第九十四話 呪文
雪の部屋に優勝トロフィーと賞状が飾られた。
「私はじめてなのよ・・・こんなのもらったの・・・」
「良かったね先生!僕は一つも持ってないけどさ。」
「そうなの?あんなに強いのになんだか勿体ない・・・」
「うん。試合なんて出る金ないし。仕方ないんだよね。」
「そっか・・・でもこれはあなたと私が二人で勝ち取ったものだから。」
「うん。僕もうれしい!」
本当に素直でいい子ね・・・思いやりもあるし・・・小宮さんが
あれだけ好きになるって言うのも分かる気がする・・・
「あ・・・そうそう、ねえ真野・・・」
「何?」
「この間授業の合間に読んでたんだけど・・・ここなんだけど・・・」
雪は例の『生霊が元の人間の身体に戻る方法』のある1ページを開いて
公平に見せた。
「ほら、これで戻れるって書いてある。」
「何言ってんの先生!こんなの嘘に決まってるじゃん。」
「そんなのやってみないと分からないじゃない!」
「えー!!嫌だよ」
「ね!やってみよ!」
「まじでやる?」
「まじでやるのよ」
「そんなにいうなら・・・」公平はしぶしぶ頷いた。
二人は病院の前まで行き公平が雪に言った。
「こんな真昼間にやるの?こう言うのって夜暗くなってとかじゃないんだ・・・」
「時間は特には書いてないわよ。それに面会時間とかもあるし・・・
今の時間なら病室にはそんなに人も入って来ないだろうし・・・」
そして病室に入り相変わらず眠ったままの公平を前に雪が言った。
「じゃあ、やるわよっ!」
「う・・・うんっ。」
「まずここにこれを・・・3本・・・真野は自分の身体の上に
寝て!」雪は公平の枕元にロウソクをおいて言った。
「あ・・・うん。これでいい?」公平は自分の身体の上へ覆いかぶさった。
「えーとそれで・・・呪文を唱えるって書いてあるわ。」
「呪文?」
「黙って!目を閉じて!」
「レ・ド・モ・ニ・トモン・サ・イ・タ・ウ・ヨ・リ・キイ!!」
「・・・・・・」
「どう?戻りそう?真野!」
「別に・・・何もなんないけど・・・」
「うそよ!」
「いや、本当に。」
「分かった!きっと一度じゃダメなんだわ呪文を唱える
回数とか・・・きっと3回よ!」
「ははは。何を根拠に。」公平は笑っていた。
「だって良くドラマとかであるじゃない・・・」
「ん?あったっけそんなの・・・」
「あったのよ!」
「ははは。分かったよ!やってみて!」
「レ・ド・モ・ニ・トモン・サ・イ・タ・ウ・ヨ・リ・キイ。
レ・ド・モ・ニ・トモン・サ・イ・タ・ウ・ヨ・リ・キイ。
レ・ド・モ・ニ・トモン・サ・イ・タ・ウ・ヨ・リ・キイ!!」
「・・・・・・」
「どう?」
「全く何も・・・」
「やっぱりだめ・・・?」雪は溜息をついて聞いた。
「先生・・・もう起きてもいい?」
「あ・・・ええ。・・・もう!何よこの本!嘘ばっかり!訴えてやろうかしら!」
雪はその本を壁に投げつけた。
「先生!ありがと。」
「ごめんね・・・真野・・・」
「ううん。楽しかった!」
「何言ってるの!楽しくないわよ!全然!!」
「先生?ごめん・・・怒らないでよ。」
「だって・・・」
「やっぱりあの霊園の人の言った通り時期が来るの待とうよ!」
「それしかないのかな…」
「ないんじゃない?」
「わかった。そうね。こんな本あてにしてバカみたい。」
「そんなことないって。でも、ゆっくりでいいんだよ僕は。焦ったってしょうがないし。ね、先生。」
「そっか…そうよね」雪は頷いた。




