第二話 僕、帰宅部です!
次の日の放課後――――
公平は一人で校門の前にいた。
「公平!!」そう呼んだのはクラスメートの小宮亜紀 こみやあきだった。
「なにやってんの?!なんかずーっとそこにいるみたいだけど。」
「うん。荒井先生待ってんの。」公平は彼女に答えた。
「なんで?もしかして昨日の?」
「あ・・・うん。だって僕、英語苦手だし・・・あんな課題出されても・・・」
「あたし教えてあげるよ!公平と違って英語得意だしっ。」
「あ・・・・ううんいい。もうすぐテストだし、亜紀に迷惑かけてもね・・」
「大丈夫だよっ。」
「いや。ホントに。先生に直接聞くから。」
亜紀は不満気だった。
「分かった。じゃあね!」亜紀は少し怒った様子で校門を出た。
ん?僕なんか悪いこと言ったっけ・・・・?
公平は彼女のうしろ姿を見ながら首をかしげた。
そしてしばらく公平はそこで雪を待った。辺りはかなり暗くなっていた。
公平は職員の下駄箱から出てくる雪を見つけた。
「せんせー!」公平は雪のそばへ駆け寄った。
「真野!!あれ?こんな時間まで何してたの?確か・・・・真野は部活って・・・」
「はいっ。入ってないです。帰宅部です。」
「帰宅部です・・・じゃあないでしょう・・・出来たの?ちゃんと明日提出して
もらうわよ!」
「あはは・・・それがねー先生・・・全く分かんなくって・・・・先生に教えてもら
おうかなーっと・・・」
「え・・・・ちょっと待ってよ・・じゃああなた。そのために、ずっとここで待って
たの?」
「はいっ!」公平はにこにこしながら答えた。
「・・・はあーっ。」雪は溜息をつき続けて公平に言った。
「あっそ。まあその根性だけは認めるわ。でもねーこの時間から教師が生徒に勉強を
教えるって・・・・ちょっとどうかな。また明日の朝教えるから今日は帰りなさい。」
雪はそう言いながら、門を出た。
「えー大丈夫だよ!」公平もそう言いながら雪の後をついて校門を出た。
雪は速足で歩いた。
「せんせー!荒井由紀さーん!」公平は雪の後ろから大声で叫んだ。
「教師をフルネームで呼ぶなっ!!」
「え・・・だって・・・」
「第一・・・どこで教えるっていうのよ。家の人も心配してるでしょうが。」
「別にしないけど。」
「え?」
「だってうち両親とも夜はいないことが多いし・・・」
雪はそれを聞いていったん立ち止まったが、また歩き出した。
「ねえ!荒井雪さんっ!!」公平はまた雪を呼んだ。
「だから!!フルネームで呼ぶな!!っつの!!」
公平は笑いながら走って雪に追いついた。
「だってさーうち貧乏だし塾とか行かせてもらえなくって・・・教えてもらえるの先生
しかいないって言うか・・・」
「そう・・・なの?そんな話聞いてないけど・・・いつも夕飯はどうしてるの?」
「あーまあだいたいつもはカップラーメンとか・・・」そう言った公平のお腹が鳴った。
≪ぐうーーっ・・・≫
「・・・はあーっ。」雪は再び溜息をついて言った。
「じゃあ今日だけね・・・ラーメンは好き?」
「はいっ!大好きです。」公平は笑顔で答えた。