彼女の事務所に再び向かう
待ちに待った土曜日だ!わーい!
待ちに待ったってフレーズ、遠足しか連想しないなぁ。
今日は土曜日だけど、学校がある日。だるい。学校が終わったあと、彼女は教室まで迎えに来てくれた。羨ましいか教室の男子諸君?そんな目でこっちを見てもなんにも起こりっこないぞ?はっはっは!……いじめに繋げないでくれよ?
迎えに来てくれたのはいいけど、ぼくがあの後結局道に迷って、家に帰ったのは10p.mぐらいってこと、井坂にバレてないよな?うん、バレてない、バレてない。戻って道聞くのも格好悪いし、人通りも凄く少なかったんだよ!仕方が無いことだったんだ!
言い訳をした後、推理小説について色々語り合いながら、事務所に向かった。今度は道をしっかり確認する。ぼくは二度と同じ失敗は繰り返さない子なのだ。
事務所への道の半ばまで歩いた頃、井坂は思い出したように、
「そーいえば今日の事件について話すべきでしょうか?失礼失礼」
誰が何に対して失礼なのかは知らんが、まぁ確かにそうかもね。
「なに、あんまり大した事件じゃないんですよ。警察が動く必要の無い事件ですから。それに良く考えたら依頼受けただけでなんにも内容知らなかったです。あはははは。先に警官さん達に事情は話して、依頼人さんを事務所に入れてもらってるんですが。楽しみですねぇ。でも今は、何にも話すことないですねぇ」
適当だなぁ。
でも、世界一位さんが下らない事件を扱ってもいいの?
「私は平日に死ぬほど頑張ってますからね。高校生活も楽しみつつ。休日のは、私のささやかな娯楽ですよ」
さいですか。
それに付き合わせてもらえるぼくは幸せ者なんだろうなぁ。っていうか娯楽って、それは依頼人には言えない言葉だよなぁ。ん、依頼人はどうやって彼女のことを知ったんだろう?ぼくはこいつの『依頼人募集!休日暇なので世界一の天才名探偵があなたの依頼を受け付けます!』みたいなポスターは見たことないぞ。
「それはですね、まぁ、口コミみたいなものです。私は結構有名なんですよ?私については、マスコミなんかには警察が報道規制してますけど。公の場には顔も見せた事ないですし。捜査は全部警察を通して、です」
でもこれからは依頼人に顔見せるんだろ?テレビ局や大手の新聞は抑えられるとしても、週刊誌なんかに顔載ったらどーすんだ?犯罪者の群れが殺しに来るんじゃない?
彼女はキョトンとした顔をして、
「え?だから、顔は見せないで、先輩に会って貰うんですよ。顔が載るとしても先輩ですし、犯罪者の群れが殺しに来るとしても先輩です。ああ、私の事務所の周りには常時10人以上の警官がいますし、警備システムもしっかりしてますから、安心して大丈夫だと思いますよ?現に今だって私の周りにも私服警官だらけですし」
……何、ぼくって身代わり?そーゆう役目?そうだったんだ。へぇ……まぁ、周りに10人以上の大人が守ってくれてるんだから大丈夫かな?でもこんな娯楽に付き合わされる警察の人たちも大変だ。まぁ、給料は良さそうだし、世界一の探偵、しかも美人の護衛なんてやりがいあるのかもね。
……あれ?もしそうなら、ぼくって邪魔?守ってくれなかったりする?
いやいや落ち着け、彼女は15歳、護衛の人たちはずっと年上。大丈夫大丈夫、誰もぼくを羨ましくなんて思わない。よかったよかった。
……そうならいいけど。
しかし、常時10人以上の警官。
こいつ、どーいう頭脳持ってるんだか。こうして上から見下ろしてると、小さい頭と長めの髪が見えるだけ。その中に、推理に関しては世界で一番出来の良い脳が納まっているのか。
その世界一の名探偵が、リズムが滅茶苦茶な鼻歌を歌いつつ、何の取り柄も無いぼくと一緒に歩いている。
なんとも、不思議な感じである。
次から事件(?)かな?今までは長いプロローグって感じかなぁ。