第五十五話 確認
「死んだ・・・?」公平は雪の言葉を繰り返した。
雪は首を縦に振った。
「でも・・・僕・・・どうしてここに・・?」
「霊・・・とか・・・?」
「霊・・・?僕が・・・?」
「だって・・・物を通り抜けるとかって・・・それしか・・・」
「先生に霊感があるってこと?」
「いえ・・・こんなの・・・こんなことって・・・だってあなた・・・昨日まで・・・
昨日まであなたは病院で意識はなかったけど・・・ちゃんと生きてて・・・」
雪の目は涙でいっぱいだった。
「先生・・・」
「いやよ・・・そんなの・・・認めたくない・・・どうして?・・・
きっと戻る・・・毎日毎日、今日は意識が戻る・・・真野は今日は目を覚ます・・・
今日がだめでも・・・きっと明日は、って・・・」
「雪!学校に遅れるわよ!」雪の母親がキッチンから叫んだ。
「だめ・・・今日は無理・・・学校になんて行けない・・・本当に死んじゃったの?
ねえ・・・」
雪のその目からはたくさんの涙がこぼれ落ちていた。
「そんなの・・・僕に聞かれても・・・」
「そうよ病院・・・病院に行ってみれば分かる。」
雪は慌てて支度をした。だがその手は震えていた。
洋服を着替えた雪は階段を駆け下りた。
「雪!何してたの?早くご飯食べなさい!」
「あ・・・ごめんお母さん・・・今日は急ぐから帰ってから食べるから!」
雪は急いで玄関を出た。
「あ!雪!お弁当!!・・・何・・・急に慌ててどうしたのかしら・・・
生徒さんに何かあったのかしら・・・もう・・・お弁当・・・」
母親は弁当を手に溜息をついた。
雪は速足で駅に向かった。公平はその後をついて行った。
「せんせい・・・ねえ・・・荒井雪さん・・・待ってよ!」
「だから!教師をフルネームで・・・」雪は流れる涙を指でぬぐって振り返った。
「先生・・・みんなが変な目で見てるよ。」
雪は周りを見渡した。
そしてまた歩き出した。
しばらくして、思い出したかのようにスマホを取り出し学校へ電話をかけた。
「あ・・・教頭先生・・・実は今日ちょっと気分が悪くて・・・午前中病院に
行きたいので朝だけ休ませて頂けますか?お昼からは行きますので。」
「そうですか。分かりました。まあ無理しないでくださいね。」電話の向こうから
教頭が言った。
「はい。では失礼します。」
雪は公平の方を見た。公平は何やら、色んなものに触っている様子だった。
「何してるの!行くわよ!」
「あ!うん!」
そんなはずない・・・死んだなんて・・・絶対にない・・・
雪はずっとそう考えていた。
二人は電車に乗り歩いて病院に着いた。




