第十七話 高熱
「真野!ベッドに戻るわよ。」そう言って雪は公平に肩をかした。
「はあっ、はあっ・・・」公平は高熱で息が荒くなっていた。
散らかった部屋の中を歩き、雪は公平をベッドに寝かせて、彼の頭を冷やした。
「薬・・・あるの?」雪は公平に聞いた。
「母ちゃんが買ってきたのが・・・」公平はテーブルの上を指さして言った。
「あ・・・」雪は亜紀が買ってきた袋を見て中から薬を出した。
雪はベッドのそばに寄り言った。
「お母さん・・・今日も遅いの?」
「あ・・・うん。母・・・ちゃん・・・は・・・朝まで帰って来な・・・いよ。
父ちゃんは来・・・週・・・かな。」
「ほんとに・・・?」
雪は驚いて聞いたが公平はうなずいた。
「じゃあ何か作るわね。」雪がそう言ってベッドから離れようとした時、
公平は雪の手を掴 つかんだ。
「待って・・・もう少し僕のそばにいて・・・」
雪は振り返り公平を見つめた。
「真野・・・」
「先・・・生・・・荒井雪さ・・・ん・・・」
「・・・だから教師をフルネームで呼ぶな・・・」
雪は静かに言った。
「先生・・僕の手・・・握ってて・・・」
「真野・・・」
「お願い・・・」
公平は言った。
雪は仕方なく手を握った。
「先・・・生の・・・手・・・冷たい・・・」
「熱があるからよ。」
「気持ちいい・・・ずっと・・・握ってて・・・くれる?」
「・・・・」
雪は、しばらく返事をしなかった。
「でも・・・何か食べて早く薬飲まないと治らないわよ。」
「わかっ・・・た。じゃあもう少し・・・だけ・・・10分・・・だけで・・・
いい・・・から・・・」
「分かった。じゃあ10分だけ握っててあげるから。」
雪はそう言って公平の手を握り彼を見つめていた。




