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親に愛されて生まれてくる
例えば、僕の輪廻でもほとんどはそうでありハムスターの時も、
ミヤマクワガタの時も作業の結果、僕は生を受けた。
況や親に食われる命なら生まれなければよかったと思うだろう。
しかしそうでもないのだ。
それも長い輪廻の定めであるから、ここに至るに必要な厄災だったのだ。
人間だからそう思うのだが、ハムスターに生まれればそれは不幸でもなんでもない。
怖くもなんともない、痛くもなんともない、また自分に帰る儀式に過ぎない。
戯言が過ぎたが、つまり娑婆では親の愛はあたりまえではない。
だけど僕は親に愛されて生まれてくる。
僕は母と父の最初の子供になるはずだ。
僕が受胎するまでに二人の間に僕と同じような生命を持った胎児はいない。
結婚して最初の一年間は二人で相談して子供を作らないことにしていた。
新婚の甘い時期をまだ楽しみたかった。
旅行にも行きたかった。
仕事も軌道に乗せたかった。
そんなこんなで一年目は不妊対策を怠ることなかった。