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悪役令嬢、こんな結末、想像できた?

作者: はち


王立学園の中庭、お昼休みに、その時はやってきた。


公爵令嬢、社交界の白百合と評される程の美貌、誰もが自然と道をあけてしまう存在、そしてこの世界の悪役令嬢。

メアリ・ファン・モントーリ

「メアリ!」

そんな私を呼び捨てできるのは学園で1人だけ。

「殿下、ご機嫌よう」

婚約者でありこの国の王太子、シエル・ド・グランシェ

そしてその隣には可愛らしいと評判の男爵家のご令嬢、この世界のヒロイン。

「メアリ!」

きっと、これから私は断罪されるのだ。

それがこの世界のシナリオだから。

けれど黙ってはやられない、だって私は何もしてないから、断罪される理由がない、さぁかかってこい。

「あら、どうしました?殿下。」

「助けてくれ!メアリ!」

・・・・・

「「え?」」

思わず男爵令嬢と声が揃う。

「彼女、話が通じないんだ!」

そう言いながら私を盾にして令嬢と距離をとる。

えーっと…一体どういう状況?

悪役令嬢なのに婚約者から助けを求められている…?

「ちょっと!メアリ様!私と殿下の仲を邪魔しないでください!婚約者だからって!」

えぇ…殿下が勝手にあなたから逃げただけなのに…。

「私にはメアリが居るからって言ってるのに通じないんだ!それに避けてるのに何故かどこからともなく現れて、運命だからとか言ってて怖いんだ!」

出会っちゃうのはヒロインスキルだわ。

そしておそらく彼女も記憶持ち確定だわ。

「メアリ!私じゃもうどうにもできない!」

「いつもの皆様はどうされたんです?」

ここは乙女ゲームの世界で、殿下以外にも攻略対象は何人かいる。ほとんどが殿下の補佐役でいつも一緒にいるのだが…

「あいつらは私を囮にして逃げるんだいつも。」

殿下、可哀想に。まったく、未来の主人を囮にするなんて。

普通ならあり得ないけどまぁ私も含め全員幼馴染だしね。

そして、そもそもヒロインなのに何故攻略対象に逃げられているのか…。

「メアリ様!そろそろどいてください!」

はぁ、しょうがない。悪役令嬢だからね、やってやりますよ

「貴女、先ほどから私のことを名前で呼ぶけれど、挨拶をされた事もないのに、誰の許可を得て名前呼びなさるのかしら?その上口の利き方もなっていない、殿下への軽々しい態度もそう、礼儀を学んでから出直しなさい。」

ゲームでは男爵令嬢でありながらも攻略対象に守られていたおかげで公爵令嬢である私に立ち向かう事が出来ただけ。

けれど攻略対象がいないのであれば男爵令嬢と公爵令嬢という決して埋まることのない爵位の差がある。

つまり、本来であれば話しかけることさえ烏滸がましい。

「悪役令嬢だから、私と殿下の仲を邪魔するのね!私はヒロインなのよ!攻略対象と結ばれる運命なの!そして私は殿下を選んだ!だから殿下は私と結ばれなければならないの!」

うん、話が本当に通じない。

「だから、何度も言っているだろう!私はメアリ以外と結ばれる気はない!メアリと婚約するのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!」

・・・ん?

「4歳で初めて会った時に一目惚れ、それまで全くやる気が無かった私がメアリと婚約するために勉強も剣術も始め、その間に他の者たちへの牽制、王太子に任命されてやっと公爵からの許しをもらい婚約までこぎつけたんだからな!」

え…えっ!?初耳ですが!?

「いや、これが本当なんだよ。遂に言っちゃったか。」

「一緒に遊んでた俺たちが何度牽制されたことか。」

「みんな同い年で家柄も申し分ないからね、僕たちはメアリの婚約者候補だったんだよ。」

「まぁ、婚約破棄になればチャンスはあると思ってたけど、絶対に離さないからね〜誰かさんが。」

いつのまにか登場した幼馴染たち。

宰相の息子、アラン・マクナー

魔当主の孫、テイラー・ステューシー

騎士団長の息子、オリバー・ブランチェッタ

大神官の孫、ウルキオ・アーキン

「まぁだからさ、自分の好きな子差し置いて、他の子なんて眼中にないってことよ。」

アランにポンっと頭を撫でられる。

「こら!メアリに触るな!」

「ほらね、いつもこんな感じなんだから。」

「ちなみに気づいてないの、そこのお嬢さんとメアリくらいだからね。」

「シエルの溺愛っぷりは他国でも有名だよ。てか、あれだけされて気づかないメアリがおかしいくらいだけど。」

そんな事を言われても、前世を思い出した時、いつかヒロインが現れて婚約破棄&断罪されると思っていたから…意識なんてした事なかったわ。

「う、嘘よ嘘よ嘘よ!そんなはずないわ!だって私はヒロインで、あんたは悪役令嬢じゃない!」

ピリッと空気が凍りつき、攻略対象もとい幼馴染達の表情が変わる。

「ねぇあんた、頭おかしいのは前からだけど、流石に限度ってもんがあるよ。」

「頭の中お花畑なのも大概にしとけよ。こっちははらわた煮えくりかえりそうなの我慢してんだ。」

「さっきからメアリを悪役令嬢と呼ぶけれど、メアリが君に何かをしたことは一切無いし何を根拠にそう言ってるの?」

「王太子の婚約者、つまり未来の王妃を侮辱してる事になるけど、そのことわかってるの?」

そう、何事もなくいけば私は未来の王妃となる身。決して舐められてはいけない。

だから…私と敵対するというならば、簡単に許してはいけないのだ…たとえ相手がこの世界のヒロインで、シナリオを大きく変えてしまう事になったとしても…。

「貴女は、もっと周りの言葉に耳を傾けるべきだったわ。」

「な、なによ!?」

「王太子殿下への数々の無礼及び、公爵令嬢である私への侮辱行為、到底許されることではないわ。よって裁判を起こし正式に抗議致します。」

「さ、裁判だなんて…大袈裟なっ…冗談よね?」

「冗談…で済めばよかったのですがね。」

普通ならば、ここまではしない。

生徒同士のいざこざで起こったことだから、謹慎か…最悪でも退学でことは済む。

けれど私達は未来の王と王妃、決して侮られてはいけない。

「そ…そんなっ…なんでなんでなんでっ!?私はヒロインなのにっ!」

同情はするわ。私というイレギュラーな存在がいなければ、貴女はヒロインでいられたでしょうから。

「全部…アンタのせいよ!」

襲いかかってくるヒロイン

「ごめんね」

私に触れることもなく、攻略対象達に押さえつけられる。

「放してっ!放しなさいよっ!…アンタさえいなければっ!そこに居るのは私だったのにっ!悪役令嬢のくせにっ!シナリオ通りにしなさいよっ!」

…っ…

「メアリ」

優しく手を引いて連れ出してくれる殿下。

後ろではまだ、ヒロインの声がしてたけれど、殿下の優しい微笑みに魅入って、何を言われてるのかはわからなかった。


その後、裁判が開かれ、ヒロインは北部の修道院へ送られ、実家の男爵家は爵位を失った。

本来ならばヒロインの修道院送りと賠償金で済んだのだが、私へ襲いかかったところ、暴言を言い続けていたところをあの場にいた全員が見ていたこと、ヒロインが一貫して罪を認めず事情聴取でも反省の色が全く見られなかった為、財産没収の上、爵位返上となってしまった。

男爵家の方達は何度も頭を下げて謝ってくれて、一度も減刑を望んできたりしなかった。

「男爵様には商才があるとお聞きしました。何かあったら我が家を訪ねてください。きっと力になります。」

「ありがとうございます。モントーリ嬢。」

「娘の代わりに改めて、謝罪いたします。」

これはせめてもの罪滅ぼしだ。

私が原作を変えて、あなた達家族の未来まで変えてしまったから…。


ー数ヶ月後ー


「やっと、この日が来たね。」

「…そうですね。」

今日、私達は学園を卒業する。

「そろそろ行こう。」

「はい。」

卒業式は滞りなく行われ、殿下の挨拶で幕を閉じ、夜は卒業記念パーティーが開かれた。

私達は白をベースとしてお互いの瞳の色の装飾をつけた正装で最後に入場した。

殿下にエスコートされ、ダンスホールの真ん中へと着いた。

「メアリ・ファン・モントーリ嬢、私と結婚して下さい。」

っ!///////////

プロポーズ、貴族は婚約から結婚までが当たり前なので中々やる人はいないというのに。

彼の微笑みから、本当に私のことを想ってくれているのが伝わってくる。

「えぇ、もちろんです。シエル様。」

「やっと…あの頃みたいに名前で呼んでくれたね!」

ずっと…気にしてたのね…。

前世を思い出した日から、私はいつか殿下に捨てられる身だからと、線引きをした。でも私が間違ってた。

殿下はずっと私を想ってくれていたのに。

「これからはずっと名前でお呼びしますわ!」

「ふふっかわいい!」

ワァアッ

『王太子殿下、モントーリ嬢!おめでとうございます!』

『おめでとうございます!』

その後、皆んなからの祝福を受け、卒業パーティーは無事幕を閉じた。


卒業後、私は正式に王宮へと入り結婚。

一年後に双子の王子と王女を出産した。

攻略対象達も家臣となり私達を支えてくれている。

ヒロインの父である元男爵様は本当に凄い商才の持ち主で、モントーリ公爵家の支援もあり大商会を立ち上げた。

ヒロインも、今では妄言を一切吐かずに、自分より下の子達の面倒をよく見るようになったとか。

「メアリ!遠くを見つめて何を考えているの?」

「ふふっ!この世界も悪くないなぁって!」

信じられないくらい、今の私は幸せだ。

こんな結末、想像できた?


fin


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