第六十二話 荒井 雪先生
キーンコーンカーンコーン♪
「じゃあ終わります。」雪はそう言って教室を出た。
「荒井先生!」後ろから雪を呼ぶ女子生徒の声がした。
「小宮・・・」
亜紀はゆっくりと雪に近づいてきた。
「先生・・・ごめんなさい・・・私・・・私のせいで・・・」
亜紀は少し下を向き、雪には目を合わさずに言った。
「真野のお見舞いには行ったんでしょ?」
雪は亜紀の肩にそっと手を置いて言った。
「あ・・・はい。公平には聞こえてるのかは分からないけど・・・
公平に謝って・・・」
亜紀が少し涙ぐんでいるのが雪には分かった。
「大丈夫よ!小宮。真野にもきっとそれは聞こえてるはず。私の事も気にしないで!
あれは事故だったんだから。」雪は亜紀に笑顔を見せて言った。
そして亜紀の目からは涙があふれていた。
「先生・・・」
雪は亜紀の頭を撫で公平の方を見た。
公平はじっと亜紀を見ていた。そして雪を見て首を縦に振った。
「じゃあ、職員室に戻るから。」雪はそう言って亜紀のそばを離れた。
公平も雪の後をついて行った。
亜紀の後ろから輝が来た。
「亜紀!」
「輝・・・やっぱ荒井先生って・・・すごいね・・・すごく優しい・・・
公平が好きになるわけだよ。」
「亜紀・・・」
「私なんて・・・いつも自分の事しか考えてなくて・・・」
輝はそんな亜紀を見てしばらくは黙っていた。
「それでいいんじゃないの?」輝が亜紀に言った。
「え・・・?」
「人を好きになるってそういう事だろ?そりゃ亜紀のした事はちょっと
やり過ぎかも知れないけど、いつも相手のことばかり気にしてたら本気で
好きになんてなれないだろ?」
「輝・・・」
「俺だって、いつお前に・・・」
「え・・・?」
「いや・・・何でもない。」そう言って、輝は教室に入った。




