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「そ、そう。私は朝日夢」
あまりの元気さにつられて自己紹介をしてしまった。
仁王立ちの彼女とは正反対に自信もなく、それどころか戸籍以外何も無く、冬の寒さに凍えるような姿勢で雑路の雑音に紛れそうな声で言うのが精一杯だった。
田舎者の芋女の事なんてどうでもいいだろうに。
太陽の脳みその容量を使わせてしまい申し訳ない。
どう転んでも泥まみれ。一寸先は闇な私とは住む世界は違うだろう。
「あーーーーーー!!!!」
またしても大きな声で叫ばれる。
本日2度目は真正面からさっきよりも大きな声量だった。
周りもさすがに何事かと注目しているようだった。そこで私は力つきた。
バタンと倒れる寸前に何かがクッションになってくれた事。
多分事務所の窓から誰か覗いて慌てて引っ込んだ事。
人集りが出来たところで誰か来た事は薄れゆく意識の中で最後に見た事だった。