第六十四話 ハンバーグ
「ただいまー。」
雪と公平は雪の自宅へ着いた。
「お帰り。今日は何だったの?慌てて出て言ったけど・・・。」
玄関へ出迎えた母親が雪に聞いた。
「あ・・・あ、ちょっとね。そうだ私、今日お弁当忘れちゃって・・・」
「ええ、ええ!お母さんがあんたの朝ごはんもお弁当もぜーんぶ食べましたっ!」
「あーーーごめん!お母さん!」
「まあ、それはいいけど、今日はご飯・・・食べられそう?」
「うんうん!食べる食べる!」
「そ?昨日はあんなに沈んでたかと思ったら今日はやけに元気ね。変な子だわね・・・」
そう言いながら母親は台所へ戻った。
「あ・・・」
雪は公平に目を合わせ笑った。
「じゃあ手を洗ってきなさい。」
「はあい。」雪は洗面所に手を洗いに行った。
「あなたも洗う?」雪は公平に聞いた。
「うん。」公平は手を洗い、かけてあるタオルでふいた。
「人間やドアはすり抜けるのに、手を洗ったりは出来るの?」
「うん。食べるときもそうだけど、感覚は違うけどね。洗ってるような洗ってない
ような・・・まあ・・・気分かなっ。別に洗わなくてもよさそうだけどね!」
「そっか・・・」
二人はリビングへ行き、食卓テーブルを見た。
「うわあ!先生!今日ハンバーグだよ!」公平は目を輝かせていた。
「ホント!美味しそう!」
「じゃあ召し上がれ!・・・ん?ホント?」雪の母親は不思議な顔をしながらも
笑顔で言った。
雪はハンバーグを箸で2つに切った。
「こっち半分僕の分?」
雪は首を縦に振った。
「ありがと!先生!」
雪の右側に座っている公平は横から手づかみで食べようとした。
「あ!待って!」
「どうしたの?雪。」母親が雪の声に驚いて言った。
「あ・・・いや・・・やっぱりフォークで食べようかな・・・」
「取れば?」
「うん。」
雪は棚からフォークを取り出し、持っていた箸を公平の近くへ置いた。
公平はその箸でハンバーグを食べた。
「美味しー!先生の母ちゃんのハンバーグ最高!」
雪は喜ぶ公平の顔を見て微笑んだ。
でも・・・なんか・・・食べにくいわね・・・手があたりそう・・・あ・・・
右側に真野がいるからか・・・次から真野が座ってる所に私が座らないと・・・
ん・・・でもそうするとなんか不自然よね・・・どうしよう・・・
「先生!ハンバーグだけじゃなくってご飯も食べていい?」
雪は首を縦に振り、茶碗をおいた。
「ご飯おかわり!」
げっ・・・もう食べたの・・・?私がお茶碗を空にしないとこいつはおかわりが
出来ないのよね・・・
雪はご飯をかきこんだ。
ぐぇ・・・何これ!!ご飯ってもともとそんなに味がないのに・・・更に・・・
何食べてるか分からないじゃない・・・よし・・フリカケ・・・
「雪?あなた普段あまりフリカケとかかけないのに・・・どうしたの?」
いつにない雪の行動に母親は不審に思いながら言った。
「あ・・・う・・・うん・・・最近味が濃いものが食べたいのよねー・・・
つ、疲れてるのかな・・・。」
「そう、塩分の取りすぎは身体に悪いからほどほどにね。」
「あ・・・うん。」雪はそう言いながら、ハンバーグにも大量のソースをかけた。
雪の母親はソースに埋もれたハンバーグと雪の顔をじっと見て首をかしげていた。




