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荒井雪   作者: うきみ
88/102

第八十八話 公平の母

キーンコーンカーンコーン♪


雪は帰る支度をしていた。


「先生、入院費のこと・・・どうしよう・・・」公平が困った様子で聞きに来た。

「そうね。今からお母さんのお店に連れて行ってくれる?」

「でも・・・空手は?」

「今日は無理だわ。」

「ごめんね、先生・・・」

「何言ってるの、いいのよそんなの。」

「うん。」




「ここ。」

公平は母親が働いている店に雪を案内した。

雪は中に入って行った。

「あの・・・すみません・・・」雪は恐る恐る声を出した。

中から男が出てきた。

「はい。」不機嫌そうに男は答えた。

「真野さんはいらっしゃいますか?私、真野さんの息子さんの担任なんですが・・・」

「担任?あーちょっと待って!・・・小百合!なんか学校の先生が来てるよ!」

「あ・・・はーい!」公平の母親の声がした。

奥から公平の母親がタバコを吸いながら出てきた。

「あの・・・初めまして私、公平くんの担任の荒井です。彼の事でちょっと・・・」

「何なの?」

「あの・・・入院費が支払われていないとかで・・・学校に連絡があったんですが・・・」

「あーー入院費ね。ちょっと待って。」

母親の小百合は自分のバッグから封筒を取り出し、それを雪に渡した。

「え?」

「悪いけどさあ、先生、それ渡しといてくれる?」

「え・・・ご自分で渡された方が・・・」

「私さ・・・忙しくて行けないのよ。」

「でも・・・」

「お願い先生!ね!」そう言って小百合は雪を追い出した。

「え・・・ちょっと・・・」

店のドアも閉められた。




「先生・・・ごめんね。」公平は寂しそうに雪に言った。


真野・・・


「忙しいのなら仕方ないわね・・・まあ・・・お母さんが働かないと入院費だって

 払えないわけだし・・・」


「うん。」


「お母さん・・・お見舞い・・・行ってないのかな・・・」雪は公平に聞いた。

「忙しいのもあると思うけど多分・・・」

「多分?」

「見るのが怖いんじゃないかな・・・僕の入院してる姿・・・」

「そうなの?」

「ああ見えて母ちゃん・・・すごく優しいんだ。きっと僕が事故に合ったのも

 僕の事をほったらかしにしたからなんじゃないかとか、思ってると

 思うんだよね・・・いつもそうだから・・・」

「そう・・・」


そう言って公平は歩き出した。雪もその後をついて行った。


店の中で小百合は化粧をしながら鏡に向かってつぶやいていた。

「ごめんね・・・公平・・・だめな母ちゃんで・・・」


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