第四十七話 加速
輝の自転車を押しながら坂道を上がりきった亜紀は、ふと後ろを振り返った。
そして、遠くに子犬を抱いている公平と雪を見つけた。
え・・・やっぱり・・・やっぱりあの二人・・・隠れて・・・隠れて会ってたんだ・・・
自宅に向かって押していた輝の自転車は公平と雪のいる方向に向きを変え
亜紀はそのペダルに足をのせた。
公平・・・どうしてあの人なの・・・?先生が去年この学校に来るまで・・・それまでは
一緒に帰ったりとかしてたのに・・・あの人が来るまでは・・・公平と一緒に笑ったり・・・
楽しかった・・・あの人さえ来なければ・・・
あの人さえ・・・あの人さえいなくなれば・・・
亜紀は、その坂を雪と公平のいる方へ下りて行った。
自転車はゆっくりと坂道を加速した。
そして・・・どんどんと加速した。
ブレーキをかけることなく。
あの人さえ・・・
亜紀には雪の姿しか見えなくなっていた。
亜紀は雪に向かって自転車を走らせた。
そして
坂の上から猛スピードで降りてくる自転車を公平は見つけた。
「先生!!!危ない!!!」
亜紀の乗る自転車が雪をかばった公平を車道に押しのけた。
その時、坂を降りてきた車が公平の身体を宙に浮かせた。
公平は子犬と一緒に、そのまま地面にたたきつけられた。
『キーーーーーーー!!!』
車のブレーキ音と同時に初めて亜紀もそこでブレーキをかけた。
え・・・?・・・公・・・平・・・?
自転車に乗ったままの亜紀は倒れている公平を見た。
「真野ーーーーーーー!!!!!」雪は公平のそばへ走り寄った。




