第三十話 黒帯
かなり離れた場所へ二人は走ってきた。
「あ・・・先生・・・待って・・・靴ひもが・・・」
公平が急に立ち止まった。
雪はしゃがんで靴ひもを結びなおす公平を見ていた。
な・・・何だったの?何よあれ・・・なんであんなに強いの?このあどけない
笑顔の裏側に・・・どこにそんな・・・とんでもない凶器・・・??こんなの・・・
こんなやつにもし・・・押し倒されでもしたら・・・ひとたまりも・・・
ないっ・・・
雪はそっと公平から離れ、一人で帰ろうとした。
公平は離れていく雪に気づいた。
「あれ?先生!どこ行くの?」
う・・・やばい・・・
「先生・・・?何逃げてんの?」
雪は振り向いた。
「あ・・・いやー・・・。」
「別にとって食ったりしないからさっ!」
・・・とって食うだろうが!てめーは!
「え?あ・・・あはは・・・ねえ真野・・・あなた・・・なんであんなに
ケンカが強いの?」
「ん?あれ?言ってなかったけ?僕もやってるんだよ!空手・・・」
「え・・・?うそ・・・そ、そうなの?」
「うん。」
「で、何帯なの?」
「え?一応黒だけど・・・」
えーーーーーーーーーーーーーー!!何?なんだこいつは!!ひ弱な顔して
格闘技なんかやってんじゃないわよ!!
「どうしたの?先生・・・口開いてるよ!」
「いつからやってるの?空手・・・」
「あ、三歳から。」
「うっそまじで?」
「うん。」
「でも・・・あなたの所って習い事とかさせてもらう余裕とかって・・・」
「ああ、母ちゃんの友達が空手の先生なんだ。それで小さいときから教えて
もらってて・・・」
「そ・・・そう・・・でいつ獲ったの黒帯・・・」
「中学だったかな。」
「・・・・・・」
雪は家に帰って来た。
「ただいまー!」
「お帰り雪。ご飯は?」雪の母親がリビングから出てきた。
「あ、ごめん連絡するの忘れてた。さっき生徒と食べてきたから明日食べる。」
「あ、そう・・・お風呂沸いてるわよ。」
「あ、うん。ありがと。」そう言いながら雪は自分の部屋がある二階へと上がった。
「あーーーー疲れたっ!!」雪はベッドに飛び込んだ。
そして公平の事を思い出していた。
空手なんてやってたんだ・・・見えない・・・全く見えない・・・か弱いぼうやだと
思っていたわ・・・
そう言えば・・・小宮さんを救急車に運んだとき、軽々と抱えてたわよね・・・
腕力あるんだ・・・あの時、以外に行動力あるんだ。って思っていたのよね・・・
結構テキパキしてたし・・・
・・・その割には勉強が出来ないわね・・・
でも・・・今日の真野・・・ちょっと・・・カッコよかったわよね・・・
ん・・・?何考えてるんだ私は・・・生徒を異性として見るなんて・・・
ダメダメ・・・そんなの・・・絶対にダメ・・・
はあ―――っ・・・くだらない事考えてないで早くお風呂入って寝よっ!




