そもそも寿命を全うするとはどういうことか?
そしてつい先の前世が今回と同じくこの星の高等生物だった。
風の命に比ぶれば、不自由なことこの上なかったが、
その生の意味はいまならわかる。
あれも僕の輪廻を逞しうする下賜された命だったのだと。
前世の最期は自ら命灯を消さなければならなかった。
己れの意思に関わらず娑婆の生命を道半ばで断たれたことはそれまで幾度もあった・・・
戦、病、災、飢、憎・・・。
そもそも寿命を全うするとはどういうことか?
自分で終末を決めたのは初めてだった。
この星のこの邦のこの時代の独特の習いに僕は身を投げ出さざるを得なかった。
浅瀬に囲まれた藪中、白刃の先を痩せさらばえた自分の腹部に向ける時、
身を震わせながら経験したことのない厳かな気持ちが自分を支配し、
残りがあったとしても後悔の念を無理にも封殺しようとしていた。
あんなに悶絶した臨終は初めてのことだった。
またあんなにはっきりとした昇華も初めてのことだった。
娑婆の生を終える時、何かが太ったような気がした。
それが姿、形をなさないためどこがどう変化したか、
生物の言葉を借りられぬがそれまでの輪廻とは境があるような何かを越えた感覚だけは残っている。