表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

彼女の事務所に潜入中

「じゃあ何、高校の教室でいきなり『推理小説好きな奴来い!』みたいな事叫んじゃったわけか」


うーん。そーなりますね。


「よく了承したねぇ。それに彼女にはできるだけ目立って欲しくないのに」


呆れたように日暮刑事が言う。目暮警部じゃないよ、字は似てるけど。


場所はコンクリート製の建物の二階、つまり井坂椎の探偵事務所。内部は土足で上がれるようになっている。二階には、様々な資料を入れる為のボックス、応接セット、大きなノッポの古時計らしきものが置いてあった。ひときわ目立つ大きな机。これは探偵用のデスクなのかなぁ。いいもんだ。


現在、井坂探偵は三階の居住スペースで着替え中。長いね。何やってんの?


ぼくと日暮刑事はソファで向かい合って会話中。警察手帳も見たし、嘘をつくような人にも見えない。ぼくの質問にもちゃんと答えてくれるし。


彼女は元FBIで今は日本警察の裏のTOPで世界一の天才で名探偵なんですか、って聞いたら、そうだよ、だとさ。


ああ、これは、本当に彼女が天才で名探偵ってことなのかなぁ?


そうなんだろうなぁ。


……あれ?そーいやなんで刑事は建物入れたんですか?


「彼女の補佐である私たちには、カギが配られてるんだよ。もちろん三階へのカギはないけどね」


へえ。そうなんですか。


……あんまり話すことないね?日暮刑事は勝手知ったる他人の事務所、とばかりに勝手にコーヒーを入れて飲んでいる。黙ってる。ぼくの分も入れてくれた。でも、ぼくはブラックはちょっとなぁ。砂糖とかは無いんですか、と聞いたらこの事務所に来る奴らは皆ブラックが好きらしい。


変なの。


三階に行ったら調理用の砂糖はあるらしいが……面倒だしいいか。質問も大体終わったし、この人は質問されなかったら答えないタイプのよう。静かな部屋。彼女は着替え中?なのか?長くね?


静かな空間があれば、ゆっくり色々考えられる。彼女が元FBIで今は日本警察の裏のTOPで世界一の天才で名探偵、ということについてゆっく「お待たせしましたー」


中途半端なときに来たね君。私服に着替えて、ゆったりした感じ。ん?手に何か持ってる。蓋がしてあるお盆。


……何持ってんの?


「これですか?これはですね」


彼女は嬉しそうに蓋を取った。スクランブルエッグ?しかし嬉しそうな顔は可愛いなぁ。ぼくもつい笑顔にな


ってだからそーゆう考えはやめとこう。なんでかな?別にいいじゃん。まぁ、なんだろね、ぼくにも分からんけど。まぁ、いっか?


「大好物なんですよー。家帰ったらすぐにこれ作って食べるんですよー」


だから戻るの遅かったのね。スクランブルエッグぐらいならぼくも作れるけど……刑事の話によると彼女はここで一人暮らしらしいし、彼女は他にも料理できるのかな?聞いてみよう。


「そうですね、大抵の家事は一人でできますよ。でも面倒なので全部外食で洗濯はコインランドリーで掃除は近所の奥さんにお金払ってやってもらって、まぁ色々頑張ってます」


それ面倒だからじゃなくて出来ないだけじゃないの?


というか家政婦雇えばいいのに……


「それはそうなんですけど、ほら、下手に家政婦雇うと、外に情報バレそうですし」


まぁそうなのか……な?


「そろそろ事件の話に入りたいのですが……」


おずおずと刑事が切り出す。敬語なんだねぇ。話によると彼女のこと、尊敬してるみたいだし。凄いよなぁ。よく小説やドラマで警察が無能に描かれるけど、警察ってのはプロ集団だからなぁ。大抵の事件は解決してしまう、まさにそれ自体が一人の名探偵。個人の協力なんて、絶対に必要としないはず。でも彼女は必要とされてる。これは、物凄く、本当に物凄いことで、絶対に、『有り得ないこと』のはずだったのに。


だったのになぁ。


「そうですね、なら先輩は……三階で待ちます?」


腕を振り上げ、人差し指で天井を指差す井坂。いきなり振り上げるなよ、ぼくビックリしたよ。


時計を見ると、もう6時ほど。ああ、お茶を飲みに来たはずなのにブラックコーヒーを飲み、刑事さんと喋るだけでもうこんな時間。時の流れは速い。


待ってたらちょっと帰りが遅くなりそうだし、もう帰るよ。


「そうですか……道、分かります?」


彼女はちょっと残念そうにしたあと、思い出したように付け加えた。


大丈夫。ぼくの記憶力はそんなに衰えちゃいないよ。


ぼくは刑事にお別れの挨拶をした後、彼女にも軽くじゃあね、と言い、外に出た。ちょっと寒い。春なのにね。春だからかな。


「気をつけて帰って下さいねー!」


振り返ると、二階の窓から彼女が顔を覗かせる。


うん、気をつけて帰るよ。


ポケットに手を突っ込み、寒さを和らげる。ちょっと振り返ると、彼女はまだこっちを見ていた。こいつは本当に道分かるのか?とでも思っているような、心配気な顔がぼんやりと見える。大丈夫なのに。


……ぼくは。


なんでこの子を、馬鹿にしてたんだっけなぁ。

もうじき事件に入りたいなぁ。

今は一日2,3回更新できるけど、冬終わったら週に一回とかになりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ