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クモをつつくような話 2021 その1

作者: 山崎 あきら

この作品はノンフィクションであり、実在のクモの観察結果に基づいていますが、多数の見間違いや思い込みが含まれていると思われます。鵜呑みにしないでお楽しみください。

 1月13日、午後3時。

 ゴミグモ婦人がいた生け垣で横糸を張っている最中の体長2ミリほどのクモを見つけた。円網の直径は15センチくらいで横糸の間隔が10ミリほどだからオニグモの仲間の幼体だろうと思う。その近くにも張り終わった円網が2つある。しかし、今日は最高気温が12度Cまで上がったらしいのだが、まだ1月なんだぞ。獲物なんかいるのか? それとも寒い日が続いた後の小春日和だから春が来たと思い込んでしまったんだろうかなあ。


 1月16日、午後2時。

 ゴミグモ婦人の生け垣では3日前に円網を張っていたクモの幼体がいなくなっていた。円網もまったく見当たらないから糸を食べてからまた休眠に入ったんだろうと思う。「暖かくなったから起きてみたけど、まだ冬だったのよね。てへっ」というところか。

 だいたい真冬に円網を張っても獲物がかからないだろう……と思ったら大間違い! この季節でも小さな羽虫の群れが飛んでいることがあるのだ。秋の頃と比べればその数は少ないのだが、どうも気温が10度Cを超えるようなら飛べるのらしい。小さな体なら太陽の光を浴びるだけで体温を上げられるのだろう。1月でも獲物がまったくいないというわけではないのだな。ということは、オニグモの場合、休眠するかしないかは気温で決めるということなのかもしれない。

 話は変わるのだが、車道と歩道を分けるコンクリートのブロック(正式名称は知らない)にテントウムシのサナギらしいものが間隔を開けて10匹ほどくっついているのに気が付いた。おなじみのオレンジ色と黒のツートンカラーの子たちと全身黒っぽい子たちがいたので何種類か混じっているのかもしれない。

※テントウムシのサナギは羽化が近づくにつれて黒っぽくなっていくのらしい。


 ここには脱皮殻も2つあったから割と人気のスポットなのだろう。そこは陽当たりのいい側だったので、念のために日陰側も見てみたのだが、予想通りそちら側には1匹もいなかった。サナギになる時にはちゃんと暖かい場所を選ぶのらしい。昆虫の頭部に収まるようなちっぽけな脳でそこまで判断できるというのはたいしたものである。

 そこまではいいのだが、なんと、6本の脚で歩き回っている幼虫も1匹だけいた! おそらく夢中で獲物を狩っているうちに冬が来てしまったんだろうと思う。テントウムシの世界にもドジっ子はいるということである。サナギも幼虫も中身は同じようなものだろうから低温に耐える能力もたいして変わらないのかもしれない……のだが、いくらなんでも1月だというのに、まだ幼虫というのは問題だろう(実際、この日の夕方にはみぞれが降ってきた)。

 しかし、この子グモや幼虫も気温が今より5度くらい上がれば何の問題もない、というか、他の個体よりも長期間獲物を狩ることができるから、生き残る上で有利になる可能性もある。もしかしたら、節足動物たちはすでに地球が温暖化しつつあるのに気が付いて対策を取り始めているのかもしれない……なんてことはあるまい。彼らは多数の卵を産むのが普通だから、おそらく気候変動に対応するために冬眠から早めに目覚めてしまう子やサナギになるのを遅らせる子が一定の割合で存在しているんだろう。気候が変わらなかったらその子たちは生き残れない可能性もあるわけだが、確実に種を存続させていくためにはそういう変わり者がいた方がいいということなんだろうと思う。

※ナミテントウは成虫で集団越冬するのらしい。暖かければ獲物も見つかるのかもしれない。


 1月22日、午前11時。

 陽当たりのいい岩の上ではテントウムシやハナアブがひなたぼっこしていたり、体長7ミリほどのアリが歩いていたりする。昆虫は体温さえ上げられれば活動できるのだろう。

 近所の植え込みで体長50ミリほどの濃い茶褐色のバッタ(トノサマバッタらしい)を見つけた。多分交尾し損なったまま冬を迎えてしまった子なんだろう。気温が低いせいか近寄っても逃げないので、調子に乗って触角をツンツンすると少し身を引いて、前脚でその触角を掃除するのが面白い〔迷惑なやつだ〕

 触角はバッタにとってとても大事なものなのだろうなと思ってウィキペディアを開いてみると、「多くの場合、触角は感覚器官であるとされている。何をどうやって感じているかは分類群によって様々であるが、多くの場合、接触・気流・熱・音あるいは匂いの感知と味覚を感じるための器官であるとされる」と書かれていた。ということは、作者は他人の鼻の穴に指を入れるような真似をしてしまったのらしい。それでは掃除したくもなるだろう。悪いことをしてしまった。

※これは成虫で越冬するというツチイナゴだったかもしれない。この2種にはわずかな違いがあることが後でわかるのだが、この時点ではそういう知識はなかったのだ。


 1月23日、午後1時。

 13日にオニグモの仲間の子グモを見かけたポイントで同じくらいのサイズの円網を3つ見つけた。3匹とも元気でいたらしい。実際に姿を見たわけではないのだが、とりあえず「ブー」「フー」「ウー」と名付けることにする。〔見分けられるのか?〕

 獲物がまったくいないわけではないし、円網は食べてしまえばリサイクルできるのだろうが、円網を張ったり食べたりするために消費するエネルギーに見合うだけの獲物がかかるんだろうかなあ。

 16日にテントウムシの幼虫がいたポイントでまた幼虫を見つけてしまった。同じ個体かどうかはわからないが、同じ個体だということならサナギになれないような先天的異常を抱えている子なのかもしれない。なお、『テントウムシの上手な飼い方』というサイトによると、ナナホシテントウのサナギは約1週間で羽化するらしい。越冬のためではなく、羽化するだけならそれで十分なのだろうが、この時期に羽化してアブラムシが現れるまで飲まず食わずでいられるんだろうかなあ。


 1月25日、午後1時。

 近所で体長3ミリほどの子グモを見つけた。円網の直径は約20センチ。横糸の間隔は10ミリほどだし、丸っこいお尻なのでこの子もオニグモの仲間の幼体だろうと思う。「ブー」「フー」「ウー」の中の1匹よりも大きいから、これくらいの体長だとごくわずかな獲物を食べただけでも脱皮して大きくなれるのかもしれないなと思ってウィキペディアを開いてみたら、オニグモは「秋に孵化し卵囊内で幼生越冬、さらに10ミリ程度の幼体や亜成体、まれに成体でも越冬する」と書かれていた。それならどんな大きさで越冬してもおかしくはあるまい。ナガコガネグモやジョロウグモは昼間でも狩りをするので、その年のうちに産卵して寿命を迎えるのが普通らしいのだが、オニグモは基本的に夜行性なので年内にオトナになれないことも多いのだろう。24時間営業のクモのように生き急いだりしないタイプなのである。


 2月1日、午前11時。

 ガスコンロに乗せっぱなしにしてある鍋の縁に体長3ミリほどのクモがいた。「歩いて鍋に入る冬のクモ」である。全身濃い茶褐色で脚が長めなのでアシダカグモの幼体じゃないかと思う。

 せっかく鍋の縁にいるのだから「クモ料理」で検索をかけてみたら「カンボジア名物クモのフライ」というのがあった。この油で揚げた手のひらサイズのタランチュラは鶏肉と魚のタラの間のような味なんだそうだ。しかし、作者は油が苦手だし、この子もまだ小さいので「大きくなってからまたおいで」と玄関に逃がしてあげることにした。〔太らせてから食うのか?〕


 2月17日、午前10時。

 パチンコ屋の駐車場を1匹だけで歩いている体長6ミリほどの黒いアリを見つけた。しかし、目覚めた者である作者はそのアリの歩き方にかすかな違和感を覚えたのだった。〔ああ、さっきまで寝てたよな〕

 ……指で通せんぼしてみると、この子は指先を回り込んでからアスファルトの小さな欠片の陰に隠れて作者の様子をうかがうのだった。ビンゴ! 社会性昆虫であるアリは女王でもなければ自分の代わりはいくらでもいる。これほどまでに自分の身を守る行動を取る必要はないはずだ。この子はおそらく、アリそっくりのクモだろう。

「フフフフ。物陰に隠れたうぬが不覚よ」〔今時の子は読まないぞ、白土三平なんか〕

 帰宅してから調べてみると、この子はハエトリグモ科のアリグモらしい。アリグモがどうしてアリそっくりの姿をしているのかというと、アリを嫌がる動物は多いのでアリのふりをして捕食者からの攻撃を避けようということらしい。アリグモ属の中には第一脚を持ち上げてアリの触角に見せかける子もいるんだそうだ(クモの触肢は昆虫の触角のように長くない)。しかし、こういう擬態をしているとアリを好む捕食者からは逆に狙われやすくなるわけだが、そういう場合にはいったんアリのふりをやめるのらしい。つまり「私はアリじゃアリません」と言ってしまうわけでアリますね。〔…………〕


 2月24日。

 ナガコガネグモの15ミリちゃんが残した卵囊が大きくへこんでいた。眼に付く場所にあるから誰かにツンツンされてしまったんじゃないかと思う。お尻の大きさに比べてはるかに大きな卵囊だから内部の空間も大きいはずだ。中の子グモたちは無事だろう……と思いたい。

 まだ観察例は4つしかないのだが、ナガコガネグモが卵囊を取り付ける場所は草や灌木の頂部のすぐ下が多いような気がする。これはおそらく、卵囊から出た子グモたちが風に乗って生息域を広げるのには葉先や枝先がいいということと、見つかりやすい場所ではツンツンされてしまうという欠点との妥協点として、子グモが10センチくらい移動すれば風通しのいいところに出られる場所になったということなんじゃないかと思う。そこまでするのならもっと小さくて目立たない卵囊にするとか、ジョロウグモのように枯れ葉を被せてカモフラージュするとか、他のやり方があっただろうとも思うのだが、ナガコガネグモにはナガコガネグモの事情があるんだろう。


 2月25日。

 2月1日に見かけたアシダカグモの幼体がまた現れた。この部屋は細長いワンルームなのだが、玄関からベランダ近くまで天井を五メートルくらい移動したわけだ。天井の方が床付近よりも暖かいのだろう。

 ウィキペディアによると、アシダカグモは「原産地はインドと考えられるが、全世界の熱帯・亜熱帯・温帯に広く分布している」のだそうだ。外来種だったのだな。ということはアシダカグモによって駆逐されつつある日本固有種もいるんだろうか? 

 アシダカグモがよく獲物としているクロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリなどもアフリカ原産の外来種らしい。かつての人類がそうしたようにアシダカグモも獲物を追いかけて生息域を広げてきたということなんだろう(船便の荷物に紛れて広がったという説やゴキブリ駆除のために人為的に導入されたという説もある)。

 なお、アシダカグモは成体になるのに2年かかるらしい。日本に生息する徘徊性のクモとしては最大種だというし、母国ほど獲物が多いわけでもないだろうから成長するのにも時間がかかるのかもしれない。インドでの成長期間も知りたいものだな。


 3月2日、午後8時。

 うちのアシダカちゃんがまた20センチくらい移動していた。そしてもう1匹、体長2ミリほどでアシダカグモよりも脚が短いクモが浴槽の中にいるのを見つけた。見た目はオニグモの仲間の幼体のようだ。この浴槽の真上には換気口があるので、そこから入り込んだんだろう。今日は最高気温が19度Cまで上がったらしいので、休眠から覚めてしまったものの、日が暮れて気温が下がってきたので暖かい場所を求めて迷い込んだかな。もしかするとアシダカちゃんに誘われたのかもしれない。〔んなわけあるかい!〕

 いやいや、アシダカちゃんの匂いとか、あるいは残されていたクモの糸をたどってきたという可能性を否定することはできまい。ああっと、そのクモの道をたどって次々にクモの子が訪れるということもあり得るな。そうなったらなったで、その場で対応を考えよう。とりあえず今は、そこにいられたのでは入浴できないし、排水口に吸い込まれたのでは溺れてしまうだろうということで、ゴミ箱から持ち出したお惣菜のトレーに乗せて浴槽から出して、便器の脇に移動してもらった。さすがにこの季節だと素直にトレーに乗ったままでいてくれるので楽だ。

※この子はそれっきり姿が見えなくなった。


 話は変わるのだが、いままで「屈伸運動」と呼んでいた、クモがホームポジションに戻った時に見せるお尻を上げ下げする動きは出糸突起(正式名称は「糸疣」(いといぼ)らしい)を円網に押しつけて命綱であるしおり糸を固定する動作だったらしい。読者の皆さんもクモの皆さんもお許し願いたい。

 しかし、脚先を口元に持っていく「爪のお手入れ」についてはいまだに謎である。どこかのサイトで見たのだが、クモの脚先には粘球が張り付かないコーティングか何かが施されているらしいから爪のお手入れは必要ないはずである。この行動は獲物に捕帯を巻きつけた後でホームポジションに戻った時とか、本当に暇な時とかに多く見られるし、「ネコが顔を洗う」行動に似ているような気もするから、リラックスするため、あるいはリラックスしている時についやってしまう行動なんじゃないだろうか。クモレベルの知性を持っていればそういう行動をしてもおかしくはないと思うのだが、最終的にはクモに聞いてみないことには解決しない問題だろうなあ。〔無理だろ、それは〕

※クモの消化液には殺菌作用があるのだそうだ。この行動は人間が手にアルコールをスプレーするようなものなのかもしれない。


 3月3日、午後1時。

 うちのアシダカちゃんが20センチくらい移動していたので暖房を停めた。変温動物の場合、室温が低い方が代謝が低下してエネルギーを節約できるだろうという判断だ。暖房して室温を上げると代謝も活発になるから、歩き回ることによって消費する以上のエネルギーを獲物から得られないと飢えることになってしまうはずなのだ。

 実は作者の部屋の浴槽の下には手のひらが入るくらいの隙間がある。その結果、ほとんど常に濡れている床がぬめって小バエ(チョウバエだと思う)が発生していたようなのだが、3ヶ月前にこのぬめりを徹底的に掃除してしまったのだ。アシダカちゃんがやって来るとわかっていたら掃除などしなかったのに、と思う。人生とはうまくいかないものだ。〔掃除はしろよ〕


 3月10日。

 うちのアシダカちゃんは1.5メートルくらい移動していた。ちょうどいいサイズの羽虫も1匹迷い込んでいるのだが、アシダカグモは円網を張らないから獲物に飛びかかれる距離まで接近しないことには狩ることができない。かなり運がよくないと食べられないだろう。

 サイクリング中に直径30センチくらいのオニグモの仲間のものらしい円網を見つけた。小さな羽虫も11匹かかっている。横糸も揃っているから何ヶ月も前に張られたものではないようだ。暖かい日が続くようならこまめに様子を見ようと思う。


 3月12日。

 10日に見たオニグモの仲間の円網にかかっていた羽虫は食べられた様子がないので全部持ち帰った。うちのアシダカちゃんの目の前でピンセットでつまんだ羽虫を「ほれほれ」するつもりだったのだが、帰宅してみたらアシダカちゃんがいなくなっていた。人生はうまくいかないものだ。


 3月15日。

 今日は気温が上がるらしいので長袖ジャージとレーサーパンツで涸沼方面に向かった。途中、自販機の前で妙に生ぬるいコーヒーを飲んでいると、風に乗って飛ばされてきたらしい体長2ミリほどの鮮やかな緑色のクモが右腕にひっかかった。これはサツマノミダマシの幼体だと思う。バルーニングの季節が始まっているのだなあ。


 3月16日、午後5時。

 スーパーの近くで体長3ミリほどで濃いグレーのクモを見つけた。撮影した画像を拡大してみると丸っこいお尻は怒り肩だし、直径15センチくらいの円網も横糸の間隔が広いめだからオニグモの仲間の幼体だと思う。

 体長7ミリほどのゴミグモの仲間も見かけた。縦一列にゴミが取り付けられた円網の直径は20センチくらい。細めのお尻の背面が白いのでギンナガゴミグモの幼体かな、とも思ったのだが、新海栄一著『日本のクモ』によれば、ギンナガゴミグモは頭を上向きにして待機するのらしい。この子は下を向いて羽虫らしいものを食べていたし、どうも尖ったお尻の先端の両側にも突起があるようだ。これらはヤマゴミグモの特徴である。お尻が色白美人のヤマゴミグモの可能性の方が高いかもしれない。〔クモに色白も色黒も……なくはないか〕

※この子はゴミグモだということが後でわかることになる。


 いずれにせよ、この季節に体長7ミリというのは大きすぎる。円網にしっかりゴミを取り付けているところから見ても、去年のうちに卵囊を出て、ある程度成長してから休眠に入った子だろうと思う。

 このヤマゴミグモの円網の近くにも直径30センチくらいの円網があった。その大きさと横糸の間隔が広いことから推測すると、体長5ミリクラスのオニグモの仲間だろうと思うのだが、その汚れ具合から判断するとしばらく張り替えられていないようだ。

 で、ここからは例によってただの思いつきになるわけだが、ある程度成長したオニグモの仲間が冬期の休眠に入った場合、春が近くなるといったん起き出して円網を張り、また休眠するということがあるんじゃないだろうか? 春になってから張られたらしい円網を3つ観察できたのだから、さほどまれなケースではあるまい。暖かい日が来たので目が覚めてしまって、寝ぼけながら円網を張ったものの、それを回収するのも忘れたまま二度寝してしまう子たちがいると思うと、なんとも愛らしい。


 3月17日。

 ヤマゴミグモは今日も羽虫をもぐもぐしている。もしかして昨日から食べ続けているんだろうか。夜は寒いからもぐもぐするのは昼間だけ、とか? 

 ゴミグモ婦人の生け垣にもゴミグモの仲間が6匹いた。体長は4ミリから6ミリくらい。6ミリの子は細長くて白っぽいお尻なのでヤマゴミグモかもしれない。で、この子の円網に指を置いてみると、左右の第一脚でチョンチョンと触れてから後ずさりしてホームポジションに戻ってしまった。

 6ミリちゃんがガードを固めてしまったので、その隣の5ミリの子の円網には細い枯れ草で触れてみる。これがビンゴ! ばっちり抱え込んでくれた。やはり脚でチョンチョンは獲物の大きさを測るための行動なのだろう。この行動はジョロウグモと共通なのも面白い。


 3月19日。

 スーパーの駐車場の植え込みでクサグモのものらしい多数の棚網が張られているのを見つけた。大きさはいずれも直径10センチ弱とクサグモの棚網としては小さめである。クモそのものまでは見ていないが、おそらくこの春に卵囊から出てきた子グモたちなんだろうと思う。

 なお、よく似ていてやや小型のコクサグモというクモもいるらしい。ウィキペディアによると、クサグモとコクサグモは大きさと頭胸部背面の模様が少し異なるだけなので見分けるのは難しいのだが、卵囊と子グモが孵化する時期には大きな差があるのらしい。クサグモは棚網に作り付けのトンネル内に宙吊りにするように卵囊を固定し、年内に孵化した幼体は翌年春に卵囊を出るのに対して、コクサグモは地上の石の下面に盛り上がった円盤状の卵囊を取り付け、卵は越冬後に孵化するのだそうだ。


 3月24日、午前10時。

 スーパーの東側の植え込みに体長4ミリほどのゴミグモが突然現れた(見落としていただけという可能性もある)。そのすぐ近くには3ミリほどの個体もいる。この2匹は姉妹で、お互いに支え合いながら冬の寒さを乗り切ったのだろうと思う。〔んなわけあるかい!〕

 冗談はともかく、この子たちは春が来てから卵囊を出たにしては育ちすぎだと思う。おそらくはこれくらいの体長のまま休眠して越冬したのだろう。そうなると不思議なのが円網にしっかりゴミが取り付けられていることである。クモ自身の体長の10倍にもなるような大量のゴミを獲物が少ないであろう春先に手に入れられたとは思えない。そこで、ここからは例によってただの思いつきなのだが、この子たちはゴミを抱えたまま休眠していたのではないだろうか? ゴミグモにとってゴミは大事な財産だろうし、休眠中は保温材にもなる。冬眠する小型哺乳類のようにゴミの布団にくるまって春が来るのを待っている。そんな情景を想像するとゴミグモもかわいく思えて……こない?


 3月27日、午前10時。

 ヤマゴミグモのお尻は濃い褐色になっていた。これならギンナガゴミグモではないと言い切れる。そして、そこから2メートルほどの所に新たに現れた同じくらいの体長のヤマゴミグモ2号のお尻の背面は白いのである(この子の円網は枠糸と縦糸しかない。これは「準備中」の看板のようなものだろう)。

 十王ダムのトイレのイエユウレイグモのお尻も白かった時があるから、脱皮直後のような特別な状況下でお尻が白くなるクモもいるのではないかと思う。ではその効果はというと、白いお尻だと捕食者から見えにくくなるのか、忌避されるのかもしれない。外骨格が十分に硬くなったらお尻の色を変えて本格的に狩りを始めるというわけだ。ああっと、逆に脱皮直後は外骨格の内部がスカスカなので積極的に獲物を食べたいから、危険を承知の上でわざとお尻を目立たせて獲物をおびき寄せているのかもしれない。そういう可能性の方がより高いだろうかなあ。


 午前11時。

 ゴミグモ姉妹の妹ちゃんが円網ごと姿を消していた。お姉ちゃんとケンカして「もう! お姉ちゃんなんか嫌いよ!」とか言って家出してしまったんだろう。〔んなわけあるかい!〕

 これまで見てきた限りでは円網を張るクモは同種であれ別の種であれ、他のクモの円網の近くに居着くことが多いような気がする。ちゃんとしたデータがあるわけでもないのだが、これは偶然とは思えない。円網を張りやすい場所はそう多くないのか、クモが獲物が多そうだと考える場所はある程度共通しているのか、先客の匂い(フェロモン?)に引かれて、その近くに円網を張りたくなってしまうというようなことになっているのかもしれない。これもわからない。わからないからこそ面白いのだがね。

 クモの研究をする人は少ないらしくて、その習性についてわかっていることは多くないようだ(一般人の目に付く所に情報が置かれていないだけかもしれないが)。クモはたいして有益でもないし、害も少ないからだろう(オニグモなどは蜘蛛の巣が顔に引っかかったりするが、この場合でも被害が大きいのはクモの方だろう)有害ということなら作物を食害するモンシロチョウやアゲハの幼虫の方が人間にとってははるかに有害であるはずだ。ああっと、脚が8本もあるというのは見た目が有害ということになるのかもしれない。ドイツやスイス、フランスの内陸部にはタコを食べる習慣がなかったとか、イギリスでは「悪魔の魚」と呼ばれていたという話もあることだし。


 3月28日、午前7時。

 ゴミグモ姉妹の妹ちゃんが帰ってきた。お姉ちゃんと仲直りした……なんてことではなく、ロッカールームで脱皮してきたということなんじゃないかと思う。

 スーパーの周辺でオニグモの仲間のものらしい円網を5個確認した。オニグモたちも本格的に活動し始めたようだ。一つは直径10センチくらいで体長2ミリくらいの子グモが休憩しながら横糸を張っているところだった。他の円網はすべて留守だったが、ヤマゴミグモの隣の円網は直径40センチくらいになっている。オニグモは基本的に夜行性なので姿は見ていないが、この大きさだと体長10ミリ前後だと思う。幸いなことにカのような体型の昆虫が1匹かかっていた。

 体長2ミリほどのお尻が細長くてその背面が白いクモもいた。このサイズではヤマゴミグモなのか、ギンナガゴミグモなのかわからないが、円網にはまだゴミが取り付けられていない。今年生まれの子がバルーニングで飛んで来たんじゃないかと思う。

 作者の自宅の玄関先にも体長2ミリほどの黒っぽい子グモが1匹いた。この子はお尻が丸っこいからオニグモの仲間だろう。

 話は変わるが、コンパクトカメラ用のリングフラッシュを購入した。何しろオニグモは夜行性の子が多いので撮影するのにはフラッシュも必要なのだ。姉御のように昼間から姿を見せてくれる子は少数派だろうし。


 3月29日、午前11時。

 スーパーの駐車場の植え込みに体長7ミリほどのオニグモの仲間が現れた。この季節でこの大きさだと休眠して越冬した子だろう。

 ヤマゴミグモのお尻黒子ちゃんは五メートルほど引っ越ししたようだ。

 問題は白子ちゃんで、横糸を張っていない。獲物を食べたのは3月16日のはずだが、まだ腹ごなしをするつもりなんだろうか? 体長3ミリほどの羽虫を食べるのに2日かかったようだから、気温が低いと獲物を消化するのにも時間がかかるのかもしれない。


 午後1時。

 ゴミグモ婦人の生け垣に行ってみると、横幅四メートルほどの範囲にゴミグモとヤマゴミグモが合わせて11匹いた。この場所にはゴミグモの仲間に好まれる要素があるらしい。

 ここのヤマゴミグモにもお尻の上面が白い子と濃い褐色の子がいる。気になったので新海栄一著『日本のクモ』(2006年発行)を開いてみたのだが、そういう性的二形があるとは書かれていなかった。そしてヤマゴミグモの雌成体の体長は7~9ミリで、成体の出現期は5~8月という記述もある。まだ3月だというのにほとんどオトナの子が現れていることになる。これはおかしい。もしかしてこの子たちはヤマゴミグモではないんだろうか?

 この生け垣には体長2ミリほどの鮮やかな赤色のクモもいた。お尻は丸いし、円網も垂直型なのでオニグモの仲間の幼体だろうと見当をつけて調べてみると、シロスジショウジョウグモの赤色型のようだ。作者は腹面側からの画像しか撮れなかったのだが、掲載されている写真の脚の先端側が黒いのとも一致する。『日本のクモ』には「腹部の斑紋、色彩には変異が多く、黒色型、赤褐色型、黒色の地色に白または黄色の縦条のあるもの、赤色の地色に黒色の対班のあるものなど様々な個体が見られる」と書かれている。この「ショウジョウ」が能の演目である『猩猩』(真っ赤な能装束で飾った猩猩が、酒に浮かれながら舞い謡うという演目)から来ているのだとすれば、最初に発見された個体は赤色型だったのだろう。それにしても、専門家になると見た目がこれだけ変化しても同じ種だと判断できるというのはすごいな。


 午後3時。

 オニグモの7ミリちゃんの円網にそっと指を置いてみたのだが、円網の反対側へ避難されてしまった。しょうがないので体長5ミリほどのヒシバッタを円網にくっつけてあげると、素早く飛びついて来てぐるぐる巻きにするんだ、これが。指の大きさ(体重60キロ近く)をどうやって知ったのかはわからないが現金なものである。もしもこの子がここに居着くようなら「ヒーちゃん」と呼ぶことにしようかと思う。

※夕方見に行ってみたらヒシバッタはそのままにして円網にかかっていた1ミリほどの羽虫2匹を先に食べたようだった。


 3月30日、午後2時。

 ゴミグモ婦人の生け垣にいるゴミグモの1匹が盛んにつま弾き行動をしていた。よく見るとその円網の端の辺りに体長7ミリほどのアシナガグモがいる。この場合のつま弾き行動は侵入者に対する警告であるのらしい。ナガコガネグモやジョロウグモの幼体のように円網を揺らそうとしても、そこに取り付けられているゴミが振動を吸収してしまうんだろう。


 3月31日、午後4時。

 オニグモの7ミリちゃんは姿を消していた。ヒシバッタまで食べたのでしばらく腹ごなしをするのか、あるいは夜行性に移行するのかもしれない。

※7ミリちゃんが再び現れるのは4月2日の日没後になる。


 7ミリちゃんの代わりに、というわけでもなかろうが、スーパーの西側で体長3ミリほどで脚に長い毛が生えている白いクモが現れた。丸いお尻にはヌサオニグモのような模様がうっすらと見えるからオニグモの仲間のようだが、新海栄一著『日本のクモ』にはオニグモの仲間で白いクモというのは載っていない。この場所は以前2ミリほどのオニグモの仲間がいたところだから、脱皮して一時的に白くなっているだけの同一個体なのかもしれない。

 逆にお尻の上面が濃い褐色に変わってしまったのがヤマゴミグモの白子ちゃんである。これでスーパーの近くにいるヤマゴミグモはどちらも黒子ちゃんになってしまった。ヒメグモたちのお尻の色もオレンジから濃いモスグリーンまで頻繁に変化していたからそう珍しいことでもないんだろう。問題はどんな条件下で変化するのかだなあ。


 午後5時。

 自宅近くの植え込みで体長2ミリから3ミリのクサグモの幼体たちが活発に動きまわっていた。どうもシート網の上に不規則網を設置しているようだ。

 クサグモの成体は灰褐色の背面の頭胸部から腹部まで2本の濃い褐色の縦帯が入っているのだが、この時期の幼体は頭胸部と脚がルビーのような赤でお尻が黒という親とはまったく違う色になっている。さらにシート網は張るものの、身を隠すためのトンネルは造らない。この子たちは昼間はシート網の下などに隠れていたようだが、今はほとんど全員がシート網の周辺を歩き回っている。赤という色は暗い中では見えにくいらしいから幼体のうちは主に夜の間に活動するのかもしれない。


 午後6時。

 あえて日が暮れてからスーパーに行ってみると、やはりオニグモたちが活動を開始していた。ヤマゴミグモの近くに体長12ミリの子と7ミリの子が1匹ずついる。いずれも去年生まれで休眠していた子だろう。ただ、この暗さでクモを撮るのはきわめて難しい。フラッシュを使わないとブレるのだが、フラッシュを使うと濃いグレーのオニグモが真っ白になってしまうのだ。LEDライトというのも内蔵されているのだが、やっぱり真っ白。フラッシュの発光面の半分を指で覆ってやっと何とか許せる範囲の画像が撮れたのだった。どうも被写体までの距離に合わせて発光量を調節するというような便利な機能はないらしい。しょせんはコンパクトカメラなのだな。専用のリングフラッシュも手に入れてあるのだが、これがまた、拡大率を最大にして使わないと画面下に白い横帯が出てしまう。確か、フラッシュの発光面にテープを貼って発光量を減らすというテクニックがあったはずだから試してみようかとも思う。昨シーズンの姉御のように昼間から活動してくれると楽なんだが……。


 4月1日、午前2時。

 作者の部屋に体長4ミリほどのハエトリグモが現れた。全身黄褐色でお尻の両側が黒っぽくなっているのでデーニッツハエトリだろうと思う。新海栄一著『日本のクモ』によると成体の体長は雌で8~9ミリ、雄で6~7ミリらしいからまだ幼体だろう。などと書き込んでいるうちにどこかへ行ってしまった。多分サッシの隙間から入り込んで来たのだろうと思うが、すきま風が入るような部屋というのもこういう時だけは役に立つものである。

 なお、明るい室内だと問題なくフラッシュを使える。お目々キラキラのかわいいポートレートが撮れたぞ。


 午後1時。スーパーからの帰り道で体長50ミリほどで全身緑色の頭を潰されたバッタの死骸を見つけた。まだ4月初めだというのに、どうしてこんな大きさにまで成長しているんだろう? 冬が来る前に産卵できなかった子が越冬していたのか? それとも飼育されていた個体が逃げ出したんだろうか? わからん。

※越冬できるバッタの仲間もいるのらしい。


 そのままではかわいそうなのでオニグモの12ミリちゃんの円網に取り付けておく。12ミリちゃんは留守だったが、運が良ければ夜の間に食べてもらえるだろう。

 作者はチベットやモンゴルの葬送習慣の影響を受けているので、生物の遺骸は他の生物に食べてもらわなければ命が無駄になってしまうという考え方をしている。もちろん、それが日本人としては特殊な考え方だということは承知の上だが、遺体を化石燃料を使って温室効果ガスにしてしまうのは二重三重の意味で罪深いことだと思うのだ。故小松左京先生は「死んだ人間は食べてしまうのが一番だ」とおっしゃっていたようだが、作者個人としては死人は海に流して魚の餌にしてしまうのがいいと思う。


 午後2時。

 ゴミグモ婦人の生け垣にいた体長5ミリほどのヤマゴミグモの円網に指を置いてみると、ちゃんともしょもしょしてくれた。今シーズン初のもしょもしょである。


 午後7時。

  オニグモの12ミリちゃんの様子を見に行くと、バッタを無視してホームポジションで待機している。予想はしていたのだが、やはり死んだバッタでは獲物だと認識してもらえないようだ。それならばとバッタをツンツンして12ミリちゃんの興味を引く。さらにツンツンし続けると、ためらいながらという様子だったが、バッタに歩み寄って来た。脚で触れてみればそこに何かがあるとわかるだろうし、触肢で触れてみれば食べられるものだという判断もできるだろう。やれやれ、これでバッタちゃんも成仏できることだろう。さようならバッタちゃん。君の命は無駄にならなかったよ。合掌。

 これで気をよくした作者は少し離れた所にいるオニグモの7ミリちゃんの円網にも指を置いてみた。これもビンゴ! もしょもしょどころか指にまで乗ってくれた。今シーズンはいきなり〇Pもしょもしょをしてしまったわけである。〔こらこら〕

 今後は20ミリ超クラスのオニグモやジョロウグモにもしょもしょされることを目指してしまおうかな。〔変態まっしぐらだな。咬まれる危険があるからよい子は真似しないでね〕


 4月2日、午前6時。

 オニグモの12ミリちゃんはバッタを置き去りにしたままねぐらへ戻ったようだった。一晩で食べてしまえる大きさではなかったんだろう。

 興味深いことにバッタに捕帯を巻きつけた様子はほとんどない。12ミリちゃんは「これは食べられる」という判断と「捕帯で獲物の動きを封じる必要はない」という判断を同時にしたわけだ。これは獲物が抵抗することによって「捕帯を巻きつける」スイッチが入るのか、あるいは、12ミリちゃんが自分で考えて判断したのかもしれない。大型の死んだ獲物が円網にかかっているというほとんどあり得ない状況のための対策が本能にプログラムされているというのはちょっと考えにくいと思う。

 また、ナガコガネグモにしろオニグモにしろ、獲物はホームポジションに持ち帰って食べるのが普通だと思っていたのだが、12ミリちゃんは獲物がかかっていた場所で食べたようだ。これはまったく抵抗しない獲物という特殊な状況ゆえなのか、この子が変わり者なだけなのかわからない。夏が来る前に活きのいい大型の獲物をあげてみたいと思う。

 なお、ジョロウグモの場合は獲物が大きすぎて危険だと判断した場合には最初から手を出さないようなのだが、大型の獲物が多い環境で育つと、学習を重ねた結果として狩ることができるようになる可能性はあるかもしれない。ああもう、実験してみたいなあ。


 4月3日、午前1時。

 目が覚めてしまったので12ミリちゃんの様子を見に行った。するとバッタの位置が向かって右側から左側に移されていて、そこで食べている。きれいな円網になっているから張り替えるのにじゃまになるバッタを移動させたらしい。食べ終わってから張り替えてもいいだろうにとも思ったのだが、円網さえ張っておけば食事中でも次の獲物がかかるのだな。作者の考えなどまだまだオニグモには及ばないのである。

 お尻の上面が黒くなっていたヤマゴミグモの白子ちゃんは白いお尻に戻っていた。完全な白色ではなくて白っぽいグレーだが、下着を替えるようにお尻の色を変える子である。これもどういう意味があるのかわからない。観察し続ければ他のヤマゴミグモも穿き替えているのがわかるかもしれないが。

 その近くにいる黒子ちゃんは相変わらず円網を縦糸だけにしている。大きな獲物を食べたので腹ごなしなんだろうか? あるいは婚活か? ただ、この子の体長は7ミリほどなので婚活を始めるのには小さすぎるんだよなあ。

 ヒシバッタをあげたオニグモの7ミリちゃんも円網を張っていたので撮影しようとしたのだが、うっかり円網を揺らしてしまったので脚を縮めてカメのような体勢を取られてしまった。おそらくこれがオニグモの警戒態勢なのだろう。

 しばらく待っていると第一脚を1本、2本と伸ばし始めたので円網に指を置いてみた。すると7ミリちゃんは脚をパッと広げたものの近寄って来ない。しょうがないのでこちらから指を寄せていく。そしてとうとう第一脚に触れるところまで迫ったのだが、それでも反応がない。どうやらここまでのようだ。これはジョロウグモならチョンチョンもしょもしょする状況なのだが、この消極性はどういうことなんだろう?

 第一に考えられるのは空腹ではなかったという可能性だな。この子は3月29日にヒシバッタを食べているから、まだ空腹になっていなかったのかもしれない。

 第二に慎重なタイプだったという可能性がある。3月29日に小型の獲物から食べていたのも慎重な性格だったからなのかもしれない。より多くのオニグモの円網に指を置いてみる必要があるかなあ。それでもフィールドワークではそれぞれのオニグモの腹具合まで揃えるわけにはいかないから有意なデータにはならないだろうが。逆に、性格に明らかな差があるということなら、それは高度な知性を持っているという証拠の一つになるかもしれない。

 第三にオニグモはナガコガネグモやジョロウグモのように生き急いでいないという可能性もある。24時間営業の寿命の短いクモだと、春に卵囊を出てから6ヶ月から8ヶ月でオトナになって産卵してしまう必要がある。したがって積極的に狩りをしなければならない。しかし、オニグモなどの夜行性のクモの営業時間はせいぜい1日8時間だ。これではいくら大物を狙っても年内にオトナになるのには無理があるだろう。それならオトナになる前に冬が来てしまった時には無理せずに休眠してしまえばいい。安全第一の受け身の姿勢で生きていけるのだ。クモの中にはゴミグモのように24時間営業でありながら寒くなったら休眠してしまうというタイプもいるわけだが、ゴミグモにしろヤマゴミグモにしろチョンチョンもしょもしょしたり、指に乗ったりしてくれる確率は高い。ということは、24時間営業のクモは積極的になり、夜行性だと慎重なタイプになるのが普通だということなのかもしれない。

 第四に人間の指は食べてはいけないものだと認識している可能性もあるだろう。作者のような物好きが他にもいて、昨シーズン中にさんざん触られまくったということなら指なんか最初から相手にしないだろう。いずれにせよ、やっかいなクモを相手にしてしまったようだ。やれやれ。


 午前5時。

 体長10ミリほどのオニグモの円網にも触れてみた。しかし、この子は円網の反対側まで逃げてしまった。どうやらオニグモは慎重なタイプが普通で、脚に触らせてくれるような子は少数派のようだ。次は指を振動させながら触れてみるか、あるいは0.3ミリ径の針金を使ってみる手もあるかもしれない。

 実は今回の観察はリングフラッシュの実用テストも兼ねていたのだが、これがどうにも使いにくい。最大倍率以外ではどうしても画面下に白い横帯が出てしまうし、真っ暗闇の中ではオートフォーカスが効かない。AF補助光があるのでたまに合焦することもあるのだが、液晶画面は真っ黒なのでどこにピントが合っているのかは画像をチェックするまでわからない。しょうがないのでLEDランタンの光で合焦させてからフラッシュ撮影という手順にした。とにかくピントを合わせられるだけの光があれば撮影そのものにはフラッシュが使えるのだ。ただし、これを手持ちでやると、シャッターを切るまでにピントが外れてしまうという問題もある。まあ、それはそこそこピントが合っているカットが得られるまで撮り直すというやり方で妥協するしかあるまい。三脚を使ったところでクモの方も風で揺れるのだし。


 4月5日。

 オニグモの12ミリちゃんの姿が見えない。バッタは円網の端に置いたままだが、その中身はスカスカ。円網も張り替えていないようだ。多分、腹ごなしを始めたんだろう。


 4月7日。

 ヤマゴミグモの黒子ちゃんがやっと円網を張り替えた。気温が低いと獲物を消化するのにも時間がかかるのだろう。

 日が暮れてから見に行ってみると、オニグモの12ミリちゃんは中身がスカスカになったバッタを枠糸を取り付けているガードパイプのポールに固定して、それに口を付けていた。もう完全に円網の外である。昨シーズンの姉御はホームポジションで食べることにこだわっていたのだけどなあ。

 この行動に対して考えられる可能性の内で最も面白いのは「12ミリちゃんは今はこのやり方がベストだと考えた」というものだろう。その理由は、第一に、12ミリちゃんは休眠から覚めたばかりで多くの獲物を食べたいと思っているだろうということ。

 第二に、この季節はまだ獲物が多くないので、できるだけ多くの獲物がかかるように円網には何もない状態にしておきたいだろうということ。特に気温が下がる夜間は飛べる昆虫そのものが少ないのでバッタはできるだけ円網の外側に置きたいのだろうという考え方だ。

 第三に、どうしても明るい間は狩りをしたくないというこだわりがあるのかもしれない。

 こういう場合、まともな研究者なら「気温が低い時は円網をできるだけきれいにしておくことが本能にプログラムされている」という表現を使うのだろうと思うのだが、残念ながら作者はSF者なのである。


 4月12日、午後1時。

 しばらく寒い日が続いていたのだが、今日は久しぶりに気温が上がった。そのせいか、玄関先で体長7ミリほどのアリグモを見かけた。しかし、作者はその子がアリでないのはわかるのだが、なぜ「アリではない」と感じたのかを説明できない。作者は視力がかなり低下しているので、撮影した画像を拡大しなければ脚が8本あるのも細長い触角の代わりにブラシ状の触肢を持っているのもわかりはしない。おそらくは歩き方がアリらしくなかったのだろうと思うのだが……。しいて言うなら、アリは直線的に歩いては立ち止まり、向きを変えてまた歩き出すというような歩き方なのに対して、アリグモはほとんど立ち止まらずに円弧を組み合わせるように蛇行していたような気がする。そういう歩き方の方が獲物に遭遇する確率が上がるのかもしれない。勝手なことを言わせてもらえば、詳しく観察できるような心の準備ができている時に現れて欲しいクモである。


 午後7時。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんのお尻が濃いめのグレーになってきている。そこで腹の減り具合とお尻の色に関係があるのかどうかを調べるために体長15ミリほどのガをあげたのだが、「こんな大っきいの無理!」とばかりに円網の反対側へ避難されてしまった。

 鱗粉に覆われているガの羽は粘球の効きが弱いので素早く捕帯を巻きつけてもらえないと逃げられてしまう。円網に2回くっつけたのだが、白子ちゃんはどうしても寄ってこないので諦めてガを回収し、予備のガガンボ(カを大きくしたような昆虫)をくっつけたのだが、これにも手を出さない。脚を広げれば50ミリを超えるサイズだから怖いのか、あるいは警戒態勢が解除されていないのかもしれない。ガガンボに逃げられる前に「危険はない」と判断すれば食べてもらえるだろう。放っておくことにする。

 オニグモの12ミリちゃんはまだ腹ごなし中らしいので白子ちゃんの円網から外したガは新たに現れた体長10ミリほどのオニグモにあげることにした。この子はちゃんと飛びついてきたのだが、牙を打ち込んで捕帯を巻きつけた後、円網の下のツツジの葉の上で食べ始めるのだった。

 念のために用意しておいたもう1匹のやや小さめのガは5ミリほどのオニグモにあげた。するとこの子もホームポジションから少し外れた位置でガを食べるのだった。12ミリちゃんも含めて、どうしてこの子たちはホームポジションで食べないんだろう? 春先はこういうやり方が普通なのか? それともそういう文化を持った一族なのか? こうなるとヒシバッタをあげた7ミリちゃんがどういう食べ方をしたのかを見届けなかったのが悔やまれる。まあ、気長に観察を続けることにしよう。


 4月13日、午前6時。

 オニグモの5ミリちゃんは獲物を円網に固定したままねぐらへ引き上げたらしかった。それに対して10ミリちゃんはまだツツジの葉の上で食事を続けている。身を隠すよりも食べることを優先せざるを得ないほど空腹だったらしい。この子と12ミリちゃんは歩道脇の撮影しやすい場所にいるので積極的に獲物を与えて「ここは獲物が豊富な場所だ」と思い込ませたい。ヒシバッタをあげた7ミリちゃんは狭い上に車も多い路地の脇にいるので落ち着いて観察するのは難しいのだ。

 オニグモはその他にも春生まれらしい体長2ミリから3ミリくらいの子たちが何匹か現れている。また、高さ2メートルくらいの場所に円網を張っていた体長10ミリほどの子は12ミリちゃんやガをあげた10ミリちゃんと同じ高さまで円網の位置を下げていた。この時期にはその高度で飛べるような獲物は多くないということに気が付いたのだろう。そういえば、最近では体長1ミリ前後の羽虫を見かけなくなったような気もする。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんはちゃんとガガンボを食べてくれたようだ。ゴミの中にガガンボの食べかすらしい物が混じっていたから間違いなかろう。お尻の色が変わるとしたら1週間以内じゃないか……と思ったら大間違い……かもしれない。ゴミグモ姉妹の妹ちゃんのお尻が黒くなってしまったのだ(頭胸部も黒褐色だが)。

 お姉ちゃんの方は相変わらず濃いめの褐色である。その上、2匹とも横糸を張っていない。横糸を張らないということが「空腹ではない」というサインであるのなら、お尻の色は腹具合と関係なく変化するということになる。もちろんゴミグモとヤマゴミグモではお尻の色を変える理由が違っているという可能性もあるわけだが。

 シロカネグモの仲間は捕食者に対する威嚇のためにお尻の色を変えるらしいのだが、ゴミグモやヤマゴミグモの場合は何日もかけて変わるのだから威嚇ではない。威嚇するのなら数秒以下で変化させなければ食べられてしまうだろう。後は……気分かなあ。オトナっぽく決めたい時には黒い下着、とか?〔ヤ・メ・ロ〕


 4月14日、午前3時。

 昨日ガをあげたオニグモの10ミリちゃんはガを完食してしまったらしい。食べかすらしいものは見当たらない。さらに円網も張り替えている。気温が上がったので、より短い時間で獲物を消化できるようになったんだろう。

 そして面白いことに10ミリちゃんの背中に水滴がある。考えてみれば当たり前なのだが、クモの場合も体が濡れると体温を奪われることになるわけだ。おそらく体毛が撥水性を持っているんだろう。機会があったら雨の中のナガコガネグモやジョロウグモも観察してみたいものだな。

 オニグモの12ミリちゃんも復帰した。今回は撮影しやすい角度に円網を張ってくれたのでわかったのだが、この子は頭胸部が小さくてお尻が大きい体型だった。ざっと1対2.5くらいの比率だ。それに対して10ミリちゃんや7ミリちゃんはオニグモらしい体型で1対1.3くらいである。個体変異の幅がジョロウグモと同じくらいあるというわけだ。孵化直後から観察してきたわけではないのだが、12ミリちゃんと10ミリちゃんがいる場所はマイクロバス1台分くらいしか離れていないから獲物の量にそれほど大きな差があるとは思えない。となると、生まれつきの個体変異ということになるかもしれない。

※これは雌と雄の違いだったようだ。


 この子たちをすり潰して採取したDNAを分析するというわけにもいかないので、ここは同じお母さんが産んだ卵から孵化した姉妹だという仮定で話をさせてもらうが、オニグモのお母さんには子どもたちが生きていく場所でどんな体型が有利になるかは予測できないはずだ。それならば、本気で女王様体型を目指す子と「平民体型でいいわよ。卵さえ産めれば」という子を用意しておいて、子どもたちがたどり着いた環境において有利な体型の子が生き残ればいいという戦略なのかもしれない。多数の卵を産む動物ならばそういうやり方も有効だろう。小型の獲物が多い環境と大型が多い環境で女王様体型と平民体型の比率が変化するかどうかを調査した研究者はいないんだろうかなあ。

 おそらく、クモにとっては多数の卵を産みっぱなしするという戦略の方が個体変異の幅を広げられるという点で有利なのだろうと思う。ではヒメグモはどうして子育てをするんだろう? 小型のクモだとお尻の大きさによって卵の数が制限されるだろうから、その分下手な鉄砲戦略の有効性が低下するということなんだろうか? わからん。


 午後11時。

 浴室に体長2ミリほどのクモが現れた。体型はアシダカグモの幼体のようだが、うちにいたアシダカちゃんよりも小さいし、お尻の模様も薄めだから別の個体のようだ。よく見ようとして顔を近づけると脚を2本振り上げるのは威嚇しているつもりなんだろうか。そういえば、うちのアシダカちゃんは作者に対して威嚇したことはなかったな。これも個性なんだろうか? あるいは、気温が上がったのでその分元気になったか、だな。

 それにしても、どうしてこうも次から次へと子グモが現れるんだろう? この部屋は小バエが多いという古い口コミ情報が残っているのか? それとも、この部屋自体に他のクモの匂いが染みついているんだろうか? わからん。


 4月15日、午前10時。

 室温は床近くで13度Cくらいだ。

 うちのアシダカちゃん2号はキッチンの天井に移動していた。アシダカグモの幼体は天井が好きなのか、あるいは床付近よりは暖かいということなのかもしれない。ああっと、体が軽いうちなら天井にもとまれるが、成長するにつれて体重が増えると支えきれなくなるので、仕方なく床に降りてくるという可能性もあるかなあ。


 午前11時。

 スーパーの西側の横溝が付けられた壁が直角に交差する部分の内側という一部のクモに好かれそうな場所で1匹のクモを見つけた。体長は5ミリほどで、全体に濃いグレー。コンクリートの舗装面からの高さ1.8メートルほどの所に不規則網を張り、卵囊なのか住居なのか、糸でできた楕円形の物の陰に隠れるようにうずくまっている。そこまではいいのだが、その周辺の壁にダンゴムシの死骸が3つ、糸で固定されているのがおかしい。ダンゴムシを食べるクモとしてはジグモが知られているのだが、ジグモは地面に縦穴を掘り、地上に先細りの袋を伸ばすということなのでまったく違う。不規則網を見るとヒメグモの仲間のようなのだが、調べた範囲ではそれらしいクモが見当たらない。だいたいこの子がダンゴムシを食べたのだとしたら、わざわざ地面まで降りてダンゴムシを狩り、その高さまで運び上げたということになるんじゃないか? どうにも謎の多いクモである。とりあえず「お団子ちゃん」と呼ぶことにしようと思う。

 カメラのフラッシュ問題については内蔵フラッシュの発光部の3分の2を黒いテープで覆ってしまった。これで発光量は減らせる。後は画像をチェックしながら露出補正を繰り返してちょうどいい露出を探るというやり方にする。まだ真夜中でのテストはしていないが、最大の問題は発光量だから多分これでイケるんじゃないかと思う。

※後日のテストでもまだ発光量は多めだったが、露出補正を併用すればリングフラッシュよりは使いやすいようだ。こういうものはおそらく5センチ以上の大きさの被写体を想定して設計されるものなんだろう。想定された使い方から外れる場合はユーザーの方で工夫するしかないのである。それもまた面白いのだが。


 4月17日、午前10時。

 太陽は見えないが暖かい。これくらいの気温だと体長5ミリくらいの昆虫でも飛べるようだ。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんには体長4ミリほどのガをあげてみた。白子ちゃんは例によってつま弾き行動をしながら慎重に獲物に近寄って捕帯を巻きつけた……のだが、なんと、白子ちゃんのお腹が膨らんでいる! 背面側から見る限りでは相変わらずスリムな体型なのだが、横から見ると、ヒトなら臨月どころか妊娠15ヶ月というほどの大きさだ。

 念のために黒子ちゃんもチェックしてみると、体長5ミリほどの黒い甲虫らしい獲物を食べている黒子ちゃんもお腹が大きくなっている。その腹に押されたゴミのために円網の反対側が膨らんでしまうほどの太り方だ。黒子ちゃんにはあえて獲物をあげていないから自力でそこまで成長したということになる。小さな獲物でもこまめに食べ続ければちゃんと大きくなれるということなんだろう。そして、ヤマゴミグモのお尻の背面はジョロウグモなどとは違って硬いということでもある。だから腹側へしか膨らめないのだ。

 さらに、2匹とも体長を伸ばす方向へ成長する時期は終わった、つまりオトナになったという可能性もあるかもしれない。ヤマゴミグモの成体としては下限の体長だし、成体が現れるのは5月から8月とされているらしいので時期的にはまだ早いのだが、昨シーズン中にはギリギリで産卵できる大きさになれなかったということならこの時期にオトナになってしまうということもあり得るかもしれない。そうなると、お婿さんが問題になるわけだが、3ヶ月かけて婚活すればいいのだから焦る必要はあるまい。

 オニグモの10ミリちゃんは留守だったが、その円網の両隣にもオニグモのものらしい円網が張ってあった。その他にゴミグモ姉妹の近くにも円網が一つ張られている。この時期、オニグモの円網は1日1張りくらいのペースで現れるので油断できない。とりあえず10ミリちゃんのものらしい円網とそのお隣さんのにも近くで捕まえた体長3ミリほどの昆虫を取り付けておく。これをやると暴れた獲物が外れてしまうことも多いのだが、その場合でも円網に残った鱗粉などで獲物を食べ損なったことくらいはわかるだろう。

 昼間から円網で待機しているオニグモも1匹だけいた。これは「営業するのは夜だけ」などと言っていられないほど飢えているということなんだろうか? できることならオニグモを2つのグループに分けて飼育して、満腹群と空腹群で昼間も円網で待機する比率を調べたいところだな。


 4月18日、午前4時。

 ヤマゴミグモ2匹は横糸を張っていなかった。

 それに対してオニグモ3匹はきれいな円網にしている。日付が変わる頃までは雨が降っていたようだからそれから張り替えたのだろう。10ミリちゃんとヒシバッタをあげた子(これからは「ヒーちゃん」と呼ぶことにしよう)は留守だったが、ゴミグモ姉妹の隣にいる体長6ミリほどのお尻が小さめ体型の子は円網を離れてガードパイプの上にいた。オニグモたちは午前4時より前にねぐらへ帰ってしまうようだ。円網を張り替えるのは午後8時頃のようだから営業時間はざっと8時間弱で、後は休憩しているということになる。これでは1シーズンでオトナになるのは無理だろうな。

 ゴミグモ姉妹のお姉ちゃんはちゃんとした円網にしていたのに対して妹ちゃんは円網の外側部分にだけ横糸を張っていた。横糸の多さが腹具合と直結しているとしたら、妹ちゃんはお姉ちゃんよりも多くの獲物を食べているということになる。それとも途中で休憩しているだけなんだろうか?


 午前11時。

 妹ちゃんもちゃんとした円網にしていた。

 観察を終えて帰宅してみると、2階の通路の下面にクモが4匹いた。体長は4ミリから6ミリ。おそらく休眠から覚めたイエオニグモかズグロオニグモだろう。この子たちはオニグモに比べてねぐらへ帰るのが遅いようだ。街灯が一晩中点灯したままの環境に適応してしまったのかもしれない。


 4月19日、午前11時。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんのお尻が黒くなってしまった。白い班が2つあるのが全体的に黒い黒子ちゃんとの相違点である。

 さて、問題のお尻の色を変化させる要因だが、白子ちゃんに獲物をあげたのが17日だし、昨夜の強風で細長い三角形になってしまった円網を補修していないところを見ると空腹だと黒くなると言えそうなのだが、円網を張っている黒子ちゃんは相変わらず黒いお尻のままなのである。そういうわけで、腹具合とお尻の色に明らかな関係があるとは言えないようだ。やっぱりその日の気分で穿き替えているんだろうかなあ。

 ゴミグモ姉妹は2匹とも円網にしていたが、どちらも直径15センチくらいとやや小さめである。これも昨日の強風でボロボロにされてしまった記憶によるものなのか、枠糸から張り直す分手間が増えるので大きくできなかったのかまではわからない。

 オニグモたちは全員円網を張り替えた様子がない。姿を見せたのもゴミグモ姉妹のお隣ちゃんだけだ。オニグモたちは風が強い日(夜?)に円網を張っても無駄だとわかっているのかもしれない。それでもねぐらから出てきたお隣ちゃんは相当に飢えているのか、ただの食いしん坊なのか……。何度も言うようだが、同じ種のクモでもその行動の細かい部分では個性が現れるのが面白い。


 午後3時。

 また白いオニグモを見つけてしまった。しかも2匹だ。場所は水田の脇のコンクリート張りの用水路で、体長は8ミリと7ミリくらい。1匹は撮影しているうちに枠糸の先の筒状に丸めたイネ科の草の葉の中に潜り込んだからナカムラオニグモだろう。この子たちはお尻が白っぽくて背中側にある模様が黒いんだそうだ(個体差はあるらしい)。ううむ、「脱皮したばかりで肌が白いから日光浴して健康的な小麦色になろうとしていたんだろう」というギャグが使えなくなってしまった。残念。

 なお、ナカムラオニグモは北方系のクモだそうだから、この体色は積もった雪を背景にした時に目立たないようにということなんだろう。〔んなわけ……ないとは言えないかもしれない〕

 ただ、新海栄一著『日本のクモ』ではナカムラオニグモは「垂直の正常円網とされているのに対して、この2匹はほとんど水平に円網を張っていた。まあ、わずかに傾いているから「水平」とは言えない。そういう意味でなら垂直円網なのかもしれない。

 この用水路にはその他にもアシナガグモかシロカネグモの幼体らしい子たちもいた。やはり水場が近いと獲物も豊富なんだろう。


 午後9時。

 スーパーの近くのオニグモたちの様子を見に行ったら、ゴミグモ姉妹のお隣ちゃんが横糸を張っている最中だった。この子は他のオニグモたちと比べて飢えているような気がするので、体長3ミリほどの甲虫をあげることにする。

 お隣ちゃんは駆け寄ってきて捕帯を巻きつけた……までは良かったのだが、ホームポジションに戻って休憩している間に捕帯から甲虫が抜け出してしまうのだった。捕帯には伸縮性がないし、粘球も付いていないので、強い脚でもがけば抜け出せてしまうのらしい。

 気落ちしてしまったお隣ちゃんはホームポジションにうずくまってしまったので、次はガガンボをくっつけてあげる。お隣ちゃんは知らん顔をしていたが、10分ほど後にはちゃんとホームポジションに持ち帰って食べていた。これは実に面白い。昨シーズンの姉御は横糸を張っている途中で獲物がかかった場合には、ぐるぐる巻きにした獲物をホームポジションに固定しておいて、横糸を張り終えてから獲物に口を付けたし、今シーズンの12ミリちゃんや10ミリちゃんは円網の隅や完全に外など、ホームポジション以外の場所で食べていた。別にいつ食べても、どこで食べてもいいだろうという考え方もできるわけだが、手順や食べる場所が本能にプログラムされているのならどの個体も同じ食べ方をするだろう。横糸を張ることを優先するか、食べることを優先するかが個体ごとに違っているというのなら、それは本能ではなく、各自で判断しているということになるはずだ……と思う。そしてもうひとつ、今日もゴミグモ婦人の生け垣へ行ってみたのだが、そこにいたゴミグモの1匹はゴミを縦に並べずに縦長の楕円形にしていた。こういう変わり者の存在も知性の証拠になり得るのではないだろうか?

 ただし、作者は「クモには知性がある」と考えているので、そういうバイアスがかかっている可能性はある。「クモは下等な動物だ」と考えている研究者なら本能で説明しようとするだろうしな。

 また、ある気温を境にそれより上ではホームポジションで、下では隅の方で食べるように本能にプログラムされているという可能性もなくはない。あるいは季節によって変更されるとか? ああっと、今回は一度失敗した後だという条件も加わるのだな。やはり、もっとデータを集める必要がありそうだ。オニグモを相手にしていると睡眠時間の確保が難しいのだけどなあ……。


 4月20日、午前1時。

 玄関先にいたオニグモの仲間2匹を撮影した。この2匹はどうやらズグロオニグモのようだ。

 今回はキャスター付きの椅子を踏み台代わりにして撮影したのだが、これはグラグラして危険だと思った。よい子はちゃんとした踏み台を使ってね。〔一番いいのはクモなんか撮らないことだがな〕


 4月21日。

 今日も暖かいので涸沼周辺を走ってきた。他の桜よりも花期が遅い八重桜の花吹雪の中を薄紫のヤマフジや黄色いヤマブキを眺めながらのサイクリングである。〔脇見運転はするなと言うのに!〕

 途中で脇道に入って休憩すると、なんと四つ葉のクローバーがある。しかもその近くにあと2本! 作者がそんなに幸せになれるわけがない。これは凶兆に違いない。今夜は温かいシャワーを浴びて身を清めることにしよう。〔清めることになるのか、それは?〕

 四つ葉の御利益なのか、体長3ミリほどのナガコガネグモの幼体にも出会った。今シーズン初めてのナガコガネグモである。ということは、ナガコガネグモもジョロウグモと同じく「冬越しの命は持たないわよ」という江戸っ子タイプのクモなのだろう。しかし、そのシーズン中に産卵できなければ子孫を残せないということならば、去年の11月に現れた体長5ミリの子は何だったんだということになるわけだが……出囊する時期を間違えたドジっ子だったんだろうか? クモにとってこういうドジは命に関わるはずなんだけどなあ……。


 4月22日、午前4時。

 ナガコガネグモのナガコちゃんがいた場所に体長7ミリほどのオニグモが現れた。体型は女王様タイプと平民タイプの中間くらい。ピッタリ同じ場所に円網を張っているということはナガコちゃんの生まれ変わり……。〔んなわけあるかい!〕

 円網を張るのにちょうどいい場所は限られるということなのかもしれない。あるいは、そこにクモがいたという何かしらの痕跡が残っているのか、だな。

 ゴミグモ姉妹のお隣のオニグモも円網は張っているのだが、枠糸を固定してあるガードパイプの陰にいた。円網とは別の方向にも枠糸が何本か引いてあったから円網の位置を少し変えるつもりでいるのかもしれない。

 同じくオニグモのヒーちゃんは多角形をいくつか組み合わせたような形に枠糸を張っていた。触れてみても粘らないから獲物を捕らえる機能はなさそうだ。これは他のクモに対して「ここはアタシの場所」と宣言しているのかもしれない。クモは一般的に学習能力が高いようだから獲物がかかった場所には引き続き円網を張りたいと考えてもおかしくはないだろう。しかし、多くのオニグモのように夜明け前に円網を回収してしまう場合、昼間の時間帯にその良い場所を他のクモに取られてしまうこともあり得る。そこで枠糸だけを残して住居へ戻るのだと考えると無理がないだろうと思う。

 そして、どうもこの時期のオニグモたちは何日かおきに住居から出て円網を張る場合が多いようだ。12ミリちゃんなどバッタを食べ終えてからはまったく円網を張る様子がない。まだ気温が低いから獲物を消化するのに時間がかかるのか、それともまだ獲物が多くなる時期ではないのを知っていて積極的に狩りをする気になれないんだろうか? 


 4月23日、午前11時。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんは直径1.5センチくらいの円網を張っていた。通常横糸は円網の外側から張っていくから、途中でやる気をなくしたというのなら横糸がリング状になるはずだ。直径1.5センチということは最初からその大きさにするつもりだったということになる。なぜだ? ああっと、ジョロウグモの7本脚ちゃんや軒下のジョロウちゃんも円網とは言えないものにしていた時期があったなあ。ということは、獲物を捕らえるためのものではないということなんだろうか? 

※後にウィキペディアの「クモ類」のページでクモ類の生殖行動についての記述を見つけた。それによると、クモ類は「雄が触肢に入れた精子を雌の生殖孔に受け渡すという、動物界で他にあまり例のない方法を用いる。雄の触肢の先端には、雄が成熟すると触肢器官という複雑な構造が出来上がる。スポイトのようになっていて、精子を蓄える袋と、注入する先端がある。雄は雌の所へゆく前に、小さな網を作り、ここへ生殖孔から精子を放出し触肢に取り入れる」のだそうだ。「小さな網」の具体的な大きさについては書かれていないので直径1.5センチの網が確かに生殖用のものだったとは言い切れないが、おそらくこの子は雄だったんだろう。


 話は変わるのだが、実は行きつけのスーパーに謎のクモがいる。そこは幅2センチくらいの横溝が多数付けられた壁が交差する部分の内側という慎重なタイプのクモには好まれそうな場所である。直径5ミリほどのつるんとしたお団子のようなお尻はグレーの地に多数の黒い班。頭胸部は2ミリもないだろう。そして縦横5センチくらいの小規模な不規則網らしいものもあるから、多分ヒメグモの仲間だろうと思うのだが、問題はその不規則網の中に卵囊らしいものがあるということである。この時期に産卵しているクモなんて、いくら探しても見つからない。あるいは卵囊ではなく住居という可能性もあるかもとも思ったのだが、その中に入る様子もない。もしかしたら産卵したのは別のクモで、ただ単にその側にいるだけなのかもしれない。そうだとしても越冬するヒメグモの仲間というのも聞いたことがないのだが……。

※後にこのクモは優れた耐寒能力を持つオオヒメグモであることがわかる。


 午後3時。

 サイクリング中にアオスジアゲハらしい大型の黒いチョウを1匹見かけた。

 ツバメたちも帰ってきている。水田の上辺りを飛んでいるから巣材にする泥を集めているんだろう。

 ゴミグモ婦人の生け垣まで行ってみると、円網にゴミを楕円形に付けていたゴミグモは縦一列に戻していた。「模様替えしてみたんだけど、やっぱり元の方が良かったのよね」というところだろうか。当たり前だ。あまりゴミが目立つと、捕食したい獲物にまで回避されてしまうだろう。これにて一件落着……なのだが、新たにお尻を下向きにしているゴミグモ(通常は頭胸部が下向き)が現れたのだった。この子たちはいったい何を考えているんだろう? この時期はまだ獲物が多くないので昨シーズンとは違うやり方を試しているんだろうか?


 午後9時。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんのお尻の背面がグレーになってしまった。黒子ちゃんもグレーになっている。いまでは薄いグレーちゃんと濃いグレーちゃんである。ということは、ヤマゴミグモのお尻の色は腹具合に関係なく、何日かの周期で白から黒へ、そしてまた白へと変化するのかもしれない。なんてこった! 下着穿き替え仮説が正しいかもしれないってことじゃないか。ううむ、「ヤマゴミグモは小説よりも奇なり」だなあ。〔ことわざをねつ造するなと言うのに!〕

 今夜はオニグモたちは1匹も姿を見せなかった。夜は冷えるし獲物も少ないからゆっくり腹ごなしということなんだろうかなあ。今シーズンもオトナになれなかったらまた休眠すればいいんだろうし。


 4月25日、午前10時。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんのお尻の背面は相変わらずグレーだが、黒子ちゃんの方は黒に戻ってしまった。どうも黒子ちゃんのお尻は白子ちゃんよりも変化の周期が短いようだ。

 ゴミグモ姉妹の妹ちゃんもほとんど真っ黒だ。それに対してお姉ちゃんの方は薄めの褐色である。ゴミグモには黒色型と褐色型があるということなのかもしれない。

 体長4ミリほどの新顔のゴミグモもいた。この子はゴミの代わりなのか、縦長の楕円形の隠れ帯を付けていたし、第一脚を広げていたので触肢がよく見えたのだが、ゴミグモの触肢はボールのように丸い形だったのだなあ。作者はなんとなくジョロウグモなどと同じような細長いブラシ状だと思い込んでいたのである。間抜けな話だ。

※この丸い触肢も雄の特徴だったかもしれない。作者はクモに興味を持ってからまだ2年半にしかならないのだ。


 ゴミグモ姉妹の隣のオニグモは円網だけを残して留守にしていた。ヒーちゃんも留守である。今日は雨の予報が出ているのだが、そこらを飛んでいた体長5ミリほどのハエの仲間を捕まえて2匹の円網にくっつけておく。逃げられてしまわなければ夜になってから食べてもらえるだろう。できれば昼間の方が獲物がかかりやすいということを学習して明るい時間帯から待機するようになってくれるとありがたいのだが……。


 午後9時。

 ヤマゴミグモの白子ちゃんが脱皮したらしい。体長が変わったようには見えないが、ゴミの下端に脱皮殻らしいものが付いている。お尻の色は黒地に頭胸部側半分だけがグレーである。


 4月26日。

 サイクリングの途中でゴミグモを2匹見つけた。どちらも円網を張っておらず、円網の隅に脱皮殻が付いていたので脱皮したばかりなのだろう。この2匹は体色が黒基調に褐色の班(ゴミグモは通常褐色基調)、その上、脚に触れられても反応しないという点でも共通していた。ということは、これらは脱皮直後のゴミグモに共通する性質なのではないだろうか? その理由は、第一に脱皮直後で外骨格が硬くなるまでは獲物を狩る能力が低下しているので横糸を張らないのだろうということと、第二に防御力も弱くなっているので目立たない体色にしていると考えると無理がないからだ。ヤマゴミグモの白子ちゃんも脱皮直後は黒基調の体色になっていたことだし。


 4月27日、午前11時。

 スーパーの近くのヤマゴミグモ2匹は今日も絶食中だったのだが、どうも黒子ちゃんのお尻が短くなったような気がする。もうほとんどゴミグモの体型である。もしかして、この子は最初からゴミグモだった? それともミステリーでよく使われる入れ替わりトリックだろうか?〔トリックを仕掛ける理由がどこにあるんだ!〕

 そして、その近くにもお尻を斜め下に向けているゴミグモがいた。新海栄一著『日本のクモ』で「頭を上にして」と書かれているゴミグモ属にはギンメッキゴミグモ、ギンナガゴミグモ、クマダギンナガゴミグモがあり、決まった向きで待機しないというヤマトゴミグモ、シマゴミグモ、ミナミノシマゴミグモも掲載されているのだが、この子はゴミグモにしか見えない。ただの変わり者で片付けるのは簡単なのだが、そうすると、円網を張るクモにはお尻を上に向ける子たちが多いのは何故なんだということになる。以前書いたようにナガコガネグモやジョロウグモなら太陽がまぶしいからという可能性もあるのだろうが、ほぼ夜行性のオニグモもお尻を上に向けている。クモにはまぶたがないようだから雨が眼に当たるのが嫌なのかもしれない。

 帰宅してみると、しばらく姿が見えなくなっていたうちのアシダカちゃんが帰ってきていた。今はパソコンを置いているテーブルの真上辺りにいる。この部屋はクモにとって居心地がいい環境なのだろう。〔隙間が多くて出入りしやすいだけだろ〕


 4月28日、午前7時。

 すみません。作者は間違っていたようです。ヤマゴミグモの黒子ちゃんが実はゴミグモだったようなので改めて新海栄一著『日本のクモ』を開いてみると、ヤマゴミグモはつるんとしたお尻だったのだ。白子ちゃんも黒子ちゃんもごつごつしたお尻だったのだから、それを見ればゴミグモだとわかったはずなのだが、お尻の背面が白いというところだけに注目してヤマゴミグモだと思い込んでしまったというわけである。改めてお詫びして訂正させていただきます。

 近所にいるオニグモの7ミリちゃんは留守だったが、その円網に高さ2ミリほどの銀色のとんがり帽子が3匹いた。これはもちろんシロカネイソウロウグモである。夜明け前に円網を回収してしまうオニグモが多いのにはこういう居候を排除するという効果もあるのかもしれない。特にこの時期は大型の獲物が少ないのだろうし。

 そうすると、昼間でも円網を張りっぱなしにしている子たちは何を考えているんだということになるわけだが……体格の差が大きい場合は「居候くらいどうってことないわよ」ということになるのか、昼間のうちに円網にかかる獲物が多いのなら張りっぱなしの方がメリットが大きいという判断なのかもしれない。

 体長4ミリほどのクサグモの幼体も姿を見せていた。クサグモの成体の背中側はマットな質感の明るい褐色に2本の黒い縦帯なのだが、このサイズだとまだ頭胸部と脚が赤でお尻が黒である。しかもそのお尻が日光を反射して光っているのだ。「暗い夜道はピッカピカの~お前の尻が役に立つのさ~」である。〔昼間だし、赤い鼻じゃなくて黒い尻だし、次のクリスマスは何ヶ月も先だぞ〕


 午後1時。

 ゴミグモ婦人の生け垣でお尻を下向きにしていたゴミグモはちゃんと上向きにしていた。ちょっとした気まぐれだったのかもしれない。


 午後5時。

 まだ日没前なのだが、オニグモのヒーちゃんがホームポジションで肉団子をもぐもぐしていた。もちろん作者が昼頃に円網に取り付けておいた獲物である。気温が上がると、その分代謝が活発になって空腹になるのも早くなるということなのかもしれない。


 午後9時。

 近所の体長7ミリのオニグモが2匹に増えていた。円網が2枚になっていたのでおかしいなとは思っていたのだが、同じような体格の子が同じ向きに円網を張っていたのだ。そして、この2匹は獲物をホームポジションに持ち帰って食べる派だった。さらに、スーパーの東側にいるヒーちゃんとゴミグモ姉妹のお隣ちゃんもホームポジション派である。

 問題はスーパーの西側に現れた体長5ミリほどのオニグモで、この子は獲物がかかった場所で食べている。その場で食べる派だった12ミリちゃんと10ミリちゃんもスーパーの西側にいた。この3匹の居た場所は幅10メートルくらいの範囲に収まる。ということは、その場で食べるというのは地域限定の文化だという可能性があるかもしれない。スーパーの東側と西側は100メートルも離れていないのだが、長距離を移動しにくい(羽がないので歩くしかない)クモならそういうこともあるんじゃないだろうか? ああっと、西側は風の通り道になっているとかで獲物が円網から外れてしまいやすいから、あえてホームポジションに持ち帰らないということもあり得るかもしれない。つまり、基本的なやり方では具合が悪いので工夫したというわけだ。〔ほんとかよ〕

 ゴミグモの白子ちゃんのお尻の上面は少しグレー寄りの色になってきた。黒子ちゃんは相変わらず全身黒基調だが、お尻だけが濃いめのグレーになってきている。



     クモをつつくような話2021 その2に続く

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