第三章・楽園追放
神が造った生き物の中でもへびは最も狡猾であった。
園につがいのへびが現れた。
一匹のへびが女に言った。
「園にあるどの木からも取って食べるなと、本当に神は言われたですか」
女はへびに言った。
「私たちは園の木を食べることは許されていますが、園の中央に生えている木の実にこれを取って食べるな、これに触るな、死んではいけないからと言われました。」
へびは女に言った。
「貴方方は、決して死ぬことは無いでしょう。それを食べ、勇気を証明し女神になり、男を支配するのです。」
女はその木を見ると、見た目が美しく食べるには良く自分が賢くなるには、相応しいと思ったから女はその実を取ってためらいながらも食べた。
女は恍惚の表情を浮かべた。
へびは女に入れ知恵をした。
女はへびに従い、その実を取って男の元に持っていき男を誘惑した。
男は女が堕落したことに気づいた。
へびは男に言った。
「この間までは、この堕落した女は神の罰を受けるであろう、罰を受け女と離れるであろう」
女は男の前でへびの入れ知恵による嘘泣きした。
へびは男に言った。
「女が貴方の為に取ってきたこの実を食べ、神の名において儀式をすれば許され二人離れ離れにはならないであろう。」
男はへびに聞いた。
「どのような儀式をすれば良いのですか。」
つがいのへびは尾の先から体を絡ませて見せた。
へびは男に言った。
「貴方の欲望を女の器に注げば良いのです。」
男は泣く女から、実を受け取り食べた。
男は女から赤を感じ、女は男から青を感じた。
男は女の泣き顔、身体を見るなり欲情をし、濃密に体を絡ませ快楽に溺れた。
儀式中、女は男の前で鳴いて見せた。
儀式を終えた男は、寝ている女にいちじくの葉をかけた。
罪悪感に苛まれ、いちじくの葉を取り腰に巻いて神の元に行った。
神は男に言った。
「知恵の実を食べ賢者となった男よ、どうしたのですか。」
男は神に跪き言った。
「私は罪を犯しました」
神は男に言った。
「なぜ、貴方はそのようなことをしたのですか」
男は神に言った。
「へびが女を騙し実を取らせ、私は実を受け取り食べました。女を守りきれなかった私が悪いのです。」
神は男を立ち上がらせ女の元に行った。
神は女を寝ている女を起こした。
女は、いちじくは葉を腰に巻いた。
神は女に言った。
「なぜ、貴方はこのようなことをしたのですか」
女は神に言った。
「へびが私をだましたのです、それで私は実を食べました。」
神はへびに言った。
「お前はこの事をしたので、一生地を這うさだめとする。お前は嫌悪の象徴、そして悪魔の使いとして、受け継がれるであろう。」
神は次に女に言った。
「貴方は血を垂れ流し罪を償うであろう、そして胎中の苦しみと御産の苦痛を与える。また、胎児は地に落ちるであろう、それでもなお男に従い、彼は貴女を治めるであろう。」
更に男に言った。
「食べるなと命じた木から、取って食べたので貴方は、地は呪われるであろう、そして貴方は一生脱毛に苦しみ、地に苦しんで食物を取る。そして、女を求め争うことになるであろう。」
神は人に言った。
「貴方達は、土から造られたので地に還る。後世にこの罪は記憶と共に永久に受け継がれるであろう。そして、二人は罪を償う為に離れ逃げぬように子を授けよう」
神は、人が罪を忘れないようにつがいのへびを二重螺旋にし、人に記憶と共に埋め込んだ。
神は男にアダムという名前を付け雄性と知識を授けた、女にはリリスという名前を付け雌性と知恵を授けた。
神は天使を遣わせ、天変地異を起こし地を住みにくい環境にかえ、動物達を肉食にし人に懐かなくした。
神は世界を階層構造にし、生物には平等に死を与え、循環させた。
神は人に言った。
「見よ、人は我々の一人のように善悪を知る者となった。しかし、貴方達は命の樹からも実を取って食べるかもしれない。園の外で、貴方達は完全ではないことに満たされず、何代も増え罪を償うのだ。しかし、御産の祝福だけはおこなう事を約束しよう。」
神は皮の着物を造り二人に着せた。
神は二人を楽園から追放した。
ミカエルが二人を送った。追放前にアダムに未来を見せた。
彼の子供達の犯罪や罪深き世代を見ると二人は涙を流し悔いを改めた。
二人は涙ながらにエデンを後にしたのだった。