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曲が始まる。
静かな入りから一気にヒートアップして走り抜けるようなそんな曲。
そして始まる歌唱。
目を離すことが出来ない。
圧倒的な歌声。それに加えて失速しない曲調が合わさって、知らずリズムを取っていた。
「凄い……」
「はは、笑っちまうよな」
「……」
曲が終われば人が集まっていた。
惹き付けられていたんだ。
どこかで作業をしていた裏方も、打ち合わせてしていたアイドルも全員が視線を奪われていた。
誰一人として声を出せない異様な空気に動じずに林道涼花は脇へ戻っていく。
全員が動き出すのには時間がかかった。
余韻に浸っていたのだ。
波のアーティストでも起こりえないような時間だった。
鳥肌が立つ。
「や、やばいね……」