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柘榴 閑話
自らの重みに耐えかね、柘榴の実が落下する。地面に衝突したそれは、目にも鮮やかな赤い実をぶちまけた。下火になりかけていた喧騒が、また燃え上がる。それは、冷え切った彼らに沁みる熱。真の美しさに気づかれることなく、ないがしろにされていた彼らを、煌めかせ、輝かせ、際立たせる光源。
「ああ、綺麗だ」
呟く、声。
「それじゃあ、並べて飾ろうか」
深緑の匂いが満ちて、風が吹く。
君のおかげでずいぶん楽だよ、と、木々が笑った。
屋上の花束が、風に飛ばされた。
ここまでが主人公視点の『果実』になります。次話からは、妖青年視点の『鉱石』となります。




