第七十四話 児島 翔
と・・・
そんな事とは露知らず・・・
公平は雪の部屋にいた。
「えーーと・・・ここは・・・」雪はデスクに教科書を広げ椅子に座っていた。
「ねえ!先生!何してんの?」
「え?ちょっとね・・・次の授業の予習かな。」
「へー先生も予習とかするんだ。」
「当り前じゃない、じゃなきゃ限られた時間内で生徒に要領良く教えるなんて
無理。」
「ふーん」公平は雪のデスクに座った。
「ちょっと・・・邪魔。」
「はあい。」
公平は雪の隣に行き、顔を覗き込んだ。
「もう・・・何?」
「暇。」
「知らないわよ。そこの参考書でも読んどけ!」
「えーーーやだよ。」
「何言ってるのよ!あなたも、もし元に戻ったらちゃんと卒業できるように勉強
しとかなきゃ。」
「えーー。元に戻んのいやだ。」
「なんで?」
「だってさ、もし元に戻ったらこうやって先生の部屋にいるなんてもう出来ないし。」
「当り前じゃない!」
「第一、今はケガとかしてても全然痛くないけど元に戻ったら地獄の苦しみが待ってるかも分かんないんだよ!」
「ああ・・・そうね。でも・・・ずっとそのままでいいわけ?」
「今はこれでいい。」そう言って公平は笑っていた。
次の日―――――
「荒井先生!」
雪に声をかけたのは今年、別の学校から来た数学の教師の児島 翔だった。
「あ、はい。」
「あの・・・ちょっと先生のクラスの矢野の事で相談したい事があるんですけど。」
「あ、彼女がどうかしました?」
「それが・・・」
キーンコーンカーンコーン♪
「あ、チャイムが鳴ったので続きはまた後で。」雪は急いで教室へと向かった。




