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僕はひとつも動く必要がないし、動けない
そうとわかってから僕は、改めて自分が置かれた環境を見渡した。
記憶はないが、僕はこの環境がずっと続くものでないことがなぜかわかっていた。
わかっていたというよりそうあるべきだと信じていた。
どうであれしかし、その長さを何かの尺度で表すことは僕に許されていない気がする。
それが許されるのは、ここを放れてからだった気がする。
それまで僕はここでじっとしているんだ。
樫の木ほど退屈ではない。
それどころか目まぐるしくいろんなことがじっとしていても飛び込んでくる。
僕はひとつも動く必要がないし、動けない。
ただじっと眺めていればいい。




