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柘榴  作者: 汐待 空恭
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柘榴(果実)1

※本作には、自殺を示唆する描写が含まれておりますが、推奨をするようなものではありません。あらかじめご了承の上、それでも構わないという方のみ、注意してご閲覧ください。

 死にたい。


 それが、駅のホームで私がよく浮かべる思いだった。このまま消えてしまえたら楽だろうにな、と。多分、逃げたいのだと思う。嫌なこととか、しんどいこととか、しなくても済むようになりたいのだと思う。もっと大変な人がいるでしょう?貴方は恵まれているでしょう?なんて綺麗ごとが、何よりも疎ましく、煩わしく、憎らしい。頭ではわかっていても、心が拒絶する。

 人間、そんなもんだろって思う。なんだかわからないけれど、全部やめたい感覚。生きるのをやめたい。自分の無能さとか至らなさとか後悔とかで延々と悩むのがとにかくしんどい。辛いというより、しんどい。疲労感を覚える。ああすれば良かった、こうすればよかったのかもな、いっそしない方が良かったんだろうか、と悩むのがしんどい。あ、やっぱつらい。泣けてくる。ぐわっと目の奥が熱くなって、じわじわ眼の淵へと迫りくる涙をこぼすまいと上を向く。あーくそ、しんどい。やめたい。もう、やり直したいとかじゃなくて、やめたい。

 ホームに立っていると、ここに飛び込めば全部やめられるんだよな、とか考える。かろうじて、痛いだろうな、とか、いろんな人に迷惑かけるだろうな、とかが、私を黄色い線の内側に引き留める。なるほどこれが自制心。いや、社会的絆か?愛着か?なんでもいいか、あほらしい。


 厭世的な思考に陥っている自覚のまま、ふーっと深く息を吐いた。暗く淀んだ胸中から吐き出す息は白い。いたずらに北風が吹いて、首元にまいたマフラーへ顔をうずめた。アナウンスが流れ、電車が駅を通過することを告げる。涙が渇いた顔を、右に向ける。夕暮れの中、眩いライトが徐々に近づいてくる。

 落ちられたら、楽だろうなぁ…

 待ち望む終わりは、ごおごおキイキイと不快な音を立てながら、目の前を通り過ぎた。

 風が沁みて、眼の淵にまた涙が滲んだ。

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