第百話 雪の告白
「大丈夫?真野」雪は公平のリハビリの手助けをしていた。
「公平!」
誰かが公平を呼んだ。
「あ、母ちゃん!」
公平の母親が笑顔で歩いてきた。
「先生!ありがとね!いつも」
「あ、いえ・・・」
「先生は休んでて代わるから」
「あ、はい」
雪はリハビリ室から出た。
「母ちゃん!来てくれたんだ!忙しいのにごめんね」
「あんたは私の子供だろ?母ちゃんこそいつも放ったらかしでごめんね」
「大丈夫だよ。いつも荒井先生がいてくれるし」
「ねえ・・・公平」
「何?」
「もしかしてあの先生が好き?」
「え・・・?あ・・・うん。なんで分かるの?」
「母ちゃんだから」
ふと公平は入口の方に目をやった。
「あ、父ちゃん・・・」
公平の父親は手を振っていた。
「母ちゃんさ、これから父ちゃんとデートだから。あんたと先生
邪魔するのも悪いし、もう行くね!」
「あ、うん。ありがと!母ちゃん!父ちゃんにもよろしく!」
「ほんじゃ!頑張れ!公平!」
「うんっ!」そう言って母親は父親と帰って行った。
しばらくして雪が入って来た。
「あれ・・・?お母さんもう帰ったの?」
「うんっ!父ちゃんとデートだって!」
「へえ・・・仲いいんだ・・・」
「うん。まだ結婚したばっかだしね。」
「え?そうなの?」
「うん。本当の父ちゃんは僕が小さかった時に死んでもういないから。
母ちゃん・・・変な男にだまされて借金作っちゃって・・・今の父ちゃんは元々
お店のお客さんなんだけど、すごく優しいんだ。たまに帰って来た時は勉強とか
教えてくれたり」
「そうだったの・・・」
本当に悲惨な少年時代だ・・・でも・・・こんなに素直に育ったって事は・・・
きっと幸せだったのね・・・
再び雪は公平のリハビリを手伝った。
「ねえ先生!」
「何?」
「僕・・・卒業できるのかな?」
「ええ。出席日数は足りないけど、成績がある程度あれば大丈夫。私がここに通って
教えるから。夏休み中で本当に不幸中の幸いよね。」
「ねえ先生!ここに毎日来てくれるのは僕のリハビリを手伝ったり、勉強を教えに来るため
だけなの?」
「ん?・・・どういう事?」
「僕ね・・・聞こえちゃったんだ。先生の告白」
「告白?」
「うん。聞いたよ!先生が言ったの」
「何を?」
「僕の事・・・すきなのかしら・・・って」
「い、言ってないわよ!そんな事・・・」
「うそだよ!だってちゃんと聞いたもん!ね?言ったでしょ?」
「言った・・・」
雪は小さくうなずいた。
「ほらね!」
雪は胸が高鳴っているのを隠そうとした。




