1番好き(6)
「ピ!」
撫でてほしいと要求してくるモモを手に乗せて、ピンク色のふわふわの毛並みを撫でる。私の能力の発動対象はゲイル様のみになってしまったため、もう気にせずにモモやボタンを可愛がることができる。
あんなに鳥好きで、鳥にしか興味が無く、鳥しか眼中に無かった私が、鳥以上に好きな物ができるなんて。世の中何が起こるか……分からないものだ。
ロバート様に相談した結果、ゲイル様にはこの事は黙っておこうという話になった。ちゃんと能力を制御して鳥と遊んでいるとアピールしておく方が、ゲイル様も安心するだろう、と。自分のみが発動対象になったと知れば、今以上に怪我を気にしてしまうかも知れない。そう心配したのだ。
「ロバート様は、何故ゲイル様が私を領地に置いて帰ったのかご存知なのですか?」
私の問いかけに、ロバート様は頷いた。しかしその理由を教えてくれる事はなかった。
「そのうち分かる。もしくはゲイル本人から聞くべきだ」
そう言って、すまないと謝られるだけだった。
今日ロバート様から聞いたことを纏めてゲイル様宛に手紙を出したが、返事が届くのはいつになるだろうか。馬車で往復6日掛かる事を考えると、早くても一週間後だろう。そう考えていたのだが。
私を腕の中に捉える人物の顔をジーッと見つめる。
「どうかしたのか?」
ゲイル様は手紙の返事をくれない。その変わり……
「毎週のように帰ってこられるなんて、思っていませんでした」
当分会えないものだと思っていた。だから手紙のお返事をくださいとお願いしたのに……まさかこんな頻繁に会えるだなんて。深刻に考えていた自分が馬鹿みたいだ。
スリ……ッと多くの傷痕が残る胸板に頬を寄せる。この脈動や温もりを肌で感じるのはしばらく無理なのだと諦めていたのに。
「何だ、私が帰ってこない方が良いのか?」
「違います。こんなにお会いできるのなら、もっと違うお願い事をすればよかったと思っただけです」
1つ機会を無駄にしてしまいました。と不満げに続ける私に、ゲイル様は苦笑する。……会うたびに鳥吸いさせてくださいってお願いすれば良かった!
「仕方ないだろう。手紙の返事を綴るよりも、直接逢いに来た方が早いのだから」
ゲイル様は何故私を置いて帰ったのか説明してくれない。しかし、こうやって毎週のように宵の口に現れては私の手紙への返事を口頭でして、少し雑談する。そしてその後、散々私を愛して朝方に帰られる……そんな生活をしてもう一ヶ月になろうとしていた。
肘までのドレスを着ていた初夏の時期は終わり、王都よりも肌寒いクレセントでも半袖を着る夏本番の時期になっていた。
「昨日は、案山子作りの講習会を開いたのです。ロバート様が改良を重ねて、腕がブンブン回る案山子を作って下さったのですが、それがもう大人気で!私の普通の案山子は見向きもされなくなってしまいました……」
いつものように、その週あった事を報告する。ゲイル様がいなくてもちゃんとクレセント領に馴染んで生活していると強調して、安心させる為に。何をしているのかは知らないが、王都でゲイル様が安心して私を忘れ仕事に集中できるように。そして、私がゲイル様を助ける為いざというときにここを飛び出して行くのを……計画していると、勘付かせないために。
「流石父上だな。しかし、これでやっとアルエットが少しは民から解放されるか? 最近人気がありすぎて心配していたんだ。もはや、幸福の鳥だと言われる私以上に人気者だと父上に聞いた」
私が居ない間に他の男に気を惹かれるような事があれば許さない、と怒気を含んだ声で釘を刺される。そんなに心配せずとも、私にはゲイル様しか見えていない。
「そんなに心配されなくても、どうせ使用人達やロバート様に、私の行動を監視させて報告させているのでしょう?」
「……どうしてもタイムラグがある。私が知り男を殺しに来た時には手遅れという可能性もあるだろう」
完全に勘で言ったのに当たっていた。そう、私監視されてるんだ……? やはり計画がバレるような変な行動は絶対にしてはならない。
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