第九十話 通り魔
「ねえ・・・私、今日走れるかしら・・・さっきの練習でかなり
ばてちゃたんだけど・・・」
「あ・・・じゃあ途中まで歩く?」
「ええ」
二人の帰り道は通りを外れた少し、ひと気のない場所だった。
「ねえちょっと・・・真野・・・」雪が小声で言った。
「何?先生」
「なんか後ろから誰かにつけられてる気がするんだけど・・・」
「え?!」公平は後ろを見た。
「うん。誰かいるね・・・中年・・・の男かな・・・」
「どうしょう・・・相手が素手なら私もやっつける自身はあるんだけど、
もし児島みたいにナイフとか持ってたら・・・」
「うん・・・暗くて良く見えないね・・・次の角を曲がったら走るよ」
「ええ」
二人は角を曲がった。
そして走った。
男は雪を追いかけてきた。
「先生!このまま走って!」
「え・・・?」
雪は一度公平の方を向いたがそのまま走った。
公平は後ろを振り向き、何かに意識を集中させた。
そして―――――
パンッ!!
パンッ!!
パンッ!!
パンッ!!
公平は近くの街頭全ての電球を割った。
「何?!」雪はその電球の割れる音に驚いて立ち止まった。
「先生早く行って!」
「あ・・・う・・・うん!」
公平は更に近くに立て掛けてある小さな店の看板をその男のいる方向へと飛ばした。
ガーーーーーンッ!!
「うわあっ!!」
男は突然襲ってきた看板に当たり倒れた。
公平は走って雪に追いついた。
「先生こっち!」
「あ、うん!」
二人は脇に隠れて男の様子を見た。
「痛ってー!何だよ今の!くそっ!何処行った?!」男は立ち上がり辺りを見回した。
「先生は隠れてて!僕やっつけてくるから!」
公平は雪から離れようとした。
「待って真野!!」
「先生?」
雪は激しく首を横に振っていた。
「怖い・・・お願い・・・一人にしないで・・・」
「先生・・・」
公平はその場を離れる事をやめ、男の様子をみていた。
男は雪を探したが辺りが暗く見えなかったせいかあきらめて何処かへ行った。
ガタガタと震える雪を見て公平は言った。
「先生・・・あいつ行ったよ・・・!もう大丈夫だから・・・ここから出よう。」
「本当に?」
「うん。」
「ごめんね先生・・・僕が帰りも走ろうなんて言ったから・・・」
「いいのよそんなこと・・・」
「明日から夜は走るのやめて違う事しよう!」
「うん」




