまり今私がいる場所に仮眠室の様なこの場所があり、入口横にちょっとしたキッチン。その正反対に恐らくトイレがあるだけ。
そんな決して大きくない場所に結構な人数がいる。
黒のスーツをピシッと着こなしたプロデューサー。
元気ハツラツ女子の太陽。よく見ると髪に赤のメッシュが入っていてより明るい印象を受ける。
太陽をからかっていたのは絵に描いたようなギャルで、学校帰りなのか制服を着崩していた。
爪にはネイルをしており、金髪に染めた髪が存在の名刺代わりとなっている。
ややつり目っぽいが常に楽しそうに笑っているので意外とキツイ印象は受けない。
事務員っぽいお姉さんは手に持った書類からそう思った。失礼ながら子供っぽい印象は無いので年上で働いてい年齢に思えた。時折スマホを手に取っては電話の為に出たり入ったりを繰り返している。
ソファに蹲るように座っている子もいるけどフードを目深にかぶっていてよく分からない。
(うーん、この子達は私と同じなのかな。っていうか太陽もアイドルだったんだ。それは納得だけど、恐れ多くも同じ土俵に立つのか、この子と)
決して軽い気持ちできた訳では無かった。それ以外に道は無かったと思うし、やると決めたのも私だ。
どんなに醜くとも、1人で生きていける年齢まではしがみついてやろうとも思っていたけど、真剣さでは負けるなと当たり前に思い、胸が苦しい。
これは罪だ。